ラボの菅野です。

今日は『税の還付についてのまとめ』というテーマでお伝えします。

ベトナムの税金還付に関する条文

ベトナムにおける税金の還付については通達80/2021/TT-BTの第V章 税金還付手続きのところに記載されています。27条から50条まであります。

  • 第27条 税還付申請書の処理における税務機関の責任
  • 第28条 付加価値税還付申請書類
  • 第29条 バイオ燃料に関する特別消費税の還付申請書
  • 第30条 二重課税防止協定およびその他の国際条約に基づく税還付申請書
  • 第31条 所有権変更、事業転換、合併、統合、分割、解散、破産、事業終了時に控除されていない付加価値税の還付申請書
  • 第32条 税還付申請書の受理
  • 第33条 税還付申請書の分類
  • 第34条 税還付書類の処理
  • 第35条 税還付書類の処理における専門措置の適用
  • 第36条 税還付決定
  • 第37条 国家予算収入還付命令または相殺命令の発行
  • 第38条 税還付処理結果の返却
  • 第39条 納税者に対する税還付後の検査および審査
  • 第40条 税還付の回収
  • 第41条 超過支払金の還付に関する税務機関の責任
  • 第42条 超過支払金の還付申請書
  • 第43条 超過支払金還付申請書の受理
  • 第44条 超過支払還付申請書の分類
  • 第45条 超過支払還付申請書の処理
  • 第46条 税還付決定
  • 第47条 国家予算収入還付命令または相殺命令の発行
  • 第48条 税還付処理結果の返却
  • 第49条 納税者に対する税還付後の検査および審査
  • 第50条 税還付の回収

このように並列的だとわかりにくいので抽象化して構造化してみます。

グループ名

該当条文

観点概要
グループ1: 税還付申請の受理と分類第27条〜第33条税還付申請の提出、受理、分類、検査手順

税務機関がどのように申請書を受け取り、分類し、申請内容に基づいて還付処理の手順を決定するかについて扱っています。

グループ2: 税還付の処理手続き第34条〜第38条税還付申請書類の内容に基づく処理手順、還付命令税務機関が還付対象額や債務相殺の判断を行い、還付・相殺決定書の発行と還付命令の実行プロセスが説明されています。
グループ3: 税還付後の検査と回収第39条〜第40条税還付後の追跡・監査および誤還付の回収対応還付後の税務機関による検査プロセスと、誤還付金の回収手続きについての詳細が記載されています。
グループ4: 超過支払金の還付第41条〜第50条超過支払金に対する還付処理の流れと責任範囲納税者が支払った超過金の還付方法と、税務機関の処理責任や手順について段階的に示されています。

このように整理するとストーリーとリンクするのでスッと入ってくるかもしれません。

どんな場合に税金の還付が認められるのか?

これが気になると思います。よく聞くのが付加価値税(VAT)の還付ですよね。ベトナムの決まりでは以下のように整理しています。

付加価値税(VAT)の還付
これは、通常の商品やサービスにかかる「付加価値税(VAT)」を一定の条件で払い戻す仕組みです。例えば、仕入れは課税だけど売り先はEPEなどの企業は、VATの一部または全部を払い戻してもらえることがあります。これはベトナムの付加価値税法に基づいています。これは先ほど申し上げた通りベトナムの日系企業でも該当ありますよね。

二重課税防止協定およびその他の国際協定に基づく税還付
ベトナムが加盟している「二重課税防止協定」や「国際協定」に基づいて、他国と取引がある企業や個人が税金を二重に払わなくて済むよう、税の一部が還付される仕組みです。例えば、ベトナムと他国で同じ収入に対して両方の国で税金を課すことを避けるために、一定の条件下で税還付が行われます。

特別消費税の還付(バイオガソリンの場合)
バイオガソリン(再生可能な生物資源から作られるガソリン)にかかる特別な消費税の還付です。環境にやさしい燃料を使うための特例として、バイオガソリンを使用した場合には消費税の一部が還付される仕組みが設けられています。個別性が強いですね。

第27条 税還付申請の処理における税務機関の責任

  1. 税法に基づく税還付のケース

    a) 付加価値税(VAT)の還付:付加価値税法に基づく還付。

    b) 特別消費税の還付:バイオガソリンに関する特別消費税法に基づく還付。

    c) 二重課税防止協定およびその他の国際協定に基づく税還付:ベトナム社会主義共和国が加盟している二重課税防止協定およびその他の国際協定に基づく還付。

  2. 税法に基づく税還付申請の受理および処理に関する責任

    a) 各省の税務局は、本条第1項に記載されている税還付申請(ただし、以下のbおよびc項に該当する場合を除く)を受理し、管理下にある納税者の申請を処理します。

    ハノイ、ホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省の税務局長は、税務局の直接管理下にある納税者からのVAT還付申請を受け取り、以下の業務を行う権限を税務支局に委任することができます:還付申請の分類(検査前に還付可能か、還付前に検査が必要かの判断)、還付可能な税額の決定、還付対象の税額に対する税債務、罰金、延滞金の相殺の判断、税還付決定書や国家予算収入との相殺を含む還付決定書の草案作成(以下「税還付決定」と呼びます)、または申請拒否通知(該当する場合)。これらの処理が完了した後、すべての書類を税務局に引き継ぎ、この通達に従って手続きを完了します。

    b) 納税者が投資プロジェクトに関するVATを申告する場合、該当する税務局(デクリーNo.126/2020/ND-CP第11条第1項aに従う)でその投資プロジェクトに関する税還付申請を受理し、処理します。

    c) 監督税務当局は、所有権の移転、企業の転換、統合、合併、全面分割、部分分割、破産、または事業終了時に控除後の残額がある仕入VATの還付申請を受理し、処理します。

引用元:通達80/2021/TT-BTの27条

納税者は誰に税還付申請書を準備し、提出するのか?

あなたの会社がもし「還付」したい!となった時誰に「申請」するのでしょうか?2019年税務管理法第71条の規定によれば、納税者が税還付申請書を提出すべき先は以下の通り。

税還付申請書類

  1. 税還付の対象となる納税者は、「所轄の税務機関」に「税還付申請書」を準備し、提出しなければなりません。
  2. 税還付申請書類には以下が含まれます: a) 税還付請求書 b) 税還付請求に関連する書類

したがって、税還付の対象となる納税者は、所轄の税務機関に税還付申請書を準備し、提出する必要があります。税還付申請書類には以下が含まれます:

  • 税還付請求書
  • 税還付請求に関連する書類

なので「税還付申請書」をきちんと理解する必要がありそうですよね。

還付申請書・フォームに関連する書類の一覧を見てみよう!

税金還付に関連する還付申告書のフォームは、通達80/2021/TT-BTCで発行された付録Iのセクション5にリストアップされています。19個あります。ただ羅列じゃなくて上記の条文と関連させると整理しやすいかもしれません。

ただこうやって全体を眺めてみると日系企業に関連しないフォームもたくさんあるのでそこは注意しましょう。

グループ名該当条文

概要

フォームコードフォーム名
グループ1: 税還付申請および申請書に関連するフォーム
第27条〜第33条
税還付申請に関する基本的な申請書とその添付文書リスト

01/HT

国家予算収入の還付請求書
02/HT二重課税防止協定またはその他の国際条約に基づく税還付申請書
01-1/HT購入した商品およびサービスの請求書・文書の一覧
01-2/HT通関された通関申告書の一覧
01-3a/HT外交使節団用に購入した商品およびサービスに対する付加価値税の一覧
01-3b/HTVAT還付対象の外交官のリスト
01-4/HT出国する外国人向けのVAT還付文書一覧
02-1/HT税支払文書の一覧
グループ2: 申請受理・通知関連のフォーム
第32条〜第36条
税還付申請書の受理、申請に関する通知、受理または不受理の通知
01/TB-HT<税還付申請 / 税還付申請取消要求>の受領通知
02/TB-HT<税還付申請 / 税還付申請取消>の<受理 / 不受理>通知
03/TB-HT不正申請に関する通知
04/TB-HT<税還付対象外 / 税還付対象外>のファイル通知
05/TB-HT事前還付検査への申請書の転送通知
グループ3: 税還付決定および関連書類の発行に関するフォーム
第34条〜第39条
還付が決定した場合や、還付額の確定、相殺処理に関するフォーム
01/QĐHT税還付の決定
01/PL-HTNT還付対象の税額、延滞金、過剰支払い罰金の附属書
02/QĐHT税還付および国家予算収入の相殺決定
01/PL-BT相殺される税額、延滞金、罰金の附属書
グループ4: 税還付の回収および取消関連のフォーム
第40条〜第50条
還付の取り消しや、過剰支払いの回収に関するフォーム
03/QD-THH税還付回収決定
01/DNHUY税還付申請取消要求

このようになります。

税還付申請の処理期限はいつまで?

税還付申請の処理期限は、2019年の税務管理法第75条で規定されています。類型化されます。

  • (1)申請して還付
  • (2)申請すると税務調査が入って還付

この2つです。

(1)事前還付対象の申請書の場合
税務機関が申請書の受理を通知した日から6営業日以内に、税務機関は納税者に対して還付を決定するか、申請書を事前還付検査に移行する旨を通知しなければなりません(税務管理法2019第73条第2項に該当する場合)。また、還付条件を満たしていない場合は、納税者に対して還付が行われない旨を通知します。

なお、申請書に記載された情報が税務機関の管理情報と異なる場合、税務機関は納税者に対して書面で説明と補足を求めます。この説明・補足にかかる時間は、申請書の処理期限には含まれません。

ここがキモかなと思います。「よくわからないから説明して!」と税務当局が要求すればこの6営業日というのは実質的に無効化されそうですよね。

(2)事前還付検査が必要な申請書の場合
税務機関が申請書の受理を通知した日から40日以内に、税務機関は納税者に対して還付を決定するか、還付条件を満たさない場合は還付を行わない旨を通知します。

上記の期限を超えてしまった場合は?

(1)および(2)の期限を超えたにもかかわらず、税務機関の過失で還付決定の遅延が発生した場合、還付額に加えて、税務機関は1日当たり0.03%の利息を還付額および遅延日数に基づいて支払わなければなりません。

利息の支払いは、国家予算法の規定に従って中央予算から支出されます。

補足(税務管理法2019第76条による税還付決定権限)

  1. 税務総局長および各省または中央直轄市の税務局長
    税法の規定に基づく税還付の場合、税還付の決定権を持ちます。

  2. 超過納税還付申請を受理した税務機関の長
    超過納税の還付の場合に、還付の決定権を持ちます。

  3. 税還付額が発生する税関の総局長、税関局長、および税関支局長
    税法の規定に基づく税還付の場合に還付の決定権を持ちます。

少しでもお役に立てれば幸いです!