ラボの菅野です。

本日は『財務DDの全体像』について解説します。デューデリジェンス(DD)って言ってもどんな項目にどんな視点で実施するの?という疑問が生まれると思います。そこでまずは全体像をこの記事で解説していきたいと思います。マインドマップでも全体像をおさえながら理解するといいかと思います。

財務・税務DDの流れ

一般的には以下のような流れで実施されます。

  1. 買収会社の資料を依頼して入手(どんな資料があるのかをもれなく把握するのが大事!)
  2. 全般的な質問(QAチェックリストなどを使ってもれなく対応しよう)
  3. 資料を分析する
  4. 追加の資料依頼や追加の質問(チェックリストなどを使う)
  5. DDのレポートの作成

この前に「基礎情報を分析」することも大事ですがここには含めていません。

です。そして今日は、「財務DD」の分析チェックリストの全体像に解説したいと思います。財務DDの全体像は以下の通り。

  • 貸借対照表分析
  • 損益計算書分析
  • CF分析
  • 事業計画分析

それぞれまずは項目(B/SとP/L)についてリストアップします。

貸借対照表の分析の全体像

貸借対照表(B/S)の分析です。資産を負債の金額が漏れなく正しく、実在するのが計上されているのかをチェックします。ベトナムの貸借対照表の勘定科目コード及び重要性を意識するといいでしょう。

ただ一言で簡潔にDDのポイントを言えば、資産については「それってお金になるの?」です。この視点を持つことが大事ですね。買い手からしたら「売掛金」が1億ある会社買ったのに全部貸し倒れの前提だった!みたいなことがあったら嫌ですからね。

負債という視点では網羅性ですね。法務DDや税務DDとも関連するのですが罰金のリスクが顕在化して買収してからお金出て行かない?という視点です。

勘定科目ベトナム勘定科目コード

ポイント

現金及び預金

  • 111,112,113
帳簿との一致、裏金等に留意

売上債権

  • 131
滞留していないか?価値ある?

棚卸資産

  • 151〜157
過大になっていないか?

有形固定資産

  • 211
収益生み出してる?

無形固定資産

  • 213
収益に関連ありそう?区分
リース取引
  • 212
判定正しい?

貸付金等(その他投資)

  • 128、228(一部)
定期預金、貸付金)
有価証券
  • 121
該当がない場合が多い

敷金・差入保証金

  • 244
資産性ある?

その他の資産

  • 138
  • 242(前払費用)、141(前渡金)
 

仕入債務

  • 331
 

借入金等

  • 341、343
親子ローンが長期など

税金に関する項目

  • 333
税務DDとあわせて検証

未払給与・賞与

  • 334、338(社会保険等の部分)
 

その他負債

  • 338、344
 

引当金(賞与等)

  • 352、353
網羅性に注意

純資産

  • 411
 

関係会社間

  • 136、221、222
  • 336
 

ここが一番大事!かも

オフバランス(計上されるべきものが計上されていない)項目の検証も大事です。

損益計算書の分析

続いて損益計算書の分析です。全体的な利益構造やビジネスの理解を深めることが前提として大事です。基本的なことを理解していないと細かい分析をしても意味がありません。

それでは個別の科目別のチェックリストの項目を解説します。

勘定科目名勘定科目コード

ポイント

売上高
  • 511、521
税務DDとも関連、収益の計上漏れなども

売上原価

  • 632
 

原価計算

  • 621、622、627
  • 631
製造業の場合、ITの場合もプロジェクトの場合は該当あり。
販売費及び一般管理費
  • 641、642
勘定科目の正確さ、抽象度
営業外損益、
  • 515
  • 635
 

特別損益

  • 711
  • 811
 

税金関係

  • 821
税務DDと一緒に

このような感じになります。これも買い手の頭になって考えてみましょう。

「売上が嘘だったら嫌だな」「売上原価が本来より少なくて利益が過大だったら嫌だな」「費用について損金不算入だったら嫌だな」

この嫌だなを解決するための手続きがDDです。

財務DDのまとめ

本日は、財務DDのうちB/SとP/Lの分析の概要とお伝えしました。買い手の立場になりながら整理するとわかりやすいです。

  • B/Sの資産について本当にそれお金になるの?実在するの?です。
  • 負債はもれなく計上されているの?です。
  • P/Lの売上は正しい?もれなく計上されている
  • P/Lの費用の勘定科目は正しく区分されているの?

と言った視点を持つといいと思います。