こんにちは!マナラボの菅野です。

最近、ベトナムで会社を買収したいというご相談が増えてきました。
そんな中で、こんな声をよく耳にします。

「M&A承認って、何ですか?必要なんですか?」

この「M&A承認」、名前だけ聞くとちょっと硬い印象ですが、実はそこまで複雑ではありません。

今日は、「そもそもM&A承認って何?」というところから、「どんな時に必要なの?」という疑問まで、スッキリ解説していきます!

この記事を読むと…

  • M&A承認が本当に必要かどうかを判断できるようになります
  • 必要なケース・不要なケースを事例つきで理解できます
  • 取引前に「え、それ聞いてない…」というトラブルを未然に防ぐことができます

読み終えるころには、M&A承認の正体がフワッとつかめるはずです。ではいってみましょう!

M&A承認って何?

まず最初に大事なポイントから。

ベトナムでは、外国人が会社の出資株式の購入を行う場合、特定の条件に当てはまると政府から事前の「OK」をもらう必要があります

これがいわゆる「M&A承認」です(ベトナム語では Chấp thuận góp vốn, mua cổ phần, mua phần vốn góp と言います)。

つまり、「取引の前に、一度立ち止まって、ベトナム当局に確認してから進んでくださいね」というルールです。

根拠条文を確認しましょう

このM&A承認は、投資法2020(Luật Đầu tư 2020)第26条第2項にしっかり書かれています。条文の内容をかみ砕いて言うと、次のような場合にはM&A承認が必要です。

a)市場アクセス条件付き業種における出資比率の増加

「外国投資家が、市場アクセスに条件がある業種・分野で活動する経済組織に対して、出資、株式取得、持分取得を行い、その結果として外国投資家の持分比率が増加する場合。」

b)外国投資家の出資比率が50%を超える場合

「出資、株式取得、持分取得の結果として、外国投資家および投資法第23条第1項a・b・c号に規定される経済組織が、以下のいずれかの形で、経済組織の定款資本の50%を超えて保有することになる場合:

  • 出資比率が50%以下から50%超に上がる場合
  • すでに50%超を保有している状態でさらに比率が増加する場合」

c)国防・安全保障に関わる土地を保有する企業への出資

「外国投資家が、島、国境地帯、沿岸部、または国防・安全保障に影響を与える他の地域に土地使用権を持つ経済組織に対して、出資、株式取得、持分取得を行う場合。」

投資法第26条第2項 a号(2020年法)

M&A承認が必要になる3つのケース

① 外国人の出資比率が増える & 業種が「条件付き」の場合

たとえば小売業や教育業、物流やIT、金融など。
こうした「市場アクセスに制限がある業種」で外国人の出資比率が上がるときには、事前に承認が必要です。

※これは投資法第26条第2項 a号に該当します。

② 外資の出資比率が50%を超えるとき

これもよくあるケースです。

たとえば、日本企業がベトナムの会社に49%出資していたけど、さらに買い増して51%になった。この場合は「過半数を超える=支配権が変わる」とみなされ、M&A承認が必要になります。

※投資法第26条第2項 b号が該当します。

③ 特殊な土地をもっている会社に出資する場合

対象の企業が、島・国境地帯・沿岸地域など、国防や安全保障に関係する土地を持っているとき。この場合も、出資・株式購入にあたってはM&A承認が必要です。

※こちらも投資法第26条第2項でカバーされています。

ちょっとひねった実例:40%しか出資しないのに…?

ある外国人投資家が、ベトナムの島にある100%外資企業(A社)に、40%の持分出資をしたいという相談がありました。

このA社は島に拠点があるものの、土地使用権証明書(LURC)は持っていない

「50%を超えていないし、土地も持っていない。だからM&A承認はいらないはずですよね?」
……と考えるのが自然です。

でも、実際は現地当局がM&A承認を要求してきたらしいのです…。

では、どうするのが正解?

ズバリ、迷ったときはこうしましょう。

まずは事前に「計画投資局(DPI)」や専門家に相談する

これが一番確実で、早道です。

事前に「この取引でM&A承認が必要ですか?」と聞いておくだけで、後から「それじゃダメです」と言われるリスクを減らせます。

そして、以下の情報はあらかじめ整理しておきましょう:

  • 出資比率(現在と変更後)
  • 業種コード(VSIC)や事業内容
  • 土地使用の有無(LURCの確認)
  • 出資者の情報(国籍・企業の活動状況など)

まとめ:M&A承認は“法律の義務”でもあり、“トラブル予防のお守り”でもある

  • 「必要かどうかよく分からない」
  • 「どこまで準備すればいいの?」

と悩ましい気持ち、すごくわかります。

でも、だからこそちょっとした確認と準備で、後の安心が全然違ってきます

M&A承認は、法律で定められた手続きであると同時に、将来のトラブルを防ぐ保険のようなものなんですね。