こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。

この記事はこんな人のために書いています。
  • ベトナムでの法人設立を考えている。社長(GD)になる。
  • ベトナム労働関係の事を詳しく知りたい。特に勤務時間。残業時間。
  • 残業代の計算の方法を具体的に知りたい、ベトナム税務関係も知りたい。

これを読んで頂ければ、労務管理もできるようになります。

ベトナム労働法による労働時間(残業も)についての論点

以下の項目について解説していきたいと思います。

ベトナム労働法(No.: 10/2012/QH13)やそれに関連する税務関係です。

  1. 労働時間について
  2. 残業代の計算について
  3. 残業代の個人所得税について
  4. 残業代の法人税について
  5. ベトナムの休日について

それぞれ説明していきますね!

1、ベトナム労働法に定められている労働時間

1.1 通常の勤務時間と深夜勤務時間

結論から申し上げますと、

原則:1日あたり8時間、1週あたり48時間

ただし、週間労働時間を48時間越えない場合は、1日10時間まで労働時間を設定できる。(10時間でも残業にならない。)

週40時間を超えないことが推奨されている。

深夜勤務時間とは、午後10時~翌日午前6時のこと。

根拠条文:104条、105条

実務上は、8:00から開始して17:00のケースが、特に製造業の場合は多いです。この場合、休憩が1時間という前提だと1日あたり8時間になります。土曜日も出勤のケースも多いですね。

なお、休憩時間は、8時間、又は6時間連続で勤務する被雇用者は、労働時間(勤務時間)として計算され、少なくとも30分の休憩を取ることができます。また、深夜労働の場合、被雇用者は勤務時間として計算される、少なくとも45分の休憩を取ることができます。

ただ、実務上は、休憩を1時間としている会社が多いように感じます。

サービス業などは、土日をお休みしています。弊社、マナボックスも、平日の勤務時間を少し長めにして土日をお休みにしています。

また、1日あたり10時間と設定して、週休3日ともすることも可能となります。

1.2 残業時間の上限

  • 残業(時間外労働)は、1日の通常勤務時間の50%を超えてはならなない。(例:1日通常勤務時間が8時間なら4時間)
  • 1日では、総時間12時間を超えてならない。
  • 月では、30時間を超えてはならない
  • 年間では、200時間を超えてはならない(例外で300時間)

根拠条文:106条

200時間という時間はどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。キンマやリンランの居酒屋なんかで。

社長を悩ます原因の一つですよね。

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2、残業代の計算方法

残業代の計算式は、こうです。

【時給】×【割増率(レート)】×残業時間=残業代

それぞれ解説して行きたいと思います。

まずは、割増率について解説して行きますね。

2.1 残業した場合の割増率、レートは?

まずは、これも、結論からお伝えします。

こうすると、9パターンがあるという事がわかります。

項目時間帯平日週休日
(日曜日など)
祝日・有給休暇

規定時間内の労働

昼勤(例:8:00~17:00)①100%⑥200%⑧300%

規定時間を越えた労働

昼勤終了後 (17:00~22時まで)②150%⑥200%⑧300%

深夜労働

22:00~6:00③130%⑦270%⑨390%
規定就労時間を超えてなおかつ深夜

昼間に残業なし

(~22:00が定時の人)

④200%⑦270%⑨390%

昼間に残業あり

(~21:59が定時の人)

⑤210%

根拠条文(ベトナム労働法)は以下のようになります。

第97条時間外労働、深夜労働の賃金


1. 被雇用者が時間外労働をする場合、単価または通常の賃金に基づいて算出される、以下の賃金が支払われるものとする。
a) 通常勤務日の時間外労働の場合は少なくとも150%。
b) 週休日の時間外労働の場合は少なくとも200%
c)祝日または有給休暇の時間外労働の場合は少なくとも300%。ただし、日給の被雇用者に対する祝日または有給休暇日の賃金を含まない。
2.深夜労働をする被雇用者には、少なくとも単価または通常の賃金に基づいて算出される 賃金の30%に相当する割増分が支払われるものとする。

3.深夜に時間外勤務をする被雇用者には、本条第1項、第2項の規定に基づく賃金以外、単価または昼間の賃金に基づいて算出される賃金の20%に相当する割増分が支払われるものとする。

ただ、すこしわかりにくくないですか?

私は、わからなかったので深堀してみました。図解もしています。以下で図解を利用して詳しく解説していますよ。

平日の場合

以下のようになります。

次に、日中に残業ありの場合です。

 

週末(例:土日)の場合

こんな感じです。

 

祝日の場合

以下の通りです。

 

労働・傷病兵・社会福祉省(MOLISA)は、2014年12月12日、祝日・有給休暇中の深夜労働に関するレターである「4163/LDTBXH-LDTL」を発行しました。それによれば、深夜に時間外労働を行った者の賃金については、「300%A + 30%A + 20%× (300%A) = 390%A」とすることを明らかにしたようです。

第97条(a)にて、規定内勤務時間を超えた場合には、150%を乗じる必要がある記載されており、これを週休日や祝日に適用するという見解があります。
 
この点、第97条(a)には、そもそも通常勤務日の時間外労働」となってます。
したがって、150%を祝日や週休日には適用しないというのが合理的です。

2.2 残業代の基礎となる時給(1時間あたりの基礎賃金)の計算は?

次に時給の計算方法です。

基礎賃金にはなにが含まれる?

No. 23/2015/TT-BLĐTBXHという規定によれば、

Actual hourly wage on a normal working day 

となっています。

少し曖昧です。

基本給だけなのか?それとも手当も含むのか?

結論ですが、(意見にもなりますが、)

手当の名目で支給されている給料のうち、【役職手当】、【資格手当】といったような手当(実施的に給与)は、1時間あたりの基礎賃金に含まれる。

一方で、通勤手当、住宅手当は含むべきでない。

日本と同じでいいと思います。

感覚的にもしっくりきませんか?(私は法律より、常識や感覚をまず大事にします。そうするとその結論が結構あってます。)

実務的には、①基本給だけ、②基本給+手当(通勤手当などは含めない)③基本給+手当(通勤手当などは含める)の3パターンが見受けられます。

時間あたりの時給の計算方法は?

その月の稼働日や所定労働時間(所定労働時間)が就業規則などで決まっているはずです。

基本的には、以下のようにして求めます。

基礎賃金÷稼働日÷1日あたりの規定時間

具体例で見てみましょう。

  • 基本給与:10,000,000VND(約5万円)
  • 稼働日:20日(話を簡単にするために)
  • 1日あたりの就業時間:8時間

10,000,000÷20日=500,000(1日当たり給与)

500,000÷8=62,500VND(時給)

例えば、12月平日の残業が15時間だとすると。

62,500*150%=93,750VND(時給)

93,750VND×15=1,406,250VND(約7,000円)となります。

3、残業した場合の残業代のPIT

ベトナム:残業代の割増分については、PITの対象になりません。

日本:残業代に個人所得税も課税される。

つまり、150%であれば、50%については、PITの対象になりません。

詳細に説明している記事:>>ベトナム残業代、個人所得税という観点からはお得?

4、残業した場合の残業代のCIT

残業代のリミット(年間 200 時間、一部業種で事前申請を行う場合 300 時間)を超えた分について、損金不算入のリスクがある。

これ、ベトナムあるあるですよね。

企業によっては、余裕で年間で、200時間を超えます。そのため、各企業に影響が大きいです。

以下の対応する必要があります。

・金額的なインパクトを計算して、あきらめてしまう。(損金不算入)

場合によっては、金額が僅少です。

・従業員に合意してもらい手当という形でみなし残業にする。

ベトナム人でも残業してお金が欲しいという人がいます。そこで、月20時間については、残業が固定的に発生するので、その分については残業にしない。かわりに○○手当という形にする。というような感じです。

参考記事:>>“損金不算入”ってなんだ?

5、ベトナムの祝日について

ベトナムの祝日は合計で年10日程度です。労働法115条

  • 第115条祝日、正月休み
  •  a) 陽暦の正月:1日(陽暦の1月1日)
  • b) 旧正月テト:5日(ただし、年によって違う。)
  • c) 戦勝記念日:1日(陽暦の4月30日)
  • d) メーデー:1日(陽暦の5月1日)
  • đ) 建国記念日:1日(陽暦の9月2日)
  • e) フン王忌日:1日(陰暦の3月10日)

日本では年間15日程度もの祝日があります。また、日本ではお盆時期、や年末年始は祝日ではありませんが休暇を与えられるケースがほとんどです。

祝日の日数の差以上にベトナムはお休みは少ないです。とても祝日が貴重なのです。

本日は、ベトナムの労働に関する、勤務時間、残業代、税務的な話、休日についてまとめて解説させて頂きました。

あなたの会社が、ベトナム労働法を理解して、ビジネスで成功することを祈っていますね!