こんにちはラボの菅野です。

今日は『ベトナムの有限会社における投資家の保有割合と権利』というテーマでお伝えします。

  • 定足数
  • 議決権

という順序で解説していきます。ベトナムに進出する日系企業の場合、ほとんどの場合が「有限会社」の形態で進出すると言っていいでしょう。そのため「有限会社」にフォーカスして解説していきます。

社員総会の開催に必要な出資比率(定足数)を解説

まずは定足数の説明です。

総会の定足数:

  • 有限会社(LLC): メンバー会議は、出席メンバーが会社の定款の資本の少なくとも65%を代表する場合に有効とされます。定足数に達しない場合、次回会議は50%で有効、3回目の会議は出席者数に関係なく有効です。
  • 株式会社(JSC): 株主総会は、出席株主が議決権を有する株式の少なくとも51%を代表する場合に有効とされます。定足数に達しない場合、次回会議は33%で有効、3回目の会議は出席者数に関係なく有効で​す。

このように段階的になっているのが特徴的です。呼んでもこない人は無視しますねということになります。そうしないといつまで経っても進まないですもんね。

引用元:ベトナム企業法の59条、147条

2人有限会社における保有割合と投資家の権利、支配権の割合

2人有限会社の社員総会(まずは株主総会のイメージで大丈夫です)の保有割合と権利の内容を以下のようにまとめますね。普通決議と特別決議があります。

有限会社はこのようになります。いわゆる「支配権」を持つためには結構な割合を持つ必要がありますね。

決議の種類

必要な賛成割合

決議事項
一般決議出席メンバーの持分の65%以上の賛成
  • 年間事業計画および会社の発展戦略の決定 
  • 50%未満の資産売却に関する契約の承認 
  • 会計年度ごとの財務諸表の承認 
  • 会社の組織構造の決定 ・役員の選任および解任
特別決議出席メンバーの持分の75%以上の賛成
  • 会社の定款の変更
  • 会社の再編または解散
  • 50%以上の資産売却に関する契約の承認

引用元:ベトナム企業法の60条

以下の表は、二人以上有限会社と一人有限会社の社員総会に関する比較を示し、提供された情報と条文を基に作成しました。

二人以上有限会社と一人有限会社の社員総会では違い

1人会社でも「社員総会」を選ぶことが可能です。若干異なるので以下でまとめておきます。

項目

二人以上有限責任会社

一人有限責任会社の社員総会
社員総会人数

全ての社員、委任代表者を含む会社の社員全員。(第55条)

3人から7人(第80条)
開催頻度少なくとも年に一回、定款に定められた頻度(第57条)定款に定められた頻度(必要に応じて開催)(第80条)
定足数社員総数の少なくとも3分の2(第58条)社員総会の構成員の総数の少なくとも3分の2以上が出席するときに限り行われる
決議要件

一般:出席メンバーの持分の65%以上の賛成

特別:出席メンバーの持分の75%以上の賛成

持分総額の65%以上の賛成(第80条)

定款修正など重要事項は持分総額の75%以上の賛成(第80条)

書面決議は持分総額の65%以上の賛成(第80条)

議事録会合は議事録に記録され、録音やその他の電子的形式で保存(第60条)重要な決定は文書で記録(第83条)
会長の選任社員総会で選出(第56条)会社所有者が直接選任または自らが務める(第81条)

この表は、社員総会の構成、開催頻度、定足数、決議要件、議事録の記録方法、および会長の選任方法について、二人以上有限責任会社と一人有限責任会社の違いとそれぞれの条文を明確に示しています。

 

株式会社の場合

株式会社の場合も解説しておきます。

決議の種類

必要な賛成割合

決議内容
一般決議出席株主の議決権の過半数(51%以上)の賛成

以下の特別決議以外の決議(特定の重要な決議(第144条第1項に列挙されている事項)以外の全ての決議)

  • 会社の発展の方向性についての採択
  • 毎年の配当額決定
  • 取締役及び監査役会の構成員の選任、免任、 罷免
  • 会社の定款の修正、補充の決定 
  • 資本政策
  • 会計年度ごとの財務諸表の承認

特別決議

 

出席株主の議決権の少なくとも65%の賛成

  • 株式の種類および各種類の総数
  • 事業内容の変更
  • 会社の組織構造の変更;
  • 最新の財務諸表に記載された総資産価値の35%以上に相当する投資プロジェクトまたは資産売却、または会社の定款で定められたより小さい比率
  • 会社の再編または解散
  • 会社の定款で定められたその他の事項。

引用元:ベトナム企業法の144条

少数派にも権利がある!

上記では「支配権」という視点で解説しました。どれだけ保有していれば「権限」があるか?というお話しです。では少数派にはなにも権限がないのか?というそうではありません。以下のような趣旨があります。

  1. 透明性の向上:
    • 少数株主や投資家が決算書の閲覧や監査を要求できることで、企業の財務状況や経営状況が公正に公開され、信頼性が高まります。
  2. 経営のチェックアンドバランス:
    • 少数派株主の権利は、経営陣の独断や不正行為を防ぎ、全ての株主の利益を考慮した意思決定を促進します。
  3. 公平性の確保:
    • 企業が一部の大株主だけでなく、全ての株主の利益を考慮した運営を行うことで、公平な企業運営が確保されます。
  4. 投資の誘引:
    • 少数株主の権利が保障されている企業は、投資家にとって魅力的であり、資本を集めやすくなります。
  5. 長期的な健全な経営:
    • 少数株主の権利が確保されることで、企業は持続可能な成長を目指す長期的な健全経営が促進されます

以下のようにまとめますね。

権利

株式会社(JSC)

有限責任会社(LLC)
株主/メンバー総会の召集要求10%以上の株式を持つ株主 (関連条文: 第114条)10%以上の出資を持つメンバー (関連条文: 第58条)
決算書の閲覧5%以上の株式を持つ株主 (関連条文: 第115条)5%以上の出資を持つメンバー (関連条文: 第59条)
監査要求特定の条件下で可能 (関連条文: 第118条)適用外
取締役会のメンバー選任累積投票制度 (関連条文: 第144条)適用外

決算書の閲覧ができるというところは大きいかもしれませんね。ちゃんと経営しているの?というのを5%の保有でもその権利を持っているからです。