「せっかくの税優遇、ずっと続くわけじゃない?」

ベトナムで事業を立ち上げる際、法人所得税(CIT)の優遇措置を期待している方も多いのではないでしょうか?
しかし、税制優遇は永遠に続くものではありません。特に「プロジェクトの期間」との関係を正しく理解していないと、知らない間に優遇措置が終了していた…! なんてこともありえます。

今回は、ハノイ税務局の公文書 No. 70284/CT-TTHT をもとに、プロジェクト期間と法人所得税の優遇措置の関係について解説します。

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税制優遇は「プロジェクトの期間」がカギだ!

📌 まずは基本ルール

ベトナムでは、一定の条件を満たす「新規投資プロジェクト」 に対して、法人所得税の免除や減税が適用されます。
例えば、工業団地内の新規プロジェクト には、以下のような優遇措置が設けられています。

📖 政令 No. 91/2014/ND-CP 第1条第6項より

「新規投資プロジェクトに対する法人所得税の優遇措置として、最初の2年間は法人税を免除し、次の4年間は50%減税 する。」

つまり、プロジェクトが新規投資として認められれば、法人税の軽減が受けられるのです。そもそもの優遇税制についての基本知識は以下で解説しています。いろんなパターンもあります。

>>【ベトナム税制】優遇税制を適用できる条件を徹底解説

>>ベトナムの優遇税制の構造とパターンを理解する方法

でも、プロジェクトの期間が終わったら終わっちゃうの?

ここでポイントとなるのが、「プロジェクトの運営期間」 です。そもそもなんですか?という疑問がうまえっると思います。要は会社が活動していい期間です。以下で解説しています。

>>ベトナムの投資登録証明書(IRC)をどこよりも詳しく徹底解説!【保存版】

ハノイ税務局の公文書 No. 70284/CT-TTHT では、次のように明記されています。

📖 No. 70284/CT-TTHT より

「最初の投資登録証明書の有効期間が終了した後は、新規投資プロジェクトに対する法人所得税の優遇措置は適用されない。」
「その後は、法律の規定に従い、税を申告・納付しなければならない。」

つまり、最初の投資登録証明書(IRC)に定められたプロジェクトの期間が終了 すると、税制優遇も終了する のです。そんなことある?って思ったのは私だけじゃないでしょう?

これは、「電車の定期券」のようなものだと考えると分かりやすいかも。

  • 定期券が有効な間は、割引料金で電車に乗れる(=税優遇が受けられる)
  • 定期券の期限が切れたら、通常料金を支払う必要がある(=税優遇がなくなる)

このように、プロジェクトの期間と税制優遇の関係は密接につながっていると考える人もいます。

実際にオフィシャルレターを見てみよう!

税務総局
ハノイ税務局

ベトナム社会主義共和国
独立 – 自由 – 幸福

文書番号: 70284 /CT-TTHT
工業団地における新規投資プロジェクトに関する法人所得税優遇措置について

ハノイ、2020年7月29日

宛先: Daewoo Tec 有限会社
(住所:ハノイ市メーリン区クアンミン町クアンミン工業団地381区画)
(税コード:0108998619)

Daewoo Tec 有限会社が2020年7月15日付の公文書 No. 01/DW/2020 において、工業団地における新規投資プロジェクトに対する法人所得税の優遇措置に関する照会を行ったことに対し、ハノイ税務局は以下の見解を示します。

1. 法的根拠

  • 政令第91/2014/ND-CP(2014年10月1日公布)第1条第6項に基づく規定(税に関する政令の一部改正および補足):

    「政令第218/2013/ND-CP(2013年12月26日公布)の第16条第3項の改正および補足」

    第3項:
    「本政令第15条第3項に規定される新規投資プロジェクトの実施から生じる所得および工業団地における新規投資プロジェクトの実施から生じる所得については、最初の2年間は法人所得税が免除され、その後4年間は50%の減税が適用される。ただし、社会経済的に有利な地域に所在する工業団地はこの対象外とする。

    社会経済的に有利な地域とは、特級都市の市街地区、中央直轄の第1級都市、または省都の第1級都市に該当する地域を指す。ただし、2009年1月1日以降に地方行政区画の変更により新たに設立された特級都市、第1級都市の地区は除外される。工業団地が有利な地域と不利な地域の両方にまたがる場合、当該工業団地の税優遇措置の適用は、投資プロジェクトが実際に所在する地域に基づいて判断される。」

  • 政令第218/2013/ND-CP(2013年12月26日公布)第16条第4項に基づく法人所得税の免税および減税期間の適用開始時期に関する規定:

    「法人所得税の免税・減税期間は、新規投資プロジェクトが最初に課税所得を計上した年から連続して適用される。最初の3年間に課税所得が発生しない場合は、新規投資プロジェクトの収益が初めて計上された年から適用され、4年目からカウントされる。」

    最初の課税期間において、新規投資プロジェクトの生産・事業運営期間が12か月未満の場合、企業はその課税期間に税免除・減免措置を適用するか、次の課税期間から適用するかを選択し、税務当局に登録できる。

  • 政令第218/2013/ND-CP(2013年12月26日公布)第19条第2項に基づく法人所得税優遇措置が適用されない所得の種類:

    a) 資本移転、資本拠出権の譲渡から生じる所得
    b) 不動産の譲渡による所得(ただし、社会住宅投資・事業に関する所得は例外)
    c) 投資プロジェクトの譲渡、投資プロジェクトへの参加権の譲渡、鉱物探査および採掘権の譲渡から生じる所得
    d) ベトナム国外での生産および事業活動から生じる所得

  • 政令第12/2015/ND-CP(2015年2月12日公布)第1条第17・18項に基づく規定:

    「商業・サービス分野の投資プロジェクトで、経済特区やハイテクゾーン、工業団地、その他の税優遇区域の外で発生する所得は、法人所得税の優遇措置の対象外とする。」

2. ハノイ税務局の指導方針

Daewoo Tec 有限会社の投資プロジェクトは、2019年11月12日にハノイ工業・輸出加工区管理委員会によって最初の投資登録証明書(プロジェクトコード: 2173909949)が発行され、投資プロジェクトの実施期間は5年間とされました。本プロジェクトの所在地は、ハノイ市メーリン区クアンミン町クアンミン工業団地にあり、これは社会経済的に有利な地域には該当しません。

したがって、本プロジェクトが政令第12/2015/ND-CP第1条第18項の新規投資プロジェクトの基準を満たす場合、法人所得税の優遇措置が適用される可能性があります。ただし、政令第218/2013/ND-CP第19条第2項、および政令第12/2015/ND-CP第1条第17項に記載されている所得は、税優遇措置の対象外となります。

また、新規投資プロジェクトの税免除および減税期間は政令第218/2013/ND-CP第16条第4項の規定に従って決定されます。

最初の投資登録証明書の有効期限が終了した後、当該企業は新たな投資プロジェクトに対する法人所得税の優遇措置を申請する権利を有しません。したがって、法律の規定に従い、税を申告および納付する必要があります。

企業は、法人所得税の優遇措置を受ける条件および適用範囲を自主的に判断し、税務当局に自己申告・自己精算する必要があります

実施過程で疑問点が生じた場合は、ハノイ税務局(査察・検査部門第1課)にお問い合わせください。


通知の受信者:

  • Daewoo Tec 有限会社
  • ハノイ計画投資局
  • ハノイ税務局 内部部門

ハノイ税務局 副局長
グエン・ティエン・チュオン

プロジェクト期間を延長したらどうなる?

では、「プロジェクトの期間を延長」した場合、税制優遇はどうなるのでしょうか?

答えは、「条件を満たせば優遇措置を継続できる可能性がある」 です。

📖 公文書 No. 5462/CT-TTHT より

公文書 No. 5462/CT-TTHT

「企業が現地の条件に基づき税優遇措置を享受している場合、付与された投資登録証明書に従って事業運営期間が終了した後でも、当該企業が現在の規定に基づく税優遇措置の条件を満たし、プロジェクトの運営期間を延長する場合、最初に権限のある機関によって承認された投資プロジェクトに従い、残りの期間について法人所得税の優遇措置を引き続き享受することができます。」

ただし、本件は特別なケースであり、税務当局の見解が異なる可能性があるため、企業は適用の根拠を確認するために、管轄の税務当局に対して書面で照会を行う必要があります。

つまり、
延長が正式に認められ(政府の承認が必要)、
税優遇の条件を引き続き満たしていれば(対象地域、業種、投資形態など)、
法人所得税の減免を継続できる可能性があります。

まあ常識的に考えればそうだよね!となります。私もこの見解が普通かなあとおもったり。

ただし、これは特別なケース であり、税務当局の見解が異なる場合もあるため、事前に書面で確認することが推奨されています。

まとめ:プロジェクトの期間 = 税優遇のカギ!

  • 法人所得税の優遇措置は「プロジェクトの運営期間」と連動している。
  • 最初の投資登録証明書の有効期間が終わると、税優遇も終了する。
  • プロジェクトの期間を延長すれば、条件次第で優遇措置を継続できる可能性がある。
  • 税務当局と事前に確認し、計画的に対応することが重要!

ベトナムでのビジネスを成功させるために、税制優遇のルールをしっかり理解し、「知らなかった!」では済まされないリスクを回避しましょう。

もしプロジェクトの期間延長や税優遇の適用について疑問があれば、税務当局や専門家に相談するのがおすすめです!

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