ベトナムの《企業法》(Law on Enterprise)では、会社が自主的に解散・清算するための前提条件として「すべての債務その他の財産上の義務を完済していること」が明確に規定されています。
言い換えれば、企業は支払い不能の債務を残したままでは任意解散することはできず、その場合は破産手続(倒産法に基づく法的清算)に移行せざるを得ません。このルールは、債務履行から逃れる目的での安易な自主清算を防止するために設けられています。
ベトナムにおける自主的清算の流れのおさらい
自主的清算の流れは以下のようになります(商業登記上は「解散」と表現されます)。ざっくりとで構いません。
解散決議の採択: 出資者(有限会社では社員総会や出資者、株式会社では株主総会)が事業を終了し清算する決議を行います。決議には清算の理由、債務支払い・資産処分の手順と期限、従業員契約の処理計画などを含めます。
当局・債権者への通知: 解散決定後、7営業日以内に投資登録当局(計画投資局など)および税務当局へ解散決議を届け出ます。また、全債権者、利害関係者、従業員に対し決議内容を通知し、公的な企業登録ポータル上にも解散情報を公告します。
資産の清算と債務弁済: 解散決議日から6ヶ月以内に、会社の資産売却・換価と債務の清算を実施します。ベトナム法では債務の支払い優先順位が定められており、まず未払給与・退職手当・社会保険等の労働債務、次に未納税金、そして最後にその他の一般債権者(金融機関や親会社など)への債務となります。この順序に従い可能な限り返済を行います。無担保の借入金は担保付債務より劣後しますが、同じ無担保債権者間では平等に扱われます。経営者は清算に際し債務履行を怠った場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
残余財産の分配: 全ての債務・費用を清算した後に残った資産があれば、出資比率に応じて持分所有者(親会社等の株主・出資者)に分配されます。ただし税務調査後です。ベトナムでは清算時に出資者へのこの残余財産分配(清算配当)に対して源泉課税や追加課税は行われず、課税済利益の分配として非課税扱いとなります。
清算過程では、債権者への通知と協議が重要です。特に無担保借入金の債権者(金融機関や親会社)に対しては、上記の公式通知とは別に、個別に返済計画や協議の場を設けることが望ましいでしょう。債権者は清算手続中に債務者から支払いを受ける法的権利がありますので、返済不能が見込まれる場合は債権者の同意を得た解決策を講じる必要があります。
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