近年、ベトナムはAI(人工知能)分野での急成長を遂げ、多くの革新的なスタートアップ企業が誕生しています。特にAIを活用した製品開発やソリューション提供を行う企業が注目されています!ベトナムだけでなく全世界的に注目されていますけどね。

本記事では、ベトナムの最新AIスタートアップ企業を紹介し、それぞれの事業内容や特徴について詳しく見ていきたいと思います。

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ELSA Speak(エルサ・スピーク)

事業内容:
AIを活用した英語発音矯正アプリ「ELSA Speak」を開発・提供。音声認識技術により利用者の発音を解析し、最適な練習方法を提示することで英語の発音改善を支援。このアプリは個人ユーザー向けだけでなく、ベトナム国内の語学学校やオンライン学習プラットフォームとも提携しており、企業研修にも採用されている。

創業年: 2015年(同年にELSA Speakを公式にローンチ)。スタンフォード大学MBA在学中のベトナム人起業家Vu Van氏らによって設立。

本社所在地: 米国サンフランシスコおよびベトナム・ホーチミン市(両拠点に本社機能を持つ)。

最新動向:
2023年9月、シンガポールのUOB銀行系ファンドをリード投資家として2,000万ドルの資金調達を実施。これは2021年のシリーズB(1,500万ドル)に続く大型調達で、GoogleのAI特化ファンドやベンチャーキャピタルも出資。資金調達により、アプリの機能強化やアジア市場での事業拡大が期待されている。

ELSA Speakの公式サイト

Cinnamon(シナモン)

事業内容: 2016年創業のエンタープライズ向けAIソリューション企業で、企業の業務自動化につながるAI製品を開発しています​。

特に手書きを含む非構造化文書から情報を読み取りデータ化するAIドキュメントリーダー(「Flax Scanner」)を主力とし、レコメンデーションエンジン(「Lapis Engine」)や自然言語対話ボット(「Scuro Bot」)などのプロダクトも提供しています​。

​これらにより、金融機関などでの書類処理や顧客対応の効率化を実現します。

創業年: 2016年(2016年10月設立)​

創業者は日本人起業家の平野未来氏で、ベトナム(ハノイ、ホーチミン市など)に約60名のAIエンジニアチームを有しています​。

本社所在地: 日本・東京を拠点としつつ、開発拠点をベトナムに置いています​(東京とハノイ/ホーチミン市に拠点)。

最新動向: 2019年1月にシリーズB資金調達(1,500万ドル)を実施し、米国市場進出に向けた拠点設立や開発体制強化を進めました​。その後、2020年4月にはシリーズCで約3,900万ドルの資金を調達しており​、累計調達額は5,000万ドル近くに上ります。現在、日本の大手企業50社以上にソリューションを提供し、グローバル展開も視野に事業を拡大しています。

Cinnamonの公式サイト

Aimesoft(エイムソフト)

事業内容: 2018年創業のAIスタートアップで、マルチモーダルAI(テキスト・画像・音声など複数モードのデータを組み合わせるAI)技術を核としたソリューション提供を行っています​。

独自のマルチモーダルAIエコシステム「Aimenicorn」を開発し、これに基づく数百種類のAIアプリケーションを展開しています​。

中でも人の姿と言葉で対話・案内を行うバーチャルヒューマン製品群(バーチャル受付係、バーチャルプレゼンター、バーチャル接客係など)は同社の代表的なソリューションで、企業の受付業務や接客、自動案内などに活用されています​。

創業年: 2018年​CEOで共同創業者のグエン・トゥアン・ドゥック博士により設立されました。

本社所在地: ベトナム・ハノイ(研究開発の中心拠点。登記上は米国カリフォルニア州サンノゼにも本社があります)​。

最新動向: ベトナム国内での評価も高く、2024年にはベトナムソフトウェア・ITサービス協会(VINASA)主催の「ベトナムトップ10デジタル技術企業」でAIoT(AI+IoT)分野のトップ10企業に選出されました​

(2年連続受賞​)。また、同社のバーチャルヒューマン技術は日本を含む海外にも導入が進んでおり​、グローバル市場へのサービス展開に注目が集まっています。

Aimesoftの公式サイト

Palexy(パレクシー)

事業内容: 2019年創業のAIテック企業で、小売店舗向けの高度なデータ分析ソリューションを提供しています​。コンピュータビジョン(画像認識)技術を活用し、実店舗内の顧客行動をカメラ映像から解析して店舗分析レポートを生成する「ビジュアルAIプラットフォーム」を開発しています​。

これにより来店客数や動線、商品閲覧状況などを可視化し、販売機会の損失防止や店舗レイアウト最適化、人員配置の効率化といった課題解決を支援します。実際にベトナム国内では宝飾小売大手PNJやドラッグストアチェーンGuardian、マットレス小売のVua Nemなどで同社ソリューションが導入されています​。

創業年: 2019年​。創業者はド・トン(Thong Do)氏です。

本社所在地: シンガポール(法人登記上の本社)およびベトナム・ホーチミン市(主要開発拠点)​。タイにもあるっぽいです。

最新動向: 創業から短期間で急成長しており、2021年にはCB Insights社による小売テック分野のグローバルトップ10企業リストで「最も勢いのある新興企業(Outperformer)」に選出されました​。これはトップ10中で最年少の企業として評価されたもので、2020年から2021年にかけて顧客数を2倍近くに増やし、高い投資対効果をクライアントにもたらした点が評価されています​。東南アジア市場への展開も進めており、サービス開始からの累計資金調達額は約100万ドルと比較的小規模ながら、大企業との提携実績と技術力を武器に事業を拡大中です​。

Palextyの公式サイト

VAIS(Vietnam AI System)

事業内容: ベトナム語音声の認識・文字起こし(Speech-to-Text)に特化したAIソリューションを提供しています。主力製品「Memobot」は会議や通話の音声を自動でテキスト化するアプリケーションで、ベトナム北部方言の音声を99%の精度で認識できるほか、中央方言で85〜90%、南部方言で約90%の精度を達成しています。音声中の話者を区別して発言ごとに書き起こすことも可能で、生成AIと連携した要約機能など高度な付加機能も備えています​。確かに北部と南部ではベトナム人同士でも伝わらないことがあるんだとか。

創業年: 2018年​。当時、既存の音声認識技術ではベトナム語の方言多様性に対応しきれないと感じた研究者グループにより設立されました。

本社所在地: ベトナム・ハノイ(ハノイ市内のHo Guom Plazaに本社オフィス)​。

最新動向: Memobotは2019年にベトナム国会(第14期第7回会議)で試験導入され、高精度な文字起こしが評価されて以降、国会や政府機関の会議録作成に公式採用されています​。最近ではOpenAIのChatGPTと連携し、会議音声から自動で要約を生成する機能の開発も行われました​。さらに、この音声認識技術は企業向けにも展開されており、大手保険会社が顧客との通話記録のテキスト化に採用したほか、電子決済(電子財布)分野では声紋認証による高度なセキュリティ対策ソリューションとして導入されています​。こうした実績により、VAISはベトナム語音声AIのリーディングカンパニーとして注目されています。

VAISの公式サイト

Trusting Social(トラスティング・ソーシャル)

事業内容: 2013年創業のフィンテック系AI企業で、金融包摂を目的としたAI信用スコアリング・顧客分析プラットフォームを提供しています​。携帯通信データなどのビッグデータを独自のAI/機械学習モデルで解析し、銀行など金融機関向けに個人の信用リスク評価や本人認証、融資のターゲティング支援サービスを提供するものです​。これにより従来の与信履歴が乏しい「アンバンクト層」を含む約30億人の消費者に対し、金融アクセス拡大を支援するソリューションを展開しています​。現在、インド・インドネシア・ベトナムなどアジア各国で累計10億人以上の消費者データをスコア化し、130以上の金融機関で同社の信用スコアが利用されています​。

創業年: 2013年​。創業者はグエン・グエン (Nguyen Nguyen) 博士で、シンガポールにて法人登録されました。

本社所在地: シンガポール(法人口座上の本社)/ ベトナム・ホーチミン市(主要開発拠点)​。開発・データサイエンスの中心チームはホーチミン市に構えています。

最新動向: 2022年4月、ベトナムの大手コングロマリットであるMasanグループ傘下のSherpa社からシリーズCとして6,500万ドルの出資を受けました​。この戦略的提携により、Trusting SocialはMasanと共同でAI技術を活用した次世代の消費者向けプラットフォーム開発を進めており、同社の小売事業(WinMartなど)顧客約2,700万世帯にパーソナライズされた金融サービスを提供する構想です​。また2023年10月には米マイクロソフトとの協業を発表し、生成AIを活用した金融ソリューションをベトナム含む新興市場向けに共同開発する計画も明らかにされています​。急成長する東南アジアのフィンテック分野で、同社は大量のデータ分析とAIモデル運用の実績を強みに地域リーダー的存在となっています。

Trusting Socialの公式サイト

 

ベトナムAIスタートアップの今後

ベトナムは、AI技術の成長に必要な優秀なエンジニアが豊富で、企業のデジタル変革を推進する環境が整っています。多くのスタートアップが国内市場のみならず、アジア全体、そしてグローバル市場へと進出を加速させています。

今後も、ベトナムのAIスタートアップがどのような革新をもたらすのか注目が集まります。

参考資料:

【18】 Vietcetera – “Vietnam’s ELSA App Bags $20 Million Funding”(2023年9月12日)​

【20】 ELSA公式サイト – About us(ELSA Speakの創業ストーリー)​

【11】 Vietnam News – “Cinnamon start-up raises $15 million in funding”(2019年1月28日)​

【16】 Lusha – Cinnamon AI 会社情報(2020年時点の資金調達額)​

【25】 Aimesoft公式サイト – Company(会社概要、「マルチモーダルAI」説明)​

【22】 Aimesoft公式ニュース – “Top 10 AI companies in Vietnam 2024”(2024年9月25日)​

​【2】 Do Ventures(VC)公式サイト – Palexy 会社紹介doventures.vc

【30】 Palexy公式ブログ – “Palexy is an Outperformer in CBInsights’s 2021 list…”(2021年11月8日)​

【34】 Người Lao Động(ベトナム労働新聞)– “Trí tuệ nhân tạo nhận diện giọng nói”(2023年7月16日)​

【32】 VAIS公式サイト(ニュース)– ベトナム語音声認識技術「Memobot」の紹介​

【45】 Golden – Trusting Social(会社情報、創業年や事業内容)​

【38】 BDA Partners – “Trusting Social raises US$65m Series C…”(2022年4月28日)​

【41】 LeadIQ – Trusting Social Company Overview(Microsoftとの協業に関する記述)​

【44】 Trusting Social公式サイト – Home(サービス内容・実績)​