みなさん、こんにちは、マナボックスベトナムの菅野です。
「労働許可証が更新できない?」
「ワークパーミットの取得が難しくなっている?」
最近このようなお話をよく聞きます。
本日は、2020 年 12 月 30 日に、工夫された2019 年労働法の細則規定として政令 152/2020/ND-CPについてのポイントを実務もどうなっているか?を踏まえてまとめていきたいと思います。この政令は、2021 年2月15 日より施行されています。
なお、この政令152にあたる旧政令は、 11/2016/ND-CPです。こちらとの比較という観点も含めていくとわかりやすいのかなと思います。
動画にて、概要も説明しています。
そして、マナラボ では、ブログにできないような深いお話も提供しています。
>>【Q&A】M_Labo_専門家に聞きました!べトナムの労働許可証の取得の実務の裏側とは?
- ベトナムに進出しており、労働許可書の取得や更新を考えている
- 前回まで取得できたのに、今回はできないと総務担当者から言われている
- ベトナム法令アップデートをしたい
この記事のもくじ
外国人労働者の労働許可証 に関するDecree152のポイント
以下のポイントに注目しました。
- 専門家の労働許可書の取得の難易度が上がった
- 労働許可書の取得免除の要件
- 労働許可証の延長
- 労働許可証の返還・回収の手続き
- 外国人労働者使用状況の報告書
こちらそれぞれ解説していきます。
専門家の労働許可書の取得の難易度が上がった。延長も?
まずこちらですね。
その前に、基本的な点を確認していきましょう。
ベトナム労働許可証には、どんなカテゴリーがある?
こちら政令152の3条によれば、主に以下の4つが定められています。この他にも、ベトナム法人に所属するユニット(駐在員事務所、支店など)の長である外国人も含まれますが、ここでは省略しますね。
カテゴリ | 内容 |
専門家 | a)大学レベル以上の卒業証明書または同等の専門教育の修了証明書を持ち、ベトナムで就労する予定の職位に適合する分野を専攻し、その専門分野に関する仕事に3年以上従事した経験を持つ場合。 b) ベトナムで就労する予定の職位に適合する「公認資格証明書」を持つ、 5年以上従事した経験を持つ場合。 |
管理者 | ベトナム企業法第 4 条 24 項に規定される企業の管理者又は組織の代表あるい は副代表である外国人。 |
技術者 | a)当該外国人が従事する技術分野で、 1 年以上の研修経験があり、かつ 3 年以上の実務経験がある外国人、 または b)ベトナムで就労予定の仕事に関する 5 年以上の経験を持つ外国人 |
上記のようなカテゴリーがあります。では、政令152のどの文章が具体的に影響しているのでしょうか?
「専門家証明書」という文言がの廃止されたことによる厳格化?
- 卒業証明書の厳格化
- 「公認資格証明書」ってなに?
この2点で混乱を招いています。
政令152では、外国組織(親会社というイメージ))が発行した「専門家証明書」は、外国人労働者の専門知識を証明するための文書 として認められなくなりました。
表にまとめると以下の通りです。
政令11号(旧) | 政令152(新) |
外国機関、組織、企業が専門家であると認定した証明書を有する場合 | 削除!
|
大学レベル以上の卒業証明書または同等の専門教育の修了証明書を持ち、ベトナムで就労する予定の職位に適合する分野を専攻し、その専門分野に関する仕事に3年以上従事した経験を持つ場合。 | 大学レベル以上の卒業証明書または同等の専門教育の修了証明書を持ち、ベトナムで就労する予定の職位に適合する分野を専攻し、その専門分野に関する仕事に3年以上従事した経験を持つ場合。 |
– | NEW! b) ベトナムで就労する予定の職位に適合する「公認資格証明書」を持つ、 5年以上従事した経験を持つ場合。 |
以前の政令と実務では、「専門家」の要件として、大学の卒業証明書を提出しなくても、実務上は、労働許可証の取得が可能でした。
しかし、本社が作成する「専門家証明書」の文言が削除されたことによる影響か、手続が厳格化されました。以下のような事例を聞きます。
- 大学等を卒業していない場合には「専門家」としての労働許可証の発行は認められない。
- 卒業証明書の要件が役所によって違うなど(窓口で申請して入手できる一枚限りの卒業証明書でなく卒業証書を要求される。役所によった対応が違う。)
また、新要件の「公認資格証明書」の認定要件についても、具体的にどの証明書ならOKという基準がないため、混乱を招いています。
>>【Q&A】M_Labo_専門家に聞きました!べトナムの労働許可証の取得の実務の裏側とは?
専門領域によっては資格なんてない場合もあります。たとえば、マーケターという資格は存在しませんよね。存在してたらそれは怪しいです。
実務上のおとしどころは、2つ?
専門家ですが、どうしても、「就労職種で5年以上の実務経験を有し、『資格認定証』を有する者」との認定要件についてが、ネックとなります。
上記のような問題が現状は生じています。したがって、以下のような方法で対応する場合が考えられます。
“技術者”で申請
“管理者”で申請
まず、技術者と言う点を深掘りしていきましょう。
技術者の要件は、以下の通りです。
政令11号(旧) | 政令152(新) |
a)当該外国人が従事する技術分野で、 1 年以上の研修経験があり、かつ 3 年以上の実務経験がある外国人、 | a)当該外国人が従事する技術分野で、 1 年以上の研修経験があり、かつ 3 年以上の実務経験がある外国人、
|
– | b)ベトナムで就労予定の仕事に関する 5 年以上の経験を持つ外国人 |
当該技術分野で5年以上という「⻑期の実務経験」があれば、問題ありません。資格証明書の要求もありませんから、専⾨教育を受けていなくても労働許可証が取得できるはずです。
次に、管理者として申請する場合です。ベトナム企業法第 4 条 24 項における管理者とは以下の職位のことです。
- 会社の会長/社員総会会長/社員総会メンバー
- 取締役会会長、取締役
- 社長(GD)
- 会社の定款に定められている職位 (例えば、財務部長や人事・総務部長などでしょう)
この4番目に着目するんですね。これを利用しよう!ってことです。定款に追加して、管理者を追加することを検討します。
例えば、Aさんは、技術部長として駐在する予定だが、大学を卒業していない場合には、“管理者”として、労働許可書を申請すればいいという理屈です。
まあ、本質を無視した、単なる言葉遊びという印象が、正直あります。
労働許可証の取得免除の要件とは?
政令 152によれば、労働許可証の取得免除対象を明確にしました。7条に14項目定められています。その中でも、実際に、影響があるというのは以下でしょう。
- 出資しているか?
- ベトナム人の方と結婚しているか?
- 期間は短い?
- 滞在の目的は?
- サービス分野
という視点で整理しましょう。
- 1_1. 資本金が30億ドン以上の有限責任会社の所有者もしくは出資者
- 1-2. 資本金が30億ドン以上の株式会社の会長もしくは取締役会の構成員
- 2.ベトナム人と結婚しベトナムに居住する外国人
- 3. 1回の滞在期間が30日未満で年3回以内でベトナムで就労する外国人専門家、管理監督者.経営責任者及び熟練労働者
- 5_1.ベトナムでの外国投資企業、駐在員事務所など を設立するためにベトナムに来る外国人
- 5_2.WTO とベトナムの間で段階的市場開放が合意された 11 のサービス分野における企業内異動の管理者・常務・専門家・技術者
>>ベトナムの労働許可証の免除 の19項目を5つに整理しました。
一定の場合、労働者がベトナムでの仕事を開始する遅くとも3日前までに労働局(ベトナムの労働傷病 兵社会省もしくは各地方の労働傷病兵社会局に通知する必要があるようなので注意が必要です。
個人で、出資している場合の有限会社の場合が該当があるかと思います。
労働許可証の延長 2年縛りか
政令 152によれば、労働許可証及び労働許可証免除の証明書の期限は2年間であり、外国人は1度しか更新できないと記載されています。セクション5の16条以降に記載されています。
なお、この政令適用前から労働許可証を持っている場合は、この政令が適用後から2年間になるかと思います。
これにより、解釈は以下のようにわかれます。
- 期限経過後もベトナムで就労するために、労働者は改めて新しく、労働許可証又は労働許可証免除の証明書を申請して取得する必要
- 一人は、最大 2 回しか労働許可証申請ができず最長 4 年間しかベトナムで働けない
まあ、後者はありえないでしょうね。そんなことあったら、大変です!
その他留意点としては、以下があります。
1. 労働許可証の残存有効期間が、5日以上45日以下であること。
2. 所轄官庁が、本条第4項または第5項に定める外国人労働者の需要の受け入れを許可する。
3. 外国人労働者が、当該労働許可証に記載されている雇用主のもとで継続して雇用されることを裏付ける書類があること。
労働許可証の返還や取消の手続き
最後に、労働許可証の返還等の話です。以下の事項により返還や取消がなされる必要があります。21条に記載されています。
- 労働許可証の期間満了
- 労働契約の終了(途中で、退職する場合)
- 労働契約の内容が発行された労働許可証の内容と一致していない
この場合、労働許可証が無効になるわけですが、15日以内に、使用者が労働許可証を回収し、返却理由の説明文書とともに労働局に返却しなければなりません。
ただし、労働許可証を返却できない場合も想定されています。この場合には、労働許可証を労働者から回収できない理由を説明する文書を提出すればいいようです。
前の、政令 11 号でもこのような規定は存在していましたが、厳格には適用されていませんでした。返却しない人も実務上は存在したと思います。しかし、政令152により厳格化されると予想されます。実際に最近、支援させていただいたお客様は、返却もきちんとしました。
外国人労働者使用状況の報告など
政令152の6条によれば、会社は、年2回(7月5日及び1月5日まで)外国人労働者使用状況の半年ごとの報告書を労働局(ベトナムの労働傷病兵社会省)MOLISAもしくは各地方の労働傷病兵社会局DOLISAに提出する必要があるようです。
また、30条によれば、公安省が、毎月ベトナムの組織・企業で働くための就労ビザを交付された「外国人労働者のリスト」を労働局(MOLISA)に提供しなけれなならないと規定しています。外国人労働者の管理及び監督を強化するためかと思われます。公安と労働局の連携の強化がされそうです。
本日のまとめ
本日は、ベトナムの外国人労働者の労働許可証に関する政令152を実務上とうなっているのか?という観点からまとめました。
- 専門家の労働許可書の取得の難易度が上がった→卒業証明書?公認資格証明書ってなに?
- 労働許可書の取得免除の要件→結婚、出資者、期間という視点で整理
- 労働許可証の延長→1回しかできず、そのあとは、取得という概念
- 労働許可証の返還・回収の手続き→厳格化
- 外国人労働者使用状況の報告書→義務あり。
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