はじめに|「政令122/2021/ND-CP」とは?

ベトナムで事業をしていると、「この手続き、遅れてしまったけど大丈夫かな…」と不安になる場面、ありませんか?

そんなときに知っておきたいのが、政令122/2021/ND-CP(行政違反に対する罰則の政令)です。

この政令では、以下のような場面における違反・罰金・是正措置がまとめられています!

  • 投資報告の未提出
  • 投資登録証の未調整
  • 計画に関する報告の漏れ
  • 入札関連の不備
  • 企業情報の未更新 など

どんな分野をカバーしているの?

政令122号は、大きく以下の4つの分野に関する違反を対象にしていますよ。

カテゴリ

対象となる主な活動
投資
投資報告、登録証、方針承認、プロジェクト実行
入札
入札書類、評価、結果通知、情報公開など
企業登録
会社登記、変更通知、代表者情報、資本など
計画(Planning)
都市計画、産業計画などの報告・策定・実施

それぞれ解説していきますね。

政令122の構造をざっくり把握!

政令は全部で7章+複数の節(セクション)に分かれています。
構造を下記のように捉えると、迷子にならずに済みますよ。

チャプター内容対象者に関係する主な項目
対応条文(Article)
第1章 総則定義・時効・適用範囲など時効=原則1年(※計画のみ2年)第1条~第5条
第2章 投資関連の違反公共・国内・国外・PPP投資投資報告、登録証、無許可実施など第6条~第31条
┣ Section 1公共投資投資報告、評価、監査、資金使用等第6条~第14条
┣ Section 2国内事業投資報告義務、投資条件、登録証など第15条~第19条
┣ Section 3対外投資(海外)海外送金、報告、手続き第20条~第22条
┗ Section 4PPP(官民連携)PPP報告、入札、契約等第23条~第31条
第3章 入札関連の違反一般入札および土地使用プロジェクト入札入札不備、情報未公開、評価エラーなど第32条~第42条
第4章 企業登録関連の違反登記、変更、公開、資本金など書類不備、期限超過、変更未登録など第43条~第69条
第5章 計画関連の違反計画の報告・策定・実行の不備都市開発・建設許可等に関与する場合第70条~第72条
第6章 制裁を科す権限各行政機関の制裁権限の範囲DPI、税務署、市場監査など第73条~第79条
第7章 実施規定発効日、旧政令の廃止など経過措置、関係機関の責任第80条~第82条

こんな感じ。

日系企業に影響が大きい主要項目(重点条文)の分析

すべての条文が大事なわけではありません。みなさんが該当するであろう日系企業、事業会社に対して重要なことはなんでしょうか?ざっくり見てみましょう。

チャプター

関連条文主な内容影響度解説
第2章(投資)第15条投資報告の未提出・虚偽報告★★★★★
投資登録証(IRC)を保有する企業すべてが年5回報告義務あり。罰金2,000〜5,000万VND。
第2章第17条投資登録証の未調整/虚偽申請★★★★☆
プロジェクト内容に変更があった場合、申請を忘れると罰則。
5,000万~1億VND
第2章第18条投資優遇措置に関する違反★★★☆☆
虚偽または不正確な情報を提供して投資優遇措置を受けた場合、
5,000万~7,000万VNDの罰金
第2章第19条無許可での投資活動実施、12か月超の中断★★★★☆
許可前の稼働や報告義務を怠ると、最大2億VNDの罰金。
第4章(企業登録)第44条・45条登記情報の変更遅れ・非公開★★★★☆
本社・支店の移転、代表者変更時に申請が遅れると罰金3,000万VND超。
第4章第46条資本未登録、許可なく事業運営★★★★★
無登録での事業活動、法的代表者不在は深刻なリスク。
第5章(計画)第70条〜72条都市・開発計画に関する報告・実施の違反★★☆☆☆
開発型プロジェクト(工業団地、物流、建設など)の場合のみ影響大。
第3章(入札)第36条入札情報未公開・不正公開★★★☆☆
公共案件やPPP型契約を行う企業では重要。

企業活動別のリスクポイント早見表も。

活動内容リスク条文注意点
投資プロジェクト(会社活動)を行っている第15条/第17条
四半期・年次報告の定期提出忘れに注意
事業内容や本社住所を変更した第44条/第45条
登記情報の速やかな更新が必須
許可前に操業を開始した第19条
無許可運営=重大違反として罰金対象
PPP/公共事業の入札に参加している第36条
入札情報の未掲載・不一致は厳しく処分される

参考にしてください。

「時効」ってなに?忘れてはいけないルール

違反しても、一定期間が経過すると制裁できない=時効になります。

区分時効期間起算点
投資・入札・企業登録1年違反が終了した日 or 発見された日
計画(Planning)2年同上(例:都市計画報告漏れなど)

🧠 たとえば…

投資報告を2か月遅れて提出 → 提出した日が“違反の終了日” → その日から1年間が時効期間

日系企業が気をつけたい違反トップ5(政令122/2021/ND-CP対応)とは?

私見も入っていますが以下のような感じ。金額は小さくないので注意が必要です。

ランク該当条文違反内容罰金範囲解説
🥇 第15条投資報告の未提出/虚偽報告20百~50百万VND
IRCを持つ企業は四半期+年次の報告が必須。意外と見落とされやすいが、監査で頻出。
基本すべての会社
🥈 第18条優遇措置を受けるための虚偽申告50百万~70百万VND(+不正利益の返還)
税制・土地使用料・R&Dなどの優遇を受けている企業が該当。内容に虚偽や誤りがあると、罰金+返還のダブル制裁も。
優遇税制がある会社
🥉 第17条投資登録証(IRC)の未調整/虚偽申請50百万~1億VND
プロジェクト内容に変更(住所、投資額、業種など)があるのに調整を怠るケース。企業が気づかないまま違反になっていることも。
IRCを変更する場合
④ 第44条・第45条企業情報の変更未登録・非公開3,000万VND~
代表者変更、本社移転、支店開設などの情報を定められた期限内に変更登録しないと対象に。
代表者変更はある。
⑤ 第36条入札情報の未公開・誤掲載15百万~50百万VND
PPP、建設、インフラ系の日系企業は特に注意。国家入札ネットワークへの掲載義務がある場合、形式的な違反でも処分対象。
 

ポイント整理

  • 第15条+第18条は、どの業種の事業会社でも関係する可能性が非常に高いです(報告+優遇申請)
  • 第17条、第44条などの「変更関連」は、気づかないうちに違反になりやすい
  • 第36条(入札情報)は、業種によって重要度が分かれるが、公共性が高い事業には必須の遵守項目

おわりに|政令122号を“使いこなそう”

政令122/2021/ND-CPは、日々の業務では少し縁遠く感じるかもしれません。普段から罰金のことなんて考えないですからね。

でも実は、「ちょっとした報告漏れ」や「期限の勘違い」から行政処分や罰金につながるリスクが潜んでいます。

🧩 ポイントは、条文の「構造を知る」ことで、必要な情報をすばやく探せるようにすること。

この記事を使って、自社のリスク管理にお役立てくださいね。