マナラボの菅野です。
「退職金を受け取ったけど、ベトナムで税金がかかるの?」
駐在員や出向者の方からよく聞く質問です。日本では退職金には一定の税制優遇がありますが、ベトナムではどうなのでしょうか?実は、「退職金=非課税」とは限りません! 退職金の支払い元や契約の内容によって、課税されるかどうかが変わってきます。
この記事では、「日本人の退職金はベトナムで課税されるのか?」 を、オフィシャルレターを通じて具体的な事例とともにわかりやすく解説していきます。
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>>🔓M-Lab_労働契約終了時の日本人駐在員に対する日本の「退職金」に関する各省の通達一覧
この記事のもくじ
ベトナムの個人所得税と退職金の関係
まず、ベトナムの個人所得税(PIT:Personal Income Tax)で退職金がどう扱われるかを確認しましょう。
ベトナム労働法に基づく退職金は非課税
ベトナムの労働法や社会保険法の規定に基づいて支払われる退職金は、個人所得税の課税対象にはなりません。 これについて、財務省通達 No. 111/2013/TT-BTC の第2条第2項(b.6) では、次のように明記されています。
“労働能力低下手当、一時的退職手当、月額死亡手当、退職手当、失業手当、および労働法および社会保険法に基づくその他の手当は、個人所得税の課税対象とはならない。”
つまり、ベトナム労働法に基づいて計算された退職金であれば、税金はかかりません。ただ、実際にはベトナムの労働法を基準としてベトナム法人から退職金をもらう駐在員様はいないと思います。
労働法の適用外の退職金は課税対象
一方、退職金の中には、労働法の規定に基づかないものもあります。 例えば、
- 日本の会社が独自のルールで支払う「功労金」
- 労働契約に基づかない特別な「退職ボーナス」
こうした退職金は、給与と同じ扱いになり、個人所得税の課税対象になります。
また、退職金が労働法の基準を超えて支払われた場合、その超過分は課税されることになります。例えば、労働法で「退職金は最大3ヶ月分の給与」と決まっているのに、会社が6ヶ月分を支払った場合、3ヶ月分は課税対象になるというわけです。数値は理解するためのもと思っておいてください。
オフィシャルレター5361/TCT-DNNCNの解説
ベトナム税務総局が2018年12月27日付で発行した通達 No. 5361/TCT-DNNCN では、退職金の課税についての具体的な指針が示されています。
このレターでは、日本の会社がベトナム駐在員に支払う退職金が課税対象となるかどうかについて、以下のような判断基準が示されています。
- ⭐️退職金が日本の労働法に基づく正当な範囲であれば、ベトナムでは課税されない。
- ⭐️日本の労働法の規定を超えて支払われた金額は、ベトナムの個人所得税(PIT)の課税対象となる。
- そもそも退職金ではなく、単なるボーナスや報酬とみなされる場合は、すべて課税対象となる。
1.2のところが大事なところですね。これは企業が定めた退職金のルール(これ自体が労働法に準じている)の範囲内という理解でいいと思います。労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務がありそこの「就業規則」に退職金についても記載されいているはずです。
通常、これ以上の金額を支払う会社はないでしょうから基本的には「非課税」ということになります。よかった!
この指針の背景には、「退職金」という名目で過大な報酬を受け取るケースを防ぐ という意図があります。特に、
- 労働契約の形式(出向・現地採用)
- 退職金の計算方法(労働法基準内かどうか)
- 支払い元(日本本社 or ベトナム法人)
といった点を明確にすることが重要になります。
企業・個人が注意すべきポイント
退職金の課税リスクを避けるために、以下の点に注意しましょう。
- ✅ 労働契約の内容を確認する → 退職金の計算方法が労働法に準拠しているかチェック。
- ✅ 日本とベトナムの租税条約を活用する → 二重課税を避けるために、適用できる免税措置があるか確認。
- ✅ 税務リスクを事前にシミュレーションする → 退職金の金額や支払い方法によって税金が変わるため、事前に専門家に相談。
- ✅ 税務調査で指摘されないようにする → 税務署は「退職金か?それともボーナスか?」を厳しくチェックするため、適切な証拠を用意することが重要。
まとめ:退職金の税金はケースバイケース!
「日本の退職金だから税金はかからない」 と思っていると、後で想定外の税務リスクに直面するかもしれません。
- ベトナム労働法の範囲内なら非課税
- 労働法を超えた部分は課税対象
- 日本の会社が支払う場合、租税条約の適用も要検討
企業も個人も、契約内容をよく確認し、適切な税務対策を取ることが大切です。