ベトナムで会社を経営していると、どうしても急にお金が必要になることがあります。例えば、お金が減ってしまい、メンバーの給料の支払いや仕入れの支払い(家賃)などの支払いができなくなってしまう可能性があります。。そんな時に役立つのがベトナムでの「短期借入金(たんきかりいれきん)」です。

この記事では、短期借入とは何か、どんな特徴があるのか、使うときの注意点や、実際に使う契約書の形(雛形)について、わかりやすくお話しします。

短期借入金とは? 1年以内

短期借入金とは、1年以内に返すことを約束してお金を借りることです。

ベトナムの国家銀行が出している「通達08/2023/TT-NHNN」によると、短期の外国借入は「1年以内の期間で借りるお金」と決められています。これに対して、1年以上のお金の借入は中期や長期の借入とされます。

たとえば、

  • 仕入先への支払いや、
  • 税金の支払い、
  • 従業員への給与、
  • 工事や業務の進行に伴う支払い

といった「短期間で現金が必要な支払い」に使うのが短期借入の目的です。いわゆる運転資金のためですね。

なので、「新しい投資プロジェクトに使いたい」「長期の設備導入をしたい」といった長期の目的では、短期借入は使えません。

ベトナムの短期借入のメリットとデメリット

短期借入には、いいところもあれば、気をつけるべきところもあります。

メリット

  1. 手続きが簡単
    長期ローンのようにたくさんの書類を出す必要がなく、身分証など基本的な書類だけで借りられることが多いです。

  2. 借りるまでが早い
    申し込んでからすぐに審査が終わり、お金が入金されるスピードもとても早いです。金融機関によっては、数分で借りられることもあります。

  3. 金利が柔軟
    一部の金融会社では、収入に合ったプランを選べるように、いろいろな金利設定が用意されています。日系企業の場合はほとんどが親子ローンです。金利の設定には論点があるので留意です。高すぎるとベトナム側のリスクが高くなります。

デメリット

  1. 返済期限が短い
    借りてすぐ返さないといけないため、資金計画がしっかりしていないと困ることになります。返せないと、遅延金(ちえんきん)が発生します。なので

  2. 信用スコアに影響する
    返済が遅れると、将来ローンを組むときに不利になる可能性があります。

  3. 非正規な貸し手(闇金融)に注意
    緊急でお金が必要なとき、違法な業者から借りてしまうと、高い金利で返せなくなってしまうケースもあります。

ベトナムで借入前に準備するべき書類

現在、短期借入のために必要な書類は、法律でははっきり決まっていません。でも、借入の目的を証明するために、以下のような書類をそろえておくと安心です(通達08/2023/TT-NHNN に基づく)。

  • 借入契約書
  • 外貨借入の利用計画書(資金をどう使うかを書く)
  • 必要資金の一覧表(支払先や金額が分かるもの)
  • 借入前にすでに発行された契約書や請求書など
  • 借りる企業の営業許可証(ライセンス)
  • 過去の借入報告書類(もしあれば)

銀行によっては、内容をチェックしてくれるので、事前に相談すると安心です

借入後に必要な報告について解説!

短期借入をしたあとも、月に一度、借入の状況を報告しないといけません。

「通達12/2022/TT-NHNN」によると、借主は毎月、前月の借入状況を翌月の5日までに、以下のウェブサイトで報告します。長期以外でも報告が必要なのですね。

https://qlnh-sbv.cic.org.vn/qlnh/

もしシステムにエラーがあって報告できない場合は、書面での報告が必要です。書式は、通達12にある「付録05」に沿って提出します。

ベトナム短期借入金の契約書の雛形とは?

短期借入をするときは、貸す側(銀行など)と借りる側(会社や個人)との間で契約書を結びます。

主な内容は次のとおりです:

  • お互いの名前、住所、代表者名
  • 借入金額(数字と文字)
  • 借入の目的(何に使うか)
  • 金利(固定か変動か)
  • 返済方法(分割払いか一括か)
  • 返済の期間(最短3ヶ月から最長12ヶ月など)
  • 担保の有無(多くの場合、短期は無担保)
  • 延滞した場合のペナルティ(遅延利息など)
  • どちらかが契約を変えたい場合のルール
  • 貸主、借主の権利義務なども
  • 紛争が起きたときの解決方法(話し合い → 裁判所へ)

これらの情報がきちんと書かれていれば、借りる側も貸す側も安心です。

ベトナム短期借入金契約の雛形はこうなっている!

短期信用契約書(HỢP ĐỒNG TÍN DỤNG NGẮN HẠN)」**の内容を、日本語に正確に翻訳いたします。


ベトナム社会主義共和国

独立 – 自由 – 幸福


短期信用契約書

  • 2024年信用機関法に基づき
  • 顧客の借入申請および銀行の審査結果に基づき

本日、……年……月……日、……において、当事者は以下の通りです:


貸主(甲):

  • 名称:……………………………………
  • 所在地:………………………………………………………………………
  • 代表者氏名:……………………………………
  • 委任状番号(該当する場合):……………… 委任者:………………

借主(乙):

  • 氏名:……………………………………
  • 現住所:………………………………………………………………………
  • 代表者氏名:……………………………………
  • 市民身分証/ID番号:……………… 発行日:……………… 発行場所:………………
  • 委任状番号(該当する場合):……………… 委任者:………………

当事者は、以下の内容に基づいて、甲が乙に金銭を貸与することに合意します:


第1条:貸付方法・金額・借入目的

  • 貸付方法:……………………………………
  • 借入金額(数字):……………………………………
  • (文字):……………………………………

※借入金は、都度の引出しごとに計算され、契約付属の別紙または借用証書により追跡されるものとする。

  • 借入目的:…………………………………………………………………………………………………………………

第2条:金利

  • 借入金利:契約締結時点での金利は……%
  • 利息は、借入日から返済日までの日数で計算される
  • 利息支払方法:
     + 定期支払:……(例:毎月〇日)
     + または元本返済と同時支払
  • 延滞利息:返済期限を過ぎて、返済がなされず、返済期限の調整や延長も行われなかった場合、全残債は延滞債務とみなされ、乙は……%/月の延滞利息を支払う


第3条:貸付期間・返済方法・スケジュール

  • 貸付期間:……ヶ月、または信用限度枠期間……ヶ月
    (開始日:……年……月……日)
  • 最初の融資日:……
  • 最終返済日:……

※返済スケジュールおよび貸付実行計画は付属の別紙に従う

  • 異なる通貨で返済する場合は、甲の承認が必要
  • 乙が複数回に分けて借入する場合、都度「借用証書」を作成して甲に提出する

第4条:担保の有無

  • 本契約は「担保あり」または「担保なし」のいずれかとし、担保がある場合は別途担保契約を添付


第5条:甲の権利と義務

権利:

a) 借入・資金使用・返済の監督・確認
b) 乙の虚偽報告や契約違反時には融資を中止し、期限前に債権を回収
c) 以下の場合、担保資産や融資による形成資産を処分する権利:
 - 乙が返済義務を果たせない
 - 債務を引き継ぐ者がいない
 - 法的事由により乙の義務が消滅する場合
d) 元本・利息の延長、返済条件の調整(国家銀行の規定に基づく)

義務:

a) 契約に基づく内容の履行
b) 法律に従い信用情報を保存


第6条:乙の権利と義務

権利:

a) 契約にない要求を拒否する権利
b) 契約違反があれば苦情申し立てや法的手段による解決を求める権利

義務:

a) 正確で合法な情報と資料を提出する義務
b) 借入目的通りに資金を使い、契約条件を守る
c) 契約に基づき元本・利息を返済する
d) 返済義務不履行時には法的責任を負う


第7条:その他の合意事項

(当事者間で必要に応じて記載)


第8条:契約の変更・補足・譲渡

  • 条項を変更する場合、書面による提案と相互同意が必要

  • 契約譲渡は、国家銀行の債権売買規定に従い両者で合意

  • その他の条件は変更されない


第9条:共通の誓約

  • 両者は契約条項を誠実に履行することを誓う

  • 紛争が起きた場合はまず話し合いによる解決を試みる

  • 解決できない場合は、甲の所在地を管轄する経済裁判所で解決する

本契約は2部作成され、各部は同一の効力を持ち、甲・乙が1部ずつ保管する。
契約は署名日より有効となり、乙が元本と利息を完済した時点で終了する。


甲代表(署名・捺印)    乙代表(署名・記名)


【契約付属書】

契約番号:……/契約日:……

1. 融資・返済計画の記録表:

| 貸付日 | 貸付対象 | 金額 | 金利 | 返済期日 | 元本 | 利息 | 貸付簿記 | 借主署名 |


2. 元本・利息返済の調整・延長:

| 日付 | 元本延長額 | 延長日 | 利息延長額 | 延長日 | 元本返済期変更 | 利息返済期変更 |


3. 債権回収・延滞移行の記録:

| 日付 | 通常回収 | 延滞移行 | 延滞回収 | 残債 | 担当簿記 | 支払者署名 |

おわりに

ベトナムでの短期借入は、きちんとルールを守って使えば、とても便利な資金調達の方法です。ですが、目的に合っていない借入や、書類の不備、報告の忘れなどがあると、後々トラブルになることもあります。特に、短期借入を中期や長期借入に切り替えたいときには、より厳格な審査があります。

また返済を忘れてしまうとか?

そのためにも、借りる前・借りた後のルールや書類について、よく理解しておくことが大切です。

参考法令(根拠)

  • 通達08/2023/TT-NHNN(外国借入・外債の管理に関する規定)

  • 通達12/2022/TT-NHNN(外国借入の報告制度など)