みなさんこんにちは、マナボックス の菅野です。
ベトナムに進出する際、よく、お話になるのが、「どんなビジネスができるのか?」「外資規制はあるのか?」というお話です。
この時、重要になるのが「WTOコミットメント」です。
本日は、WTOコミットメントについて、ベトナムの専門家の意見も踏まえ、わかりやすくお伝えしたいと思います。
ベトナム法律の専門家:リー、14年超、述べ350を超える日系企業を支援してきた、法律にも実務にも長けた専門家
それでは、いきましょう!
この記事のもくじ
WTOコミットメントとは?ベトナム投資の際、判断に重要な情報
そもそも、WTOコミットメントのWTOとはなんでしょうか?
WTOとは、World Trading Organizationのことで、日本語にすると、世界貿易機関のことです。
WTOは、世界各国のそれぞれの国が、自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを定めています。自由にという点がポイントです。
噛み砕いて表現すると、国同士で、喧嘩しないように、ルールに基づいて、自由に取引しましょう!お互い裕福になりましょう。と言えます。
このルールに従って、取引をしたいと同意する国は、この機関に「参加する」ということを意思決定し、承認されることにより、加盟できます。
コミュニティの会員みたいな感じでしょうか?
このWTOの会員数は、164(ヵ国)になります。
そして、ベトナムとWTOの関係と言うと、2007年1月11日に加盟しています。加盟に際して、一定のサービス分野を対象として、外国投資家に対して段階的な市場開放を約束しました。これを「WTOコミットメント」と言います。
ちなみに、日本は、WTOの前身のGATTから加盟しています。日本が、戦後の復興期から今日までの、発展を遂げたのは、GATT体制の下で自由貿易が推進され、その恩恵を受けてきたことが大きな要因だと言われています。国が経済的に発展するために、「自由な貿易」は、重要な要因だと言えます。
すなわち、あんまり、厳しいルールで縛って、外国人をベトナムで締め付けるのではなく、どうぞどうぞ、投資してください。このサービス領域はOKですよ。ということをベトナムは外国に対して、約束したのです。
WTO コミットメントは、以下の項目を含んだ表形式になっています。
- セクターおよびサブセクター(CPCコード)
- 取引形態: (1)越境取引 (2)国外消費 (3)業務上拠点(外資比率など) (4) 自然人の存在
- 内国民待遇に関する制限
- 追加公約
各事業分野(CPC コードで特定されています)ごとに、外国人投資家に対して適用される 出資比率上限やその他の条件を定めているのです。
引用元:WT/ACC/VNM/48/Add.2
WTOコミットメントの実際の中身
上記に記載の通り、ベトナムでは2007年にWTOへの正式加盟を果たした際、WTOが規定している12のサービス分野のうち、次の11分野について段階的に開放していくことに同意しました。
11の分野とは以下の通りです。つまり、以下の分野については、日系企業もビジネスができるということです(細かいルールは除いて。実際には他の法令との整合性も確認する必要があります。)。
1.ビジネスサービス(リーガル、会計、税務、コンピュータサービスなど)
2.情報サービス(配達サービス、通信サービス)
3.建設及び関連エンジニアリングサービス
4.流通サービス
5.教育サービス
6.環境サービス
7.金融サービス
8.保険・社会サービス
9.観光・旅行サービス
10.娯楽・文化・スポーツサービス
11.運輸サービス
よくある誤解!ここに注意!WTOコミットメントのポイント
WTOコミットメントに記載があるから、日系企業がなんの制限もなく投資(ビジネスを開始)できるわけではありません。出資比率などの制限があるので、一般的な留意点を紹介します。
ベトナムの国民に影響(生活や文化)が大きそうだな。という場合は、規制が強いという考え方です。
WTOコミットメントにより、外国企業等にも、開放しているが、ベトナム国民や文化に影響がある恐れがある場合は規制あり。(サービスの内容や出資比率という視点)
1:ビジネスサービス
以下のビジネスは、100%外資が規制されています。
- 広告サービス(法定資本の51%を超えてはいけない。合弁会社)
- 農業、狩猟および林業の関連サ ービス(上記同様)
2:情報サービス
- 通信サービス(通話サービス、テレビ会議サービス、VPN、メールなど、サービスの種類によって外資の出資比率制限が異なる)
- 映画制作サービス(外資51%以下の合弁会社、または、事業協力契約のみ)
3:建設および関連エンジニアリングサービス
- 特になし
4:流通サービス
- タバコ、葉巻タバコ、本、新聞、雑誌、録画物件、貴金属、宝石、薬品、火薬、原油、精油、米、サトウキビの砂糖、大根の砂糖は、制限あり
- 小売の販路(第一の小売店以 外)の設立は、エコノミックニーズテスト(ENT)が必要になり、それに基づき、検討される。
5:教育サービス
- 中等教育サービスは開放対象外となっている
- 高等教育サービス、成人教育サービス及び他の教育サービスについての訓練プログラムは、教育訓練省により承認されなければならない。
6:環境サービス(下水処理サービス、ごみ処理サービス等)
- ベトナム国家安全のため、一定の地理的地域へのアクセスが制限されることもあり
- サービス提供方法も一定の制限あり
7:金融サービス
- サービスの範囲に制限あり
- 株式購入の形態による出資の 場合に、ベトナムの商業株式銀行に対する外国の個人、法人の保有株式数は、銀行の定款資本の 30%を超えてはならない。
8:保険および社会サービス
- 外資 100%病院を設立可能。または、ベトナムのパートナーとの合弁、または事業協力契約を結ぶことにより、サービスを提供可能
- 最低資本金は、病院が 2千万米ドル(約20億円)、総合診療室が 2百万米ドル(役2億円)、専科治療所が 20万米ドル(2千万円)。
9.観光および旅行サービス
- 旅行代理店およびツアーオペレーターサービスは合弁である必要あり
10.娯楽、文化スポーツサービス
- 娯楽サービス (劇場、ライブショー、サーカス のサービスを含む)(外資49%以下)
- 電子ゲームの営業(外資比率49%以下の合弁会社、または、事業協力契約のみ)
11.運輸サービス
- 国内運送を除く顧客運送及び国内運送を除く貨物運送(外資比率49%を超えてはならない。外国人の船員総数の制限)
- コンテナ積降サービス(合弁会社のみ)
- 鉄道運送サービス(合弁会社のみ)
本日のまとめ
本日は、ベトナム投資、進出の際に超重要な「事業内容」に関連するWTOコミットメントについて、解説させていただきました。
お役に立てれば幸いです。
弊社マナボックス ベトナムでも、事業計画や市場調査まで含めた、進出支援を実施しております。