💰 「ビジネスを成長させるために資金が必要!」
そんなとき、企業が考えるのは銀行や投資家からの借入ですよね。でも、ローンにも短期・中期・長期の違いがあり、条件や手続きがそれぞれ異なります。特に、外国からの借入(海外投資家や親会社からの資金調達など)を検討している方は、ベトナム国家銀行への登録義務にも注意が必要です。

この記事では、短期・中期・長期ローンの違いや登録・報告義務について、わかりやすく解説します! 

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1. 短期・中期・長期ローンの違いとは?

📝 まずはローンの基本を理解しよう!

ベトナムでは、ローンは借入期間によって以下の3種類に分類されます。

ローンの種類借入期間主な用途(例)
短期ローン1年以内運転資金、給与支払い、設備購入、原材料調達、緊急資金
中期ローン1年以上5年以内事業投資、機械・設備の購入、住宅改修、学費
長期ローン5年以上住宅・不動産購入、大規模投資、インフラプロジェクト

📌 イメージしやすい例え

  • 短期ローン は、給料日前の「つなぎ資金」や、売掛金が入るまでの「つなぎ融資」のようなもの。
  • 中期ローン は、車を買うときのローンのように、少し長めの投資向け。
  • 長期ローン は、家を買うときの住宅ローンのように、大きな資金を長期にわたって返済するもの。

ベトナム国家銀行(SBV)への登録が必要か?

「ローンを組むだけで登録が必要なの?」 そう思った方も多いはず。私もベトナム赴任した時はそう思いました。

ただ、すべてのローンが登録の対象ではありません
通達03/2016/TT-NHNN第9条 によると、以下の場合にのみ、ベトナム国家銀行への登録が義務付けられています。

📌 国家銀行への登録が必要なケース

ローンの種類登録の必要性
短期借入(1年以内)原則不要 ただし、以下の場合は登録が必要:
1. 契約更新により合計期間が1年超となる場合
2. 1年経過時点で未返済の元本が残っている場合(10日以内の完済は除く)
中期借入(1年以上5年以内)登録必須
長期借入(5年以上)登録必須

💡 たとえば…
短期借入をしたものの、1年後にまだ返済が終わっていなかった場合、その時点で登録が必要になります。まるで「レンタル品を期限内に返さなかったら、契約を正式に結び直さないといけない」ようなものですね。

ベトナムでの借入登録の手続きは?

「登録が必要なのはわかった!でも、どうやって登録すればいいの?」

通達03/2016/TT-NHNN第14条 に基づく登録手続きは、以下の流れで進めます。

中央銀行への登録の大まかな流れ

1️⃣ 必要書類の準備

  • 借入申請書(通達第13条の規定に準拠)
  • 借入者の法的書類(設立許可証、事業登録証など)
  • 借入契約書および付随契約(ベトナム語訳付き)
  • 借入目的を示す書類(投資計画、事業計画など)
  • 銀行口座の取引履歴(借入金の資金移動証明)
  • 保証契約書(必要に応じて)

2️⃣ 国家銀行または地方支店に申請

  • 借入総額が1,000万USD超の場合:国家銀行本部(外国為替管理局) に提出(通達03/2016/TT-NHNN第18条)
  • 1,000万USD以下の場合:借入者の本店所在地の国家銀行地方支店 に提出(通達03/2016/TT-NHNN第18条)

3️⃣ 審査・承認

  • 通常、審査には7〜10営業日 かかる
  • 承認後、正式な登録証明書が発行される

ベトナムでの借入実施報告は必要?

借入登録が完了したら、それで終わりではありません。通達12/2022/TT-NHNN第41条に基づき、以下のケースでは毎月、借入実施状況の報告が必要 です。

対象となる借入と報告義務の概要

報告の種類対象となる借入報告義務
短期借入の実施報告1年以上の契約延長・未返済がある短期借入毎月5日までに報告
中期借入の実施報告すべての中期借入毎月5日までに報告
長期借入の実施報告すべての長期借入毎月5日までに報告

通達12/2022/TT-NHNN 第41条 では、借入者の報告義務について以下のように規定されています。

第41条:借入者の報告義務

  1. 毎月、報告対象となる借入者は、翌月5日までに借入実施状況を報告する義務がある。
  • 借入の種類に関わらず、登録されたすべての中期および長期の外国借入については報告が必要。
  • 短期借入については、1年以上の契約延長や未返済の元本がある場合のみ報告義務が発生する。
  1. 報告は、原則としてオンラインで行う。
  • ベトナム国家銀行のウェブサイトを通じて提出する。
  • ただし、システムに技術的な問題が発生した場合は、書面での報告を認める。
  1. 報告内容の誤りが発見された場合、3営業日以内に修正報告を行わなければならない。
  • 企業は誤りを認識した時点で、速やかにオンラインで修正を提出する。
  • 修正がオンラインでできない場合は、書面による提出が求められる。

借入金に関する「実施報告書」の作成方法(ガイドライン)

実施報告のポイント

短期借入の実施報告

  • 企業情報(借入者情報・登録番号)
  • 借入の詳細(契約番号・金額・期間)
  • 返済状況(元本・利息)
  • 変更点(契約延長、繰延等)

中期・長期借入の実施報告

  • 借入目的の進捗状況
  • 返済状況
  • 投資計画の進捗(必要に応じて証拠資料添付)

なお報告書のフォーマットは、通達12/2022/TT-NHNNの付録に準拠

報告の流れは以下のとおりのようです。

1報告書の作成

  • 借入契約情報(契約番号、借入額、利率、借入期間)
  • 資金の利用状況(使用目的、実際の資金流入状況)
  • 返済状況(元本・利息の支払状況)
  • 変更点(契約延長、借入条件の変更など)

2報告方法の選択

  • オンライン申請(ベトナム国家銀行の公式ウェブサイトで提出)
  • システムエラー時は書面提出(国家銀行の地方支店に直接提出)

3報告期限の厳守

  • 毎月5日までに提出
  • 誤りが発覚した場合、3営業日以内に修正申請を行う

まとめ

ベトナムでの外国借入には、借入登録だけでなく、毎月の実施報告義務があることを忘れてはいけません。
特に、中期・長期借入はすべてのケースで報告が必須であり、短期借入でも1年以上の契約延長や未返済の場合は報告義務が発生 します。

比較項目短期ローン中期ローン長期ローン
借入期間1年以内1年以上5年以内5年以上
主な用途運転資金、給与支払い、設備購入、原材料調達、緊急資金事業投資、機械・設備の購入、住宅改修、学費
住宅・不動産購入、大規模投資、インフラプロジェクト
登録義務原則不要(※例外あり)必須必須
登録が必要な条件1年以上の契約延長や未返済の元本がある場合すべての中期借入
すべての長期借入
登録先国家銀行地方支店(例外あり)国家銀行地方支店または本部(借入額次第)
国家銀行地方支店または本部(借入額次第)
実施報告の義務特定条件下で必要(1年以上の契約延長や未返済あり)毎月5日までに報告
毎月5日までに報告
金利一般的に低め(短期のためリスクが低い)短期より高く、長期より低い
最も高い(長期にわたるリスクがあるため)
返済リスク比較的低い(短期間での返済が可能)事業投資の進捗に依存
長期間の返済管理が必要
審査のスピード早い(書類が少ない)短期より時間がかかる
最も時間がかかる
担保の必要性不要な場合が多い担保が必要なケースもある
担保が必要になることが多い
利息総額の傾向低め(短期間のため)短期より高い
最も高い(長期のため利息の総額が増える)

企業が注意すべきポイント

  • 報告はオンラインで毎月5日までに提出
  • 短期借入の一部でも報告義務が発生するケースがある
  • 誤りが発覚した場合、3営業日以内に修正報告を行う

このルールを守ることで、企業の財務管理がスムーズに進み、不要なトラブルを避けることができます。