ベトナム法令ニュースです。

2024年6月29日、ベトナム国会は社会保険法No. 41/2024/QH15(「SI法2024」)を公布しました。

2025年7月1日から施行される予定のベトナムの「2024年社会保険法」は、社会保障制度の強化と参加者の権利拡大を目的とした大幅な改正が行われています。これは、労働者の福祉を保護し、社会保険制度の持続可能性を確保するための重要な一歩です。

本記事では、改正の背景と主要な変更点について詳しく解説します。

ベトナムビジネスをされている方にとって気になる点だと思いますのでまずはキーポイントを学びましょう。

背景:2024年社会保険法が必要とされた理由

ベトナムの高齢化と社会保障の重要性

ベトナムは現在、高齢化についても気にしないといけないフェーズになってきていると判断され、特に高齢者層の社会保障がますます重要になっています。多くの労働者が老後の年金制度に十分加入しておらず、長期的な社会保障制度の強化が必要とされています。2024年の改正は、このような社会的背景を受けて策定されました。

たとえば、新法では社会年金給付が導入され、80歳から75歳に社会年金受給年齢が引き下げられています。

既存の2014年社会保険法の課題(加入してないから加入して!)

2014年の社会保険法には、多くの問題が指摘されていました。たとえば、強制加入対象者が限られており、多くの労働者が社会保険に加入できない状況がありました。また、給付内容も十分ではなく、特に長期的な拠出が求められていたため、労働者の負担が大きかったのです。これらの問題を解決するために、2024年法では改正が行われています。

従業員が支払期間を維持し、一時金ではなく年金を選択することを奨励するための規定が追加されました。

新法では、2025年7月1日以前に社会保険に登録した個人(推定約1800万人)は、一時金を請求する資格があると規定しています。きちんと加入したらいいこともあるよ!ってことですね。

国際基準との整合と社会保障の強化

ベトナム政府は、国際的な基準を取り入れて、社会保障制度を充実させることを目指しています。新法では、社会保険の加入対象を拡大し、より多くの労働者が福利厚生を享受できるようにすることが重要な目的とされています。

ベトナム2024年社会保険法:主要な変更点とその解説 9つ

2025年7月1日から施行される「ベトナム2024年社会保険法」は、ベトナムにおける社会保障制度の改善と参加者の権利拡大を目指して、大幅な改正が行われています。以下に、主要な変更点をリストアップし、それぞれについて詳しく解説します。

  1. 強制社会保険の対象範囲拡大
  2. 社会保険拠出金の計算方法の変更
  3. 高齢者向けの社会年金制度の導入
  4. 特定の個人向けの月額手当
  5. 産休および育児に関連する給付の拡充
  6. 年金受給資格の短縮
  7. 任意社会保険参加者への追加給付
  8. 一時金受給条件の明確化と一時金から年金受給へのインセンティブ強化
  9. 外国人労働者とベトナム人海外労働者への社会保険適用

それぞれ解説しますね。

2024年に改正されたベトナムの社会保険法は、広範囲にわたる制度の見直しが行われており、特に労働者の福祉と社会的保障を強化することを目的としています。以下に、主な変更点を整理して解説します。

1. 強制社会保険の対象範囲の拡大

労働契約のある従業員だけでなくパートも?

2024年法では、強制社会保険の対象者が大幅に拡大されました。1か月以上の労働契約を持つ全従業員に加え、家庭経営者、地域のパートタイム労働者、給与を受け取らない企業経営者も対象となります。この変更により、今まで社会保険の対象外だった短期労働者やパートタイム従業員も保険に加入することが求められ、より広範な労働者層が社会保障の恩恵を受けることができます。

企業資本の代表者、役員、取締役会メンバー、給与を受け取らない監査役も対象に追加されました。ただし、退職年齢を超えた者は除外されます。これにより、より広範な労働者層が社会保険制度に組み込まれるようになりました。

これらの対象者の月額社会保険拠出金は、病気および産休基金には給与の3%、退職および死亡基金には22%と規定されています。

2. 社会保険拠出金の計算方法の変更

手当も漏れなく含めた金額で保険料を計算

従来の「基本給」(ただ実際には給与と同様の性質の手当も含めている)に代わり、新しい「参照基準」が拠出金と給付金の計算に用いられます。これにより、拠出金の計算は基本給だけでなく、給与手当や他の定期的な手当も含めて計算されるようになりました。また、参照基準はインフレや経済成長に応じて調整され、経済状況に対応した柔軟な計算が可能です。

3. 高齢者向けの社会年金制度の導入 早めにもらえる?

80歳じゃなくて75歳になったらもらえる

新法では、75歳以上の年金未受給者に対して社会年金給付が導入されました。以前は80歳以上が対象でしたが、年齢が引き下げられたことで、より多くの高齢者が支援を受けやすくなっています。さらに、貧困世帯や準貧困世帯の70歳以上の高齢者も、早めに年金給付を受けることが可能です。

ただ、日本人には関係ないと思います。

4. 特定の個人向けの月額手当の補充

年金もらえる資格がなくても月額手当もらえる

年金を受け取る資格がない従業員には、拠出履歴に基づいた月額手当が支給されます。特に、年金受給資格がないが退職年齢に達している場合、この補助金により最低限の生活支援が行われるため、長期的な福祉支援が強化されます。

より高齢者が安心できますね。ベトナムも今は若い国ですがどこかのタイミングで少子高齢化になっていきます。

5. 産休および育児に関連する給付の拡充

子供は宝! 養子の場合でも一時金を支給

妊娠中の検診休暇が新たに認められ、出産や代理出産、または6か月未満の子供を養子に迎えた際には一時金が支給されるようになりました。これにより、育児や出産に対する経済的なサポートが手厚くなり、育児期間中の従業員の負担が軽減されます。

6. 年金受給資格の短縮 20年から15年

20年じゃなくて15年加入してたら年金もらえるよ

従来は20年の社会保険加入が必要だった年金受給資格が、2024年法では15年に短縮されます。これにより、年齢に達したものの加入期間が不足していた労働者も年金を受け取る資格を得やすくなり、老後の生活の安定が図られます。

これも日本人は関係ないでしょうね。

7. 任意社会保険参加者への追加給付

任意でもOK

任意で社会保険に加入している従業員も、今回の改正で追加の給付を受けることが可能になりました。退職や死亡に関する給付に加え、産休や労災給付も提供され、任意参加者の選択肢が拡大されました。特に、産休手当は国家予算で保証され、加入者が追加の拠出を行う必要はありません。

8. 一時金受給条件の明確化と一時金から年金受給へのインセンティブ強化

一時金(一回)じゃなくて年金(月額など)に移行するようなインセンティブ

新法では、一時金の代わりに年金を受け取るよう奨励するインセンティブが設けられました。これにより、一時金受給条件が見直され、特定の疾病や障害がある場合に一時金を選択できるものの、基本的には長期的な年金受給が推奨されています。

9. 外国人労働者とベトナム人海外労働者への社会保険適用

外国人への社会保険の適用

新法では、ベトナムで働く外国人労働者や海外で働くベトナム人労働者にも社会保険制度の適用が拡大され、彼らの労働環境や国際条約を考慮した権利が保証されます。これにより、グローバルに働く労働者もベトナムの社会保険制度の保護を受けることができるようになります。

この辺りは詳細が決まり次第要チェックですね。日本人にどの様な影響があるか?わかりません。

まとめ

2024年の社会保険法は、ベトナムにおける社会保障制度を強化し、労働者の生活を支えるための重要な改正です。これにより、企業も労働者も新たなルールに適応し、長期的な福利厚生制度の安定を図ることが求められます。企業は、労働者の社会保険加入に伴う負担を予測し、対応策を整えることで、労働者の満足度と企業の持続可能性を向上させることができます。

新たな社会保険法がもたらす影響は今後も注視する必要がありますが、この改正が労働者と企業双方にとって有益であることを期待しています。