こんにちはマナボックス の菅野です。

今日のテーマは、『海外赴任時の住民税』です。

この記事はこんな人のために書いています。
  • ベトナムに駐在員として出向予定である。
  • 日本の住民票を抜こうか迷っている。
  • 住民票を抜いた後の影響を知りたい。

ベトナムで、日系企業様を支援させて頂いているち、この質問を受けることがあります。

まず、前提として、そもそも住民票を抜くか?どうか?です。

原則として、海外勤務する場合には、海外転出届(住民票を抜く)ことが必要です。

なぜでしょう?

昭和46年3月31日自治振第128号通知問9という通知によれば、

「海外出張者の住所は、出張の期間が1年以上にわたる場合を除き、原則として家族の居住地にある。」

とされています。すなわち、「1年以上の予定で海外に出張(赴任)もする場合は、住所はない⇒海外転届を提出しなければいけない」ということになります。

これが一応、根拠となっているようですね。ただし、実務上は抜いてない人を見かけることもあります。

本日は、以下の観点から、それぞれ、解説して行きたいと思います。

  • 個人所得税との関連性
  • 住民票と住民税の関連性
  • 住民票を抜く場合の影響

ベトナム個人所得税との関連は?

結論から言いますね。

住民票の有無と、ベトナム税法上の居住者・非居住者は直接的に関係しない。

すなわち、日本に住民票があろうが、なかろうが、ベトナムでの税務上の居住者の要件を満たせば、ベトナムにおいて全世界所得税を納めることになります。

また、日本の所得税法第二条によると、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。となっています。

税務上の非居住者と居住者の判断基準は、あくまで、「1年以上の予定で日本を離れるかどうか?」です。すなわち、住民票の影響は直接的に受けません。

住民票と住民税の関連性を解説

結論としては、

住民票の有無に関係なく、出国により1月1日現在において国内の市区町村に住所を有している場合に、前年の所得に応じて課税されます。

そのため、年の中途で転居したとしても、その年の住民税の納付は転居前の区市町村へ行う必要があります。

これに加えて、基礎とする所得は「前年の所得」であることも認識する必要があります。したがって、駐在員様は、赴任の最初の1年は住民税が控除されます。1年後は住民税を納付する必要性がなくなるため、その分、日本給与の手取りが増えることになります。

住民税は、その年の1月1日に住民票がある自治体から、前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課税されるためです。

ちょっと具体例で説明もします。

例えば、あなたが、2019年12月末にベトナムに出向したとします。この場合、2019年1月1日~12月31日の所得(給与というイメージ)に対する住民税は、2020年6月~2020年5月にかけて支払うことになります。2020年6月以降は、住民税が発生しません。

海外赴任で1月1日をまたいで1年以上国外に居住していることが確認できた場合は住民税発生しない

住民税の納税方法は2つあります。

住民税の納付方法は、「普通徴収」と「特別徴収」の2つ

  • 「普通徴収」 → 自分で納付!
  • 「特別徴収」 → 会社が代わりに納付!

一般的には特別徴収でしょう。したがって、会社が個人給与の明細書に「2019年1月~○○月までは、海外勤務中」と記載します。こうすれば、翌年の住民税の徴収は必要なくなるのが一般的です。ただし、住民があるかどうか?の実質的に判断することに留意する必要があります。

日本の住民票を抜いた場合の影響

住民票を抜く、除票すると住民であることによる権利及び義務がなくなります。以下の影響があります。

  1. 印鑑登録は抹消される。(印鑑証明の入手が出来ない。)。しかし、日本に住民登録をしていない海外在留者(例:駐在者)に対し、印鑑証明に代わるものとして、署名証明書の取得が可能。
  2. 選挙の通知が来なくなる。
  3. 住民票を抜いたら国民年金は任意加入か喪失
  4. 児童手当が受け取れなくなる。
  5. 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用ができなくなる。(ただし、平成28年税制改正により、非居住者に対しても、一定の要件が満たされれば住宅ローン控除可能)

1、例えば、日本で新しく会社を作り、印鑑証明が必要なった時など影響がありますね。

2、選挙についてはオンライン投票を可能としたり住民票を必須要件にしないほうがいいと思います。

3、ただし、駐在者であり、日本給与もある場合は、社会保険が継続します。実務上はこのケースが多いです。

4、児童手当(~15,000円)が受け取れなくなる可能性があります。保護者が1年以上で、住民票を抜いて、日本に滞在しない場合には、児童手当の受給はできません。子供が3歳までの方は、児童手当が、15,000円(1人あたり)受給できます。これがなくなったら影響は、小さくありませんね。

5、日本の所得税に関する定めです。居住目的で家やマンションなどの住宅を購入した場合、年末の住宅ローンの残高もしくは住宅の取得対価のどちらか少ない金額の1%を所得税から控除できる制度です。

住宅ローン控除は「税額控除」です。計算した所得税から差し引くことができます。

この制度について、住民票がない場合には適用できませんでした。仮に、金額1億であれば、1年間で控除額は100万円です。影響は小さくないですよね。

ただ、平成28年税制改正により、海外で滞在するため、日本で非居住者である場合でも、一定の要件が満たされれば住宅ローン控除が適用できるようになったようです。

しかし、改正後のルールの適用は平成28年4月1日以後に住宅の取得等をした方をが対象です

したがって、平成28年3月31日までに住宅を購入された人は、改正前のルールが適用されます。つまり、控除できません。

本日は、海外駐在者にとって、住民票を抜くことの影響について解説させて頂きました。あなたが、海外赴任前にきちんと理解し、合理的な結論ができることを祈っていますね!