こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。

ベトナムでビジネスがしたい!現地法人を設立したい!

このご時世、そう思っている方もいると思います。

でも、法律上どうしていいのかわからない、というような悩みもありますよね。

本日は、日本の会社にあたるベトナムの2014年ベトナム統一企業法(Law No.68/2014/QH13)(以下、企業法)について、会社形態ごとにまとめて行きたいと思います。

ベトナム企業法上認められる会社形態とは?

以下の会社形態が認められています。

  1. 有限責任会社、これは、1人有限責任会社と2人以上有限責任会社に分類されます。
  2. 株式会社
  3. 合名会社(パートナーシップ)
  4. 個人事業

です。ちなみに、実務上は、日系企業のような外資企業は、ほぼほぼ①の有限責任会社になります。日本では、株式会社が一般的なので、初めてベトナム投資する場合は、違和感を感じるかもです。

なお、国営企業は無視しますね。

会社の種類の区分のポイント

上記に記載した通り、会社の種類は4つに区分されます。

でも、実際どう違うのでしょうか?すこし難しいですよね。

この種類ですが、区分するためのポイントがあります。

それは、“責任”と“譲渡”というポイントです。

会社を設立するためには、お金が必要ですので、出資者(会社のオーナー)が必要ですよね。

この出資者が、会社が倒産した時にいったいどれだけの責任を負うのかというかというのが“責任”という問題です。

これは、有限責任無限責任に分類されます。

・有限責任では出資した金額が上限で、それ以上に負担する必要はありません。

すなわち、1,000万円出資であれば、倒産時の会社の債務が5,000万であっても、出資額の1,000万円しか責任を負いません。

・無限責任は、会社の借金、負債でも、自分自身(個人)の財産で返済する責任を負います。

すなわち、先の例でいうと、5,000万円を自分のポケットマネーで返済する必要があります。出資額以上の責任を負うから無限なのですね。

でかい!!

ものすごい違いです。

また、出資者は、変更することもあります。会社に対する持分を他人に譲渡する場合があるからです。

この“譲渡”についてどれくらい制限があるのか?自由にできるのか?と言う点で整理できます。

会社を“責任”という観点から比較する。

それでは、出資者の“責任”という視点で見て行きましょう。

有限責任会社の場合

有限会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪47条≫二人以上有限責任会社

a) 社員には組織,個人がなり得るが,社員の数が 50 人を超えてはならない。

b)社員は,企業に出資した額の範囲内で,企業の債務及びその他の財産義務について責任を負う。

※社員とは、出資者、所有者とイメージしてください。

≪73条≫一人有限責任会社

一人社員有限責任会社とは,一つの組織又は一人の個人(以下「会社所有者」という。)により所有される企業である。

会社所有者は,会社の定款資本の範囲内で会社の各債務及びその他の財産義務について責任を負う。

つまり、どちらも有限ですよね。組織(会社)でも個人でも出資できます。

ちなみに、1人有限責任と2人以上有限責任会社では文字通り、所有者の人数が異なります。

株式会社の場合

株式会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪110条≫

株主には組織,個人がなり得る。株主は最低 3 人とし,最大数は限定しない。

株主は,債務及びその他の企業の財産義務につき,企業に出資した額の範囲内で責任を負う。

つまり、有限です。

有限責任会社と同様、組織(会社)でも個人でも出資できます。

合名会社の場合

合名会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

 ≪172条≫

a)会社の共同所有者であり,同一の名前で共同経営する社員(以下「合名社員」という。)を少なくとも 2 人有する。合名社員のほか,会社は出資社員を追加することができる。

b) 合名社員は個人でなければならず,自己の全財産をもって会社の義務につき責任を負う。

c)出資社員は,出資額の範囲内でのみ会社の債務について責任を負う。

ちょっとややこしいですね。

この場合、出資者は2つに分類されます。合名社員と出資社員です。組織(会社)の出資は認められないようです。

前者は無限責任を負い、後者は有限責任を負います。

個人事業の場合

個人事業の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪183条≫

私人企業とは,一人の個人が主体的に営み,企業の全活動に関し,自己の全財産をもって自ら責任を負う企業である。

つまり、無限ですね。

会社を“譲渡”という観点から比較する。

つぎに“譲渡”という視点で見てましょう!

これは、責任と紐づけてみると理解しやすいですよ。

有限責任会社の場合

有限会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪53条≫二人以上有限責任会社

1. この法律第 52 条 3 項並びに第 54 条 5 項及び 6 項に規定する場合を除き,二人以上社員有限責任会社の社員は,以下の規定に従い,自己の持分の一部又は全部を他人に譲渡する権利を有する。a) 残りの各社員に対し,会社における持分に応じた割合で,同一の条件により持分の売却を申し出なければならない。

b) 売却を申し出た日から 30 日以内に,会社の残りの各社員が購入しない又は全部購入しないときに限り,社員でない者に対し,この項 a 号に規定する各社員に対する売却の申出と同一の条件で譲渡することができる。

3. 各社員の持分の譲渡又は変更の結果,会社に社員が一人しかいなくなる場合,会社は一人社員有限責任会社の形態に従って活動し,同時に譲渡の日から 15 日以内に企業登記の内容変更登記をしなければならない。

≪75条≫一人有限責任会社

c) 定款資本の増額を決定する。会社の定款資本の一部又は全部を他の組織,個人に譲渡する。

≪77条≫

会社所有者が定款資本の一部を他の組織若しくは個人に譲渡,贈与し,又は会社が新たな社員を加入させた場合,会社は,二人以上社員有限責任会社又は株式会社の形態に従って活動し,同時に,譲渡,贈与又は新たな社員の加入の日から 10 日以内に,経営登記機関で企業登記の内容変更の登記を行わなければならない。

二人以上有限責任会社の場合には、原則は社員同士の持分の譲渡となります。しかし、ある一定の場合(会社や他の社員が買い取らない場合など)は他の人にも譲渡することができます。

また、譲渡の結果、一人有限責任会社になる可能性があります。

一方、一人有限責任会社も、持分を譲渡する事ができます。その結果、一人有限責任会社以外の会社形態になる可能性があります。

株式会社の場合

株式会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪126条≫

株式は,この法律第 119 条 3 項に規定する場合及び会社の定款が株式の譲渡を制限する定めを有する場合を除き,自由に譲渡できる。会社の定款が株式の譲渡の制限する定めを有する場合,当該株式の株券にその旨が明記されているときのみ,その各定めは効力を有する

原則、自由にできます。例外も設定できます。あまり他人に介入してほしくない株式会社などは、譲渡に対して制限ができます。

この点、株式会社は、所有と経営が分離されている形態といえますね。出資者はあくまでお金だけだして、経営は専門家にまかせるということです。

合名会社の場合

合名会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

 ≪175条≫合名社員

合名社員は,その他の各合名社員の承認を得ない限り,会社における自己の持分の一部又は全部を他人に譲渡することはできない。

≪第 182 条 ≫出資社員

会社における自己の持分を他人に譲渡する。

合名社員は原則、できませんが、出資社員はできます。

個人事業の場合

個人事業の場合、できません。したら、なくなってしまいます。

このように“責任”と“譲渡”(出資者の個性とも言えますね。)の違いがあります。この違いから、会社の機関組織についても異なってきます。

企業法上どのように“機関”が異なるのか?

次に、機関と言う視点で比較してみましょう。

有限責任会社の場合

有限会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪55条≫二人以上有限責任会社

二人以上社員有限責任会社には,社員総会,社員総会の会長(議長),社長又は総社長を置く。11 人以上の社員を有する有限責任会社は,監査役会を設置しなければならない。社員が 11 人未満の場合,会社の管理の需要に合わせて監査役会を設置することができる。監査役会,監査役会の長の権限,任務,義務,資格,条件及び業務体制は,会社の定款の定めるところによる。

≪ 59 条≫ 社員総会の会合の実施要件(定足数)

社員総会の会合は,少なくとも定款資本の 65 パーセントを保有する社員が出席するときに実施される

≪第 60 条≫ 社員総会の決議

a) 会合に出席する社員の持分総額の少なくとも 65 パーセントを代表する投票により承認される。ただし,この項 b 号に規定する場合を除く。

b) 会社の直近の財務報告書中に記載された財産の総額の 50 パーセント又は会社の定款に定めるそれよりも小さな割合若しくは価額を超える価額の財産の売却,会社の定款の修正,補充,会社の再編,解散の決定については,会合に出席する社員の持分総額の少なくとも 75 パーセントを代表する投票
により承認される。

一人有限責任会社

≪78条≫組織より所有される場合

第 78 条 組織により所有される一人社員有限責任会社の管理組織機構1. 組織により所有される一人社員有限責任会社は,以下のいずれかのモデルに従って管理され,活動する。

a) 会社の会長,社長又は総社長及び監査役
b) 社員総会,社長又は総社長及び監査役

≪79 条≫ 社員総会

社員総会の会合は,構成員総数の少なくとも 3 分の 2 が出席するときに行われる。 会社の定款に異なる定めがなければ,それぞれの社員は一票ずつ同等の価値の議決票を有する。社員総会は,書面により意見を聴取する形式により決定を採択することができる。

6. 社員総会の決議は,会合に出席した社員の過半数が賛成するときに採択される。会社の定款の修正,補充,会社の再編,会社の定款資本の一部又は全部の譲渡については,会合に出席した社員の少なくとも 4 分の 3 の賛成を得なければならない。

≪第 81 条≫ 社長,総社長

1. 社員総会又は会社の会長は,会社の日常的な経営活動を運営させるため,
社長又は総社長を 5 年を超えない任期で任命又は雇用する。社長又は総社長は,自己の権限の行使及び義務の履行について法令及び社員総会又は会社の会長に対して責任を負う。社員総会の会長,社員総会のその他の構成員又は会社の会長は,社長又は総社長を兼ねることができる。ただし会社の定款に異なる定めがある場合を除く。

≪第 82 条≫ 監査役
1. 会社所有者は,監査役の人数を決定し,監査役を 5 年を超えない任期で任命し,監査役会を設置する。監査役は,自己の各権限の行使及び義務の履行について法令及び会社所有者に対して責任を負う。

個人により所有される場合

≪第 85 条 ≫個人により所有される一人社員有限責任会社の管理組織機構

1. 個人により所有される一人社員有限責任会社は,会社の会長,社長又は総社長を有する。
2. 会社の会長は,社長又は総社長を兼任し,又は雇用することができる。
3. 社長又は総社長の権限,義務は,会社の定款,社長又は総社長が会社の会長と締結した労働契約の定めに従う。

所有者が、組織の場合と個人の場合とで異なりますね。

組織の場合には以下の選択肢があります。

社員総会(複数人)を設ける場合と会長(一人)の場合です。社員総会と会長の位置づけは同様です。

株式会社の場合

株式会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪134条≫

1. 株式会社は,証券に関する法令に異なる規定がある場合を除き,以下の二つのモデルのうち一つに基づき,管理組織を選択し,活動する権利を有する。

a) 株主総会,取締役会,監査役会及び社長又は総社長株式会社の株主が 11人未満であり,各株主が会社の株式総数の 50 パーセント未満を保有する組織である場合,監査役会の設置は強制ではない

b) 株主総会,取締役会及び社長又は総社長。この場合,取締役の 20 パーセント以上が独立取締役 でなければならず,また,取締役会に直属する内部会計監査委員会 がなくてはならない。各独立取締役は監察機能を果たし,会社の運営管理を監察する。

≪第 141 条≫ 株主総会の会合の実施要件
1. 株主総会の会合は,少なくとも議決票総数の 51 パーセント又は会社の定款に定める具体的な割合を代表する株主が出席したときに行うことができる。

≪第 144 条≫ 決議の採択要件

1. 以下の内容に関する決議は,会合に出席した株主全員の議決票総数の少なくとも 65 パーセントを代表する株主が賛成したときに採択される。割合は会社の定款の定めるところによる。
a) 株式の種類及び種類ごとの株式総数
b) 経営分野,業種及び領域の変更
c) 会社の管理組織機構の変更
d) 会社の直近の財務報告書中に記載された財産の総額の 35 パーセント又は会社の定款に定めるそれよりも小さな割合,価額以上の価額の投資又は財産の売却の計画
đ) 会社の再編,解散
e) 会社の定款に定めるその他の各事項

この条第 1 項及び第 3 項に規定する場合を除くその他の各決議は,会合に出席した株主全員の議決票総数の少なくとも 51 パーセントを代表する株主が賛成したときに採択される。具体的な割合は会社の定款の定めるところによる。

合名会社の場合

合名会社の場合、企業法上、以下のように規定されています。

≪ 177 条≫ 社員総会

1. 社員総会はすべての社員からなる。社員総会は,社員総会の会長を務める合名社員を 1 人選ぶ。その者は,会社の定款に異なる定めがない限り,同時に会社の社長又は総社長を兼務する

社員総会があります。

≪ 177 条≫ 社員総会

3. 社員総会は,会社のすべての経営業務を決定する権限を有する。会社の定款に定めがないときは,以下の各事項に関する決定は少なくとも合名社員総数の 4 分の 3 の承認を得なければならない。
a) 会社の発展の方向性
b) 会社の定款の修正,補充
c) 新たな合名社員の追加
d) 合名社員の脱退 116の承認又は社員の除名の決定
đ) 投資案件の決定
e) 借入れ及びその他の形式での資本の呼込み,会社の定款がより高い割合
を定めている場合を除く会社の定款資本の 50 パーセント以上の価額の貸付
けの決定
g) 会社の定款がより高い割合を定めている場合を除き,会社の定款資本以上
の価額を有する財産の売買の決定
h) 年次財務報告書,分配される利益総額及び各社員に対して分配される利
益額の採択の決定
i) 会社解散の決定

4. この条第 3 項に規定していないその他の各事項に関する決定は,少なくとも合名社員総数の 3 分の 2 の賛成を得ることで採択できる;具体的な割合は会社の定款の定めるところによる。

個人事業の場合

個人事業の場合、できません。

☆会社機関のまとめ☆

いろいろ文章で記載しましたが、会社機関を会社形態別にまとめると以下のようになります。クリックすると大きくなります。

これは、先に述べた“責任”“譲渡”と言う視点で理解するといいです。

会社を経営するには、お金とそのお金つかって実際に経営するという風に整理できます。

これが分かれていることを所有と経営の分離といいます。お金だけ出資して、優秀な経営者に経営はまかせる!と言うことです。

出資した人が実際に経営する場合、所有と経営は分類しているとはいえません。しかも、その人の責任は重いですよね。これを出資者の個性が強いともいいます。

出資者の、「責任が重い。持分を譲渡できない。」程、所有と経営は分離されているとは言えません。

本日のまとめベトナム企業統一法のまとめ

長い文章になりましたが、表にまとめると以下の通りです。

いろいろありますが、実務上、日系企業のほとんどが「有限責任会社」となります。

クリックすると大きくなります。

あなたが、ベトナム統一企業法を理解することにより、ベストな選択を取ることができることを祈っております!

それでは、また!