みなさん、こんにちは
ベトナム在住8年、公認会計士の永井です。
さて、今日は外資の販売事業に関する規制の法令改正、政令Decree 09/2018/ND-CPのお話しです。
なお、予め強調しておきますが、こちらはまだ政令の段階であり、実務も固まっていない部分も多くございます。
もう2,3ヶ月もすると通達やオフィシャルレターでより詳細な取り扱いも明確となり、役所実務の運用も落ち着いてくると思います。
下記内容はあくまで現時点(2018年4月)の見解であることを踏まえてお読みください。
この記事のもくじ
卸売りについてはビジネスライセンス・HSコードが不要に!?
1.従来法での取り扱いは?
従来は外資企業が販売事業(小売り、卸売り、輸入、輸出)を行うには、ビジネスライセンス(流通販売ライセンス)の取得が要求されていました。
つまり、企業は①企業登録証明書(ERC)②投資証明書(IRC)に加え③ビジネスライセンスが必要となっていましたね。
そして、③のビジネスライセンスには取り扱う品目(HSコード)が登録記載が要求され、登録されていないHSコード品目については取り扱いができませんでした。そのため、企業としては新規アイテムを取り扱う場合はその都度追加登録が必要となり、時間もコストもかかり負担が多くなっていました。
それでは、今回の改正でどこが変更になったのでしょうか。
2.改正されてどうなった?
この点、今回の改正により、規制緩和がなされ、従来の販売事業のうち「卸売り」については、油、米や砂糖などの一部品目を除いて、③のビジネスライセンスが不要となりました。(小売りについては引き続きビジネスライセンスは必要です。)
ベトナムにある多くの販売会社はメーカーを中心とした企業への卸売りですね。
それでは具体的に「卸売り」「小売り」とは法令上でどのような定義となっているのでしょうか。、どのように区分されるかがポイントとなりますね。
3.卸売り、小売りの定義は?
この点、法令上は小売りは「個人、家族、組織へ消費の目的で販売すること」とされています。
一方で卸売りは「小売りではなく、卸売り企業、小売り企業へ販売すること)とされています。
微妙ですね、、、、、
販売会社が製造会社へ部品や材料を販売する場合はどうでしょうか。
こちらは個人消費ではないので卸売りで問題ないですね。
では、販売会社が製造会社へ製造設備を販売するような場合はどうでしょうか。
こちらは上記定義からすると解釈が分かれるところですが、現時点での当局の見解としては、製造に関する物販については「卸売り」となっています。こより詳細な定義、区分については今後、通達やオフィシャルレターなどで詳細に定義されると思います。
それでは、卸売りについてビジネスライセンスが不要となるとすれば、今までそこに記載されていたHSコードの取り扱いはどうなるのでしょうか。
4.HSコードはどうなる?
現時点での法令・当局の見解を踏まえると、ビジネスライセンスが不要ということは、すなわちHSコードの登録記載も不要になると考えられます。
「だったら、今後はどんな新しい品目でもライセンス修正しないで取り扱えるの?」
はい、現時点の解釈では、企業はライセンスに記載のないコード品目も取り扱えることになります。
もっとも、こちらはあくまで現時点の話です。
ベトナムでは法令がしょっちゅう変わります。
しばらくしたら、結局のところ別途HSコードの登録が必要となった、、、、ということも十分考えられます。
5.現在のライセンスは修正が必要か?
今すぐに、というわけではないですが、上記法令・実務の固まってくる頃には、新法に沿うように①企業登録証明書②投資証明書③ビジネスライセンスを整合させるために少し修正が必要となります。頭に入れておいてください。
各ケース別のアクションは次回のブログでまた解説しますね。
6.まとめ
①従来法では、外資企業が販売事業(小売り、卸売り、輸入、輸出)を行うにはERC,IRCに加えビジネスライセンスが必要とされていた。
②今回の法改正により、「卸売り」については一部品目を除いてビジネスライセンスが不要となった(小売りについては引き続きビジネスライセンスが必要となる。)
③ビジネスライセンスが不要となることに伴い、HSコードの登録も不要となる見込み
④小売りと卸売りの定義・区分については解釈が分かれる部分もあるが、製造会社向けの物販は「卸売り」となる見込み
⑤ただし、詳細な実務の取り扱いは不明な点が多い、今後の通達やオフィシャルレターを待つこと
⑥旧法に基づくライセンスについては、新法に沿うように修正が必要となる。
以上、本日は外資の販売事業に関する規制の法令改正、政令Decree 09/2018/ND-CPについてお話ししました。
まだまだ不明な点も多いですが、法律が規制緩和に向かっていることだけは確実ですので、販売会社にとっては徐々にビジネス環境は良くなっていくかと思います。期待して実務の流れを見守りましょう。
また動きがありましたら共有させていただきます。
それではまた明日!
※通関上の輸入規制
上記はビジネスライセンス上の外資規制のお話しです。たとえ、ライセンスを持っていても、一部の規制品目(化学、医療、通信、食品など)については通関のためには管轄当局の輸入許可が別途必要となります。
本改正の通関への影響については必ずロジスティクス会社へ事前に確認をしてください。
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