2025年2月14日から補習授業のルールが変更

「ベトナムで補習授業をしたいけど、どんな手続きが必要?」「新しい法律の影響は?」と疑問に思っている日系企業や個人の方も多いのではないでしょうか?

2024年12月30日に**教育訓練省が発行した「通達29/2024/TT-BGDDT」**は、2025年2月14日から施行され、補習教育の運営ルールが大きく変わります。本記事では、新しいルールのポイントを分かりやすく解説し、日系企業にもどのような影響があるのかを考えていきます。

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🔍 そもそもベトナムにおける「補習教育」とは?

「補習授業」というと、日本の塾を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、ベトナムでは少し事情が異なります。

ベトナムの公立学校では、基本的に学校での授業は無料ですが、多くの教師が放課後や休日に「補習授業」として追加のクラスを有料で提供しているのが現状のようです。

しかし、これまでは規制が不明確だったため、

  • 学校の授業だけでは学力が足りず補習を受ける生徒が増加
  • 一部の教師が「正規の授業で教えず、補習でのみ詳しく説明する」という問題発生
  • 生徒・保護者の経済的負担が増大

という状況が続いていました。

そこで、ベトナムの政府は教育の公平性を保つために、新たなルールを導入しました。

通達29/2024/TT-BGDDTの重要ポイント

重要だと思われるところを記載していきます。

1️⃣ 補習授業は生徒の自主性が最優先!(第3条)

まず大前提として、補習授業は生徒が「受けたい」と思ったときにのみ実施可能!
これは、教師や学校側が生徒に補習を「強制」することを防ぐための規定です。

第3条(補習教育の原則)
「補習教育は、生徒が自主的に希望し、保護者の同意を得た場合に限り実施できる。」

たとえば、日本の塾でも「補習を受けないと成績が伸びないから無理やり通わせる」のは良くないですよね。ベトナムでも、こうした無理強いを防ぐために、生徒の意思を尊重するルールが明確化されました。

2️⃣ 学校内の補習授業は無料!(第5条)

今まで一部の学校では、放課後の補習授業に追加料金を請求するケースがありましたが、**新通達では「学校内での補習はすべて無料」**と定められました。当たり前といえばあたりまえですね。

無料の対象となるのは以下の生徒だそうです。

  1. 学期末試験の成績が不合格だった生徒
  2. 学校が選抜し、優秀生として育成する生徒
  3. 卒業試験や進学試験のために自主的に補習を希望する生徒

Article 5. Extra teaching and learning in schools

1. Extra teaching and learning in schools must not collect fees from students and is only for students who register for extra classes in each subject as follows:

  • a) Students whose final semester subject results are unsatisfactory;
  • b) Students selected by the school to nurture excellent students;
  • c) Final year students voluntarily register to review for entrance exams and graduation exams according to the school’s educational plan.

3️⃣ 学校外で補習授業をするには「事業登録」が必須!(第6条)

「学校の外で補習をしたい!」という場合、これからは事業登録が必須になります。
これは、教育ビジネスの透明性を高めるための措置です。

第6条(学校外の補習教育の要件)
「…組織または個人が学校外で補習教育を実施し、生徒から授業料を徴収する場合、企業法に基づき事業登録を行わなければならない。」

大きな手続きの流れは以下。日系企業で塾とかやっている場合は影響あるかもしれません。

個人で補習を行う場合の登録手続き

  1. 事業登録申請書の提出
  2. 身分証明書のコピー
  3. 補習施設の賃貸契約書(借りる場合)
  4. オンラインまたは地方の財務計画局で申請

法人(補習学校)を設立する場合

  • 企業法に基づき法人登録
  • 教育訓練局の認可を取得
  • 施設の情報を電子ポータルに公開

4️⃣ 納税の義務も明確化(第7条)

補習教育で得た収入は、税務・会計法に基づき適切に申告しなければなりません。
つまり、補習教育は「正式なビジネス」として扱われるため、授業料収入に対して税金が課されるということです。これも当たり前ですよね。

第7条(補習教育の収入管理)
「補習教育の授業料は、保護者・生徒と補習施設の合意に基づくものとし、税務・会計法に基づいて管理される。」

例えば、日本の学習塾でも「法人化して納税する」のが一般的ですが、ベトナムでも同様の形になりつつあります。

5️⃣学校勤務の教師は校長への報告義務あり!(第6条)

「学校で教えている先生が、放課後や週末に補習授業をしたい!」というケースもありますよね。しかし、2025年2月14日以降、学校勤務の教師が学校外で補習授業を行う場合、校長(または教育機関の責任者)への報告が義務化されます。

第6条(報告義務)
「学校に勤務する教師が学校外で補習教育を行う場合、校長に対して以下の情報を報告しなければならない。」

報告すべき内容

  • 補習を行う教科
  • 授業の実施場所
  • 授業の形式(オンライン・対面など)
  • 補習の時間帯

つまり、学校の先生が勝手に補習授業を開いてお金を取ることができなくなるということです。

例えば、日本の学校では「先生が放課後に個別指導をする」のは珍しくありませんが、ベトナムでは「学校外の補習授業がビジネス化しやすい」ため、この報告義務が設けられたと考えられます。


📄 「フォーム03」— 報告義務に必要な書類

補習授業を行う教師は、**通達29/2024/TT-BGDDTの付属書「フォーム03」**を使用して報告を行う必要があります。

「フォーム03」の記入要領

項目番号記入事項
(4)管轄の教育訓練局(高校の場合)または教育訓練課(中学校の場合)の名称
(5)報告を提出する教師が勤務する教育機関の名称
(6)補習授業を実施する教育機関の名称
(7)補習授業を実施する教育機関の名称(重複記入の場合あり)
(8)報告書の作成年度(学年度)
(9)報告を提出する教師の氏名
実際に雛形を見てみよう!

補習教育に関する教師の報告書(通達29/2024/TT-BGDDT)


教育訓練局(または教育訓練課)

学校名:__________


ベトナム社会主義共和国

独立 – 自由 – 幸福

__________, ______年____月____日


宛先:__________ 校長先生

報告者(教師)の情報

  • 氏名: _________________________________
  • 担当科目: _________________________________

学校外での補習授業に関する報告

私は、本年度の学校外での補習授業の実施について、以下の通り報告いたします。

  1. 補習授業を行う科目: _________________________________
  2. 補習授業の実施期間:
    • 曜日:__________
    • 時間帯:__________
    • 開始日:__________
  3. 補習授業の形式: _________________________________
  4. 補習授業の実施場所:
    • 住所:__________
    • 連絡先(電話番号等):__________

本報告書の内容に関して、私は全責任を負うことを誓約いたします。


日付:__________年____月____日

報告者(署名・氏名記入):



【記入時の注意点】

  • 教育訓練局または教育訓練課の名称

    • 高等学校の場合:教師が勤務する教育機関を直接管理する教育訓練局の名称
    • 中学校の場合:教師が勤務する教育機関を直接管理する教育訓練課の名称
  • 報告を提出する教師が勤務する教育機関の名称

  • 報告を提出する教師が勤務する教育機関の名称(繰り返し)

  • 報告を提出する教師が勤務する教育機関の名称(繰り返し)

  • 報告書の作成年度(学年度)

  • 報告を提出する教師の氏名

6️⃣違反したらどうなる?(第16条)

もし新ルールを守らなかったら…?
補習教育のルール違反は、罰金・営業停止・事業登録の取り消しなど、厳しい処分が科される可能性があります。

Article 16. Handling of violations

1. Schools, tutoring facilities, organizations and individuals that violate regulations on tutoring and learning, depending on the nature and severity of the violation, will be handled according to the provisions of law.

2. Heads of agencies, organizations and units whose cadres, civil servants and public employees violate regulations on extra teaching and learning, depending on the nature and severity of the violation, shall be handled according to the provisions of law.

📝 まとめ

まとめです。日系企業で塾などのビジネスをしている企業は影響がある可能性があります。

✅ 補習授業は生徒の自主性が最優先!
✅ 学校内の補習は無料に!
✅ 学校外の補習授業は「事業登録」が必須!
✅ 学校勤務の教師が補習授業を行う場合は校長に報告義務あり!(「フォーム03」で申請!)
✅ 補習授業の収入には納税義務あり!
✅ 違反すると厳しい処分があるので注意