みなさん、こんにちは「マナボックス」の菅野です。

本日のテーマは『ベトナムの外国人労働者雇用に関する規定の改正』です。こちらについてFBやTwitter等ですでに知っている人もいるかとは思いますがそちらを深堀していきたいと思います。

2023年9月18日、政府はベトナムで働く外国人従業員、およびベトナムで外国人個人・組織のために働くベトナム人従業員の採用・管理に関する政令152号の一部規定を修正・補足する政令70/2023/ND-CP号を公布しました。この政令第70号は発行日より即時に発効されています。

①労働許可証の資格や申請手続きに関する規制や条件が一部緩和されたものの、政令70号は引き続き外国人よりも②ベトナム人労働者の雇用機会の保護を優先しており、これは政令152号の精神やベトナム労働当局の最近の施行傾向に沿ったものだと言えます。ベトナム人従業員の代わりに外国人を雇用する必要性を正当化することに関して、雇用主にとって潜在的な課題が生じる可能性があることが予想されます。つまり「なんで日本人なの?ベトナム人の雇用増やしてよ」という流れです。

①の背景として下記のリンクで記載の通り、これまで政令第152/2020号は正直、評判がよくありませんでした。というのは労働許可証の取得が難しいという状況があったからです。

>>【ベトナム労務解説】外国人労働者の労働許可証に関するDecree152を解説【実務で混乱?】

大きなポイントは以下の通りです。大きく4つのグループにわけました。

  1. 労働許可証取得について緩和された系
  2. ベトナム人労働者をより保護系
  3. 管理の方法の変更
  4. その他

このうちみなさんに一番影響あるのは1でその次に2になると思います。

  • 1-1、外国人労働者が取得する労働許可証の取得要件が緩和された
  • 1-2、過去の労働許可証は、”専門家 “及び “技術労働者 “の労働許可証の資格を証明するために使用することが可能
  • 1-3、「管理者」の労働許可証の取得のための書類
  • 2、外国人労働者使用承認申請前にベトナム人労働者の採用に関する届出が必要
  • 3、外国人労働許可証の管理の統一
  • 4-1、外国人従業員が各省/自治体で就労する場合、MOLISA への報告が必要
  • 4-2、すべての就労場所は労働許可申請書に明記

それぞれ詳しく解説していきます。

1-1、労働許可証の取得要件が緩和され、取得しやすく!

新政令によれば『外国人専門家』とは、大学卒業以上又は同等の学歴を有し、ベトナムで働く予定の職種に適した実務経験を3年以上有する者と定義されています。以前の政令と比較すると、大学での専攻が担当予定の職種に適した必要はなくなりました。

例えば、「文学部」卒業の人が「営業」をすることはこれまでのルールだと難しかったのですがそれが緩和されました。

また、『外国人技術者』は、ベトナムで働こうとする職種に関しての最低1年間の研修を受け、3年以上の実務経験があればよくなりました。(政令第152/2020号第3条第6項(a)によれば、技術専攻またはその他の専攻で少なくとも 1 年間研修を受け、その研修された専攻の範囲内に少なくとも 3 年間の実務経験がある者)。

外国人は、政令152号で義務付けられていたような、学士号やベトナムでの希望職種に直接関連する訓練を受けている必要はなくなったと考えられます。

比較すると以下のようになります。ただし引き続きNo. 152/2020/ND-CPの専門家に関しての3条の3b)(公認資格証明書)が残っています。こちらですが図解すると以下のようになるでしょう。

まずか「大学卒業」等と「3年の経験」重視しています。もし、大学卒業していなければ「資格」と5年以上の経験」を要求しています。すなわち、高卒でも例えば「会計士」の資格を持って5年以上の経験があれば「専門家」としての要件を満たすことになります。

労働者の枠組み

No. 70/2023/ND-CP

No. 152/2020/ND-CP

専門家

a) 第3条a項3号の改正

少なくとも学士号または同等の学位を取得し、ベトナムで任命される職務に対応する少なくとも3年の経験を有すること。

(「ベトナムで就労する予定の職位に適合する分野を専攻」がなくなった)

b)はそのまま

a)大学レベル以上の卒業証明書または同等の専門教育の修了証明書を持ち、ベトナムで就労する予定の職位に適合する分野を専攻し、その専門分野に関する仕事に3年以上従事した経験を持つ場合。

b) ベトナムで就労する予定の職位に適合する「公認資格証明書」を持つ、 5年以上従事した経験を持つ場合。

技術者

c) 第3条a項6号の改正:

「a) ベトナムで任命される職務に対応する1年以上の訓練を受け、3年以上の経験を有する。

→「従事する技術分野」から「任命される職務に対応する」

a)当該外国人が従事する技術分野で、 1 年以上の研修経験があり、かつ 3 年以上の実務経験がある外国人、

または

b)ベトナムで就労予定の仕事に関する 5 年以上経験を持つ外国人

まあ、文章だけだとよくわかりませんが実務がアップデートされていきより明確になると思います。

1-2、過去の労働許可証は、”専門家 “及び “技術労働者 “の労働許可証の資格を証明するために使用することが可能

70号令は、ワークパーミットは一度しか更新できないという152号令の要件を変更していません。しかし、70号令によれば、一度更新されたワークパーミットを持つ外国の専門家や技術者が、ワークパーミットに記載されている同じ職種や職名での仕事を続けたい場合、新しいワークパーミットの申請でそのワークパーミットを「専門家」または「技術者」としての資格の証明として使用することができます。

1-3、”管理者”の労働許可証の取得のための書類。

政令70号により、「管理者」の定義は政令152号と変わりませんが、雇用主は証拠として以下の書類を提出しなければなりません。

  • (i)企業の定款または運営規定
  • (ii)企業の登録証明書、設立証明書または決定書
  • (iii)外国人を「管理者」に任命することに関する企業の決議または決定書。

書類が増えそうですね。

また「業務執行取締役」の定義が拡大されたようです。

政令第70号によると、(i)企業の少なくとも1つの機能を指揮し、直接管理する外国人で、当該企業の長の直接の指示および管理の下で働く者、または(ii)企業の支店、駐在員事務所または事業所の長である者は、「業務執行取締役」の資格を有します。

2、外国人労働者使用承認申請前にベトナム人労働者の採用に関する届出が必要に!

外国労働使用の承認を申請する前のベトナム人労働者の募集に関する通知が必須となりました。要はまずはベトナム人を採用してほしいと。それでもダメだったら外国人もいいよ!ということです

2024年1月1日から、雇用主は外国労働使用の承認の申請を提出する少なくとも15日前に、ベトナム労働・戦争烈士・社会事務省(MOLISA)の公的電子情報ポータルや適切な職業サービスセンターに、外国人が予定される職種のベトナム人従業員の募集に関する通知を提供する必要があります。

通知内容は、予定される職種、職名、仕事の内容、人数、資格要件、経験、給与、労働時間、場所などの情報を含める必要があります。

ベトナム人を募集できなかった場合、雇用主は予定の募集ポジションで外国人を使用する承認を申請することができます。

「専門家」の要件が緩和された一方で、外国人採用の必要性報告に関しては厳格化されています。従来は、外国人採用の前にその必要性(その職位がベトナム人では対応できないこと)を当局に報告するのみで認められたようですが、今回は、ベトナム人労働者を採用できなかった場合にのみ、外国人労働者を雇用する必要性が認められるようになります。

3、外国人労働許可証の管理の統一

政令第70条によると、MOLISAは、政府、首相、各省庁、省レベルの機関または政府機関により設立が許可された組織で働く外国人従業員に対し、労働許可証を付与することができます(労働許可証に関連するすべての事項について管理権限を有する)。このような組織には、例えば銀行業や保険業を営む企業が含まれるようです。

さらに、MOLISAは、様々な省/市町村の雇用主の下で働く外国人従業員に労働許可を与えることができます。

MOLISAの管理権限に属さないその他の場合は、関連する省DOLISAが就労許可を与える(就労許可に関連するすべての事項の管理権限を有する)。

工業区または経済区の管理委員会は、工業区または経済区で働く外国人従業員に労働許可証/労働許可証免除証明書を交付する権限を有しなくなりました。

4-1、外国人労働者が各省/自治体で就労する場合、MOLISA への報告が必要である

外国人従業員が様々な省/市町村の雇用主の下で働く場合、雇用主は、外国人従業員が就労を開始した日から3営業日以内に、MOLISAおよび従業員が就労する省/市町村の対応する労働傷病兵社会省(DOLISA)にオンライン報告書を提出しなければなりません。

また、すべての就労場所は労働許可申請書に明記しなければなりません。

政令第70号によると、外国人従業員が雇用主のもとで様々な勤務地で働く場合、雇用主は「労働許可申請書」に全ての勤務地を明記しなければなりません。

本日のまとめ

本日は『ベトナムの外国人労働者雇用に関する規定の改正』と言うテーマでお伝えしました。

  1. 労働許可証の取得が緩和された。
  2. 引き続き優先順位はまずベトナム人労働者の雇用機会の保護を優先であり、その人材でカバーできない場合は「外国人」の採用がOK

ということでした。

是非お役に立ててください。