一時的な社会保険給付は、ベトナム社会保険法に基づき、特定の条件を満たした労働者が社会保険料の積立金を一括で受け取ることができる制度です。本記事では、一時的な社会保険給付の概要、法的な根拠、申請方法、記入ガイドを詳しく解説します。
日本人でも一定の場合はこの話に該当します。企業内転勤でない場合、ベトナムの社会保険に加入する必要があるからです。
この記事のもくじ
ベトナムにおける一時的な社会保険給付とは?
一時的な社会保険給付とは、労働者が社会保険制度に一定期間加入した後、特定の事情により社会保険を継続できなくなった場合に、一括で保険料の積立分を受け取ることができる制度です。
誰が資格あるの?その対象者(法的根拠:2014年社会保険法 第60条、第77条)
ベトナム人と外国人(日本人)に分類するとわかりやすそうです。
ベトナム人について
社会保険に加入している労働者は、以下のいずれかの条件を満たす場合、一時的な社会保険給付を受けることができます。
- 定年に達しているが、社会保険の支払い期間が20年未満(または女性のパートタイム公務員等の場合は15年未満)であり、引き続き任意社会保険に加入しない場合。
- 強制社会保険加入者が1年以上失業している場合、または任意社会保険加入者が1年以上保険料を支払っておらず、総支払期間が20年未満の場合。
- 海外へ移住する場合。
- 以下の重篤な病気を患っている場合:
- がん、麻痺、肝硬変、ハンセン病、重度の結核、HIV感染がエイズに進行した場合
- その他、保健省が定める疾病
以下の職種に従事し、退職・除隊した際に年金受給条件を満たしていない場合:
- 人民軍の幹部および専門兵士
- 人民警察の専門幹部および技術下士官
- 暗号業務を行う者(軍人として給与を受ける者)
- 任期満了後に除隊した人民軍・人民警察の下士官および兵士
- 生活手当を受けている軍事・警察・暗号業務学生
(社会保険法2014年 第60条、第77条、および決議93/2015/QH13 に基づく)
日本人について
第143/2018/ND-CP号が根拠となります。
よくあるのが、ベトナムの強制保険に加入していて、退職年金(一回でもらう一時金)をもらえる要件を満たしていて「帰任」(労働許可証が更新されない場合)する場合だと思います。
第2条 適用対象
1. ベトナムで働く外国人従業員は、ベトナムの管轄当局が発行した労働許可証、業務証明書、業務許可証を持ち、ベトナムの雇用主と無期労働契約または1年以上の有期労働契約を結んでいる場合、強制社会保険の対象となる。
9条の6項. 一時的な社会保険給付の受給資格
本政令第2条第1項に規定される労働者のうち、以下のいずれかの条件を満たす場合、一時的な社会保険給付を受給する権利を有する。
- a) 本条第1項に規定された退職年齢に達しているが、社会保険料を20年間納付していない者。
- b) がん、麻痺、肝硬変、ハンセン病、重度の結核、HIV感染(エイズ発症) など、生命に関わる疾病(保健省の規定による)を患っている者。
- c) 本条第1項に規定される退職年金受給資格を満たしているが、ベトナムに引き続き居住しない者。
- d) 労働契約が終了した者、または就労許可証・実務証明書・業務免許の有効期限が切れ、更新されなかった者。
引用元:143/2018/ND-CP号の9条
申請に必要な書類(法的根拠:決定166/QD-BHXH 第6条)
一時的な社会保険給付を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。
基本書類
- 社会保険手帳
- 申請書(フォーム14-HSB)(決定166/QD-BHXHの付属書に規定)
- 身分証明書(IDカード、パスポートなど)
追加で必要な書類(該当者のみ)
- 海外移住者:パスポートのコピー、永住ビザ、外国籍取得証明(決定166/QD-BHXH 第6条1.2.3項)
- 重篤な疾病者:診断書、医療記録(決定166/QD-BHXH 第6条1.2.3項)
- 軍務経験者(2007年1月1日以前の地域手当を証明する場合):個人申告書(フォーム04B-HBKV)(通達181/2016/TT-BQP)
フォーム14-HSBの記入方法(法的根拠:決定166/QD-BHXH 第6条)
フォーム14-HSBに記入する内容
- 氏名:パスポートやIDと同じ表記で記入
- 住所:現住所を詳細に記入(番地、町名、市区町村、省/市)
- 申請理由(海外移住、重病、失業後1年以上経過など、具体的に記入)
- 受取方法(銀行振込または現金受取)
- 遅延申請の理由(該当者のみ)
申請手続きと処理期間(法的根拠:2014年社会保険法 第110条)
提出方法(決定222/QD-BHXH 2021年)
- 電子申請(オンライン):社会保険の電子ポータルまたはI-VAN経由で申請
- 郵送申請:社会保険機関へ郵送
- 窓口申請:社会保険事務所へ直接持参
処理期間(2014年社会保険法 第110条)
- 申請者は、給付を受ける資格を満たしてから30日以内に申請を行う必要がある
- 社会保険機関は、申請書類を受理後10日以内に処理を完了し、支払いを行う
- 年金受給者の申請は最大20日かかる場合がある
一時的な社会保険給付の計算方法(法的根拠:2014年社会保険法 第60条、通達59/2015/TT-BLDTBXH 第19条)
一時的な社会保険給付の計算式は以下の通り。
(1.5 × 2014年以前の社会保険加入年数)+(2 × 2014年以降の社会保険加入年数)× 平均給与(Mbqtl)
また、社会保険加入期間が1年未満の場合は、以下の計算式が適用されます。
22% × 加入月数 × 月額給与(ただし、最大2ヶ月分の平均月額給与が上限)
本日のまとめ
一時的な社会保険給付(フォーム14-HSB)は、特定の条件を満たす労働者が社会保険料の積立金を一括で受け取ることができる制度です。
- 申請対象者(ベトナム人(は、海外移住者、定年退職者、重病者、1年以上失業している人など(2014年社会保険法 第60条、第77条)
- 日本人の場合は、労働契約が終了した、または就労許可証・実務証明書・業務免許の有効期限が切れ、更新されなかった場合も可能
- 申請には社会保険手帳、身分証明書、申請書(フォーム14-HSB)が必要(決定166/QD-BHXH 第6条)
- 申請方法は、電子申請、郵送、窓口申請の3つ(決定222/QD-BHXH)
- 給付金の処理期間は通常10日、年金受給者は最大20日かかる(2014年社会保険法 第110条)
一時的な社会保険給付を申請する際は、記入ミスを防ぎ、必要書類をすべて揃えることが重要です。最新の法律や規定を確認しながら、スムーズに申請を進めましょう