ビングループ、SEA Gamesメダリスト全員に報奨金?や車のプレゼント?

先日、下記のようなニュースを見ました。

ビングループ、SEA Gamesメダリスト全員に報奨金

ベトナムでは、サッカーが大人気です!

フィリピンで開催されていた第30回東南アジア競技大会(SEA Games 30)で、ベトナムがサッカーで優勝したのです。12月10日。

その際に、ビングループが、ベトナム代表のサッカー選手に褒賞金などをあげたのです。

素晴らしいですね!これはこれで微笑ましい、いいニュースです。

 

でもね……。こんなことも頭に浮かびませんか?

 

「これって、申告するのかな?」

 

なんて、普通は思わないですよね。

でも、私は、仕事柄、興味を持ってしまいました。

そこで、この場合の、ベトナムでの個人所得税の場合はどうなるのか?を整理してみました。

日本での税務とも比較していきます。

サッカー選手の報奨金やギフトのベトナム課税関係はこうだ!

最初にまとめますね。ざっくりこんなイメージです。

A:誰が払う?

B:何を選手にプレゼント?C:所得の種類

D:課税される?計算は?

政府機関系(ベトナム)

お金

給与所得(2条2項e1.3 e.2)

されない

ギフト(車など)

企業や団体(例:ビングループなど)

お金

給与所得(2条2項)

基本は、10%を源泉 25条i)

ギフト(車など)

贈与所得(2条10項)

1,000万ドンを超える部分について10%

16条

No1324/TCT-TNCNというオフィシャルレターを基に作成

A:誰が払う?

褒賞金や車などのギフトは、誰が支払うのでしょう?

以下の2つに整理できます。

  1. 政府機関系
  2. 民間の企業や団体

1は、ベトナムのサッカー協会と国家オリンピック委員会などです。

2は、ビングループやPHG, タコグループなどです。

B:何を選手にプレゼント?

何を選手にプレゼントするのでしょう?

以下の2つに整理できます。

  1. お金
  2. モノ

1は、褒賞金ですね。

2は、車やバイク、ドアーベルなどがあるらしいです。

C:所得の種類は?

所得(課税所得)には、種類があります。これによって、個人所得税の計算が異なります。

褒賞金などは、どの所得にあたるのでしょうか?

お金の場合は、「給与所得」(2条2項)

モノ(ギフト)の場合は、「贈与所得」(2条10項)

No. 111/2013/TT-BTCという通達が根拠です。

2条(Article 2. Taxable incomes)に記載されています。

D:課税される?計算は?

ここが大事ですね。個人所得税が計算されるか?どのように計算するか?です。

これは、Aの誰が支払うか?によって結論が異なります。

  1. 政府機関系⇒されない
  2. 企業や団体⇒個人所得税の対象となる

この上で、どのように計算されるかを見てみましょう。

  1. 褒賞金(給与)の場合⇒10%の源泉所得(ただし、累進課税の場合もある)
  2. モノのプレゼント(贈与所得)⇒1,000VND(約5万円)を超えた分について10%

1の場合の根拠条文は以下だと考えられます。個人に業務委託などもする際もこれですね。

Article 25. Tax withholding and certificate of tax withheld at source

i) Withholding tax in other cases

The organization or person that pays a total income from 2 million VND to a resident that does not sign a labor contract (as guided in Point c and Point d Clause 2 Article 2 of this Circular) or that signs a labor contract for less than 03 months shall withhold 10% tax on the income before it is paid to the person.

2の場合の根拠は以下です。

Article 16. Basis for calculating tax on incomes from inheritance and gifts

The basis for calculating tax on incomes from inheritance and gifts is the assessable income and tax rate.

  1. Assessable income

The assessable income from inheritance and gifts is the excess over 10 million VND of the inheritance or gifts received. The value of inheritance and gifts is determined as follows:

2. The rate of personal income tax on the income from inheritance and gifts is 10% according to the whole income tax table.

その他、法人税と実務について

貰う人がいれば、払う人もいますよね。

上記の例で言えば、ビングループです。

こちらは、広告宣伝費として処理(か、寄付金として処理が考えられます。 後者は、損金不算入ですが、全社は、損金算入という説明もできると思います。必要な書類は入手する必要がありそうですが)

後は、選手が個人所得税をはらうか?という問題もあります。ちょっと違和感もありますよね。

「ベトナムの誇り」なのに、税金を支払う必要ないでしょ!という感情的な部分があります。

したがって、ビングループがもしかしたら、所得税を負担しているかもしれません。

日本では、報奨金は課税?どうなる?

オリンピックの場合

  • 原則は:全額非課税(日本オリンピック委員会(JOC)から)
  • 例外①JOCに加盟しているしている競技団体からの報奨金は一定額非課税
  • 例外②加盟してない競技団体からの報奨金は、「一時所得」
  • 例外②会社からの場合は、「給与」

一般に賞金や報奨金は、「一時所得」として課税対象。ただし、JOCのオリンピックの賞金・報奨金に限っては、所得税法(所法9-1 十四)により非課税となる加えて、平成22年の税制改正によって、「JOCに加盟している政令で定める競技団体からの報奨金」も下記の一定額を限度として非課税対象になりました。(加盟してない競技団体からの場合は、「一時所得」として所得税がかかります。
   ・金メダル・・・300万円まで
   ・銀メダル・・・200万円まで
   ・銅メダル・・・100万円まで

一方で、選手が所属している企業から支給される報奨金については、「給料所得」として扱われ源泉徴収されます。

ワールドカップの場合は?

  • 各チームへの分配金⇒事業所得として課税
  • 選手への分配金⇒一時所得または給与所得として課税

ワールドカップの場合は、オリンピックと違うようですね。

本日は、スポーツ選手の報奨金についての個人所得税ついて解説させて頂きました。

このように考えると少しは楽しいかもですね。