ベトナムで働く人たちが妊娠・出産したときに受けられる「産休制度」。これは社会保険に入っている労働者に対して、お金の支援やお休みを与えるとても大切な制度です。
この記事では、産休の対象者、もらえる金額、申請方法まで、わかりやすく説明します。法律の条文も紹介しながら、中学生でも理解できるようにお届けします!
この記事のもくじ
産休とは?誰が対象?
産休ってなに?
産休とは、妊娠・出産・子育て・避妊手術などをしたときに、会社を休んでも給料の代わりにお金(給付金)がもらえる制度です。
これは、ベトナムの「社会保険法(第58/2014/QH13号)」という法律で決まっています。この法律は重要です。
誰が対象?
次のような人たちが、産休の対象になります(社会保険法 第31条第1項)。
- 妊娠中の女性
- 出産した女性
- 6か月未満の赤ちゃんを養子にした人
- IUD(避妊具)を入れた女性、または避妊手術をした人
- 代理出産をする女性、または依頼した女性
- 妻が出産した男性(社会保険に加入していることが条件)
わかりやすいのは出産した女性が社会保険(お金)の給付を受け取ることができることでしょう。
出産に関する社会保険の給付をもらうための条件
社会保険の給付を受け取るには条件があります。これについて解説します。
社会保険の加入期間がポイント!
産休給付をもらうには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 対象者であること(上記で「誰が対象?」を参照してください)
- 社会保険に一定期間加入していること(第31条第1項)
具体的には:
- 出産・養子縁組・避妊手術などをした人は、出産の前の12か月間に6か月以上の社会保険加入が必要。
- すでに12か月以上加入していて、妊娠中に医師から休職指示があった人は、直近12か月で3か月以上の加入でOK。
休める期間はどのくらい?
網羅的に説明しますね。ただ実務上該当あるのは「出産」でしょう。
妊婦健診
妊娠中は、5回まで妊婦健診のために休めます(1回につき1日)。 遠くの病院に行く場合や、妊娠が不安定な場合は、1回に2日までOKです(第32条)。
流産・死産などの場合
妊娠週数により休める日数が変わります(第33条):
- 5週未満:10日
- 5週〜13週未満:20日
- 13週〜25週未満:40日
- 25週以上:50日
この休みには、土日や祝日も含まれます。
出産したとき
女性が出産した場合(第34条):
- 基本:6か月間の休暇(出産前に最大2か月取得可)
- 双子以上:2人目から1人につき1か月追加
男性(妻が出産した場合):
- 通常:5日
- 帝王切開や32週未満の出産:7日
- 双子:10日、3人目以降は1人につき+3日(最大14日)
養子を迎えたとき
6か月未満の子どもを養子にした場合、子が6か月になるまで休暇を取れます(第36条)。
避妊措置を受けたとき(第37条)
- IUDを入れた場合:7日間
- 避妊手術をした場合:15日間
表にするとこんな感じ。
区分 | 状況 | 休暇期間 | 備考 |
4.1 妊婦健診 | 通常の妊婦健診 | 5日(1回1日) | 最大5回まで(平日のみ) |
遠方・異常妊娠 | 1回につき2日まで | 医師の指示により | |
4.2 流産・死産など | 妊娠5週未満 | 10日 | 土日・祝日も含む |
5週〜13週未満 | 20日 | 〃 | |
13週〜25週未満 | 40日 | 〃 | |
25週以上 | 50日 | 〃 | |
4.3 出産したとき(女性) | 通常出産 | 6か月 | 出産前は最大2か月まで可 |
双子以上 | +1か月/2人目以降 | 合計8か月まで可能例も | |
4.3 出産したとき(男性) | 通常 | 5日 | 妻の出産後30日以内に取得 |
帝王切開・32週未満 | 7日 | 〃 | |
双子 | 10日 | 〃 | |
双子以上+手術 | 最大14日 | 3人目以降+3日ずつ加算 | |
4.4 養子を迎えたとき | 6か月未満の子を養子に | 子が6か月になるまで | 第36条 |
4.5 避妊措置 | IUD装着(女性) | 7日間 | 第37条 |
避妊手術 | 15日間 | 〃 |
です。
いくらもらえるの?(支給額の計算)
法律の根拠は「『社会保険法(Luật Bảo hiểm xã hội)2014年版」です。
基本の計算式(第39条)
支給額 = 平均給与(直近6か月) × 100% × 休暇月数
例:月給5,000,000ドンの女性が6か月間産休を取る場合: → 5,000,000 × 6 = 30,000,000ドンが支給されます。
一時金(出産祝い金)
出産した女性、またはその夫(保険加入者)には、 基本給の2倍が一時金として支給されます(第38条)
▶ 2024年7月1日以前の基本給は:1,800,000ドン → 一時金:1,800,000 × 2 = 3,600,000ドン/子
産後の回復休暇(第41条)
出産後、復職から30日以内に健康が回復しないと診断された女性は、5〜10日間の休暇が取れます。
支給額は: 1日あたり:基本給 × 30% = 540,000ドン(2024年の基本給)
平均給与ってどこまで含むの?
ここでよくある質問が単価の部分である「平均給与」ってどこまで含むの?手当も?です。
基本給与+社会保険料の対象となる手当のみが含まれます。
つまり、すべての手当が含まれるわけではなく、一部の手当は除外されます。
根拠:通達59/2015/TT-BLĐTBXH(第30条第1項)この通達は、「社会保険法2014」の実施細則を定めたものです。
平均給与の定義(6か月間)
社会保険料の納付対象となる月額給与は、以下を含む:
- 基本給(lương cơ bản)
- 契約で定められた定期的な手当(phụ cấp thường xuyên)
なので以下は含むようです。
- 役職手当、職位手当
- 責任手当
- 重作業・有害作業・危険作業手当
- 勤続手当
- 地域手当
- 移動手当、誘致手当 など
ただし、以下のような一時的・成果報酬的な手当は含まれません:
- 食事手当
- 出張・交通手当
- 住宅手当
- 残業代・成果報酬ボーナスなど
具体例
手当の種類 | 平均給与に含まれる? | 理由 |
---|---|---|
基本給 | ✅ 含まれる | 社会保険料の計算対象だから |
職務手当(役職手当) | ✅ 含まれる | 契約で定められた場合 |
責任手当 | ✅ 含まれる | 定期的に支給されていれば |
食事補助 | ❌ 含まれない | 一時的な性質のため |
残業代 | ❌ 含まれない | 成果報酬的な扱い |
勤続ボーナス | ❌ 含まれない | 不定期かつ成果報酬型 |
💡ポイントまとめ
- 平均給与には、「社会保険料の算定対象となる給与のみ」が含まれる
- 契約上、毎月決まって支払われるものかどうかが重要
- 会社によって手当の扱いが異なるため、就労契約書・給与明細を確認するのがベスト
社会保険の給付申請の方法
概要だけ解説します。実際は社会保険ソフトでの細かーいやりとりがあります。
必要な書類
女性労働者(出産):
- 出生証明書(コピー)
- 医師の診断書(休職が必要な場合)
- 死亡証明書(赤ちゃんや母親が死亡した場合)など
男性労働者(妻の出産):
- 出生証明書のコピー
- 帝王切開や32週未満の出産の場合:診断書
手続きの大きな流れ
- 申請書の提出(復職から45日以内)
- 会社が書類をまとめて社会保険機関に提出(10日以内)
- 審査と給付金の振り込み(最大20日間)
※ 退職済みの場合は、自分で社会保険機関に直接提出します。
まとめ
ベトナムの産休制度は、働く妊婦さん・家族にとってとても重要なサポートです。あなたの会社のスタッフが社会保険にきちんと加入しておけば、出産や育児のときに安心して休みを取って、金銭的にも助けてもらえます。
あなたのスタッフ様がいつ・どんなケースで・どのくらい休めて、いくらもらえるのかを知っておくことが大切です。
出産後の育児期間にも、さらにお得な支援制度がありますので、ぜひチェックしてみてくださいね!