ベトナムで会社を設立して事業をしている日系企業の皆さん、「投資報告」の義務についてはご存じですか?

「えっ、そんなの知らなかった!」という声もよく耳にしますが、実はこれ、ベトナム政府にとって非常に重要な義務なんです。たしかに数年前までは実務と法務上の乖離があり、提出していなかったケースもあります。また雛形についてよくわからないという点も理由としてあったようです。

ちょうど健康診断のように、会社の活動状況を定期的に国に報告することで、経済の全体像を把握する目的があります。

報告を忘れると、最大5,000万ドン(約30万円)ほどの罰金が科されることも……。

この記事では、そんな「投資報告義務」について、やさしく・わかりやすく解説します!

そもそも「投資報告義務」プロジェクトの実施状況って?

ベトナムにある外資系企業(日本企業含む)は、多くの場合、「投資登録証明書(IRC)」を取得して投資プロジェクトを実施しています。

このような企業は、投資法第72条第2項a号に基づき、以下のとおり報告が義務付けられています:

「投資プロジェクトを実施する投資家および経済組織は、四半期および年次で、投資登録機関および地方統計機関に対し、プロジェクトの実施状況を報告しなければならない。」

法律第61/2020/QH14号(投資法)第72条第2項a号

つまり、年に5回、投資状況を報告しなければならないのです。

この「投資報告書」どこに、誰が「投資報告」を報告するの?

「報告しなきゃいけないのはわかったけど、誰が?どこに?」というのは重要なポイントですよね。ここでは、報告義務の対象者と提出先について、法令に基づいて確認していきましょう。

 誰が報告するの?

報告の義務があるのは、以下の主体です:

「投資家および投資プロジェクトを実施する経済組織」
(※多くの日系企業が該当します)

投資法第72条第2項a号

日系企業はIRCを持っているので該当しますね。

「投資プロジェクトを実施する投資家および経済組織は、四半期および年次で、投資登録機関および地方統計機関に対し、プロジェクトの実施状況を報告しなければならない。」

「投資プロジェクトを実施する経済組織は、地方の投資登録機関および統計機関に報告書を提出する。」

引用元:政令31/2021/ND-CP 第102条第1項

 どこに報告するの?

提出先は以下の2つです:

  1. 投資登録機関(Investment Registration Authority)
     例:計画投資局(DPI)など

  2. 地方の統計機関(Local Statistical Agency)
     地域ごとに設置されている統計管理部門

報告方法の根拠は以下のとおり。

「投資プロジェクトを実施する経済組織は、国家投資情報システム(National Investment Information System)を通じてオンラインで報告を行うものとする。」

政令31/2021/ND-CP 第104条第1項a号

オンライン報告システム(NIIS)とは?

報告は、国家投資情報システム(NIIS)というポータルサイトから行います。これはベトナム計画投資省が管理するオンライン報告プラットフォームです。

🌐サイトURL(例):https://fdi.gov.vn (※利用には企業アカウントが必要)

 補足:報告を取りまとめている機関もある

  • 投資登録機関(DPIなど)**は、さらに上位の計画投資省(MPI)と省人民委員会に対して、四半期・年次報告を行っています。

根拠:投資法第72条第2項b号〜d号、政令31号第101条

表でまとめると以下のとおりです。

報告者(誰が)

提出先(どこへ)報告内容(何を)提出方法提出期限根拠法令
投資家・経済組織(=日系企業)投資登録機関
地方統計機関
投資報告(四半期・年次)NIISによるオンライン提出四半期:翌月10日まで
年次:翌年3月31日まで
投資法第72条第2項a号
政令31/2021/ND-CP 第102条・第104条
通達03/2021/TT-BKHĐT様式A.III.1 / A.III.2

オンラインでできますね。

「投資報告書」の雛形、四半期報告と年次報告の違いって?

「年に5回も?どんなことを書くの?」と気になりますよね。実は、しっかり様式(テンプレート)が定められています。

📄 四半期報告(様式A.III.1)

根拠法令:

  • 投資法第72条第2項a号
  • 政令31/2021/ND-CP 第102条第1項および第2項
  • 通達03/2021/TT-BKHĐT 様式A.III.1

提出期限:
➡ 四半期終了後の翌月10日まで(例:1月~3月分 → 4月10日まで)

記載する内容は?ざっくり以下のとおり。

  • 実施した投資金額
  • 純収益、輸出入金額
  • 雇用者数、税金、土地や水面の使用状況など

🧠 イメージ:会社の“家計簿”を3か月ごとに提出するイメージです!

📄 年次報告(様式A.III.2)

根拠法令:

  • 投資法第72条第2項a号
  • 政令31/2021/ND-CP 第102条第1項および第3項
  • 通達03/2021/TT-BKHĐT 様式A.III.2

提出期限:➡ 翌年の3月31日まで

記載内容は? 四半期報告の内容+下記を追加:

  • 税引後利益、従業員の平均収入
  • 研究開発投資、環境保護対策
  • 使用機器や技術の出所(国)

🧠 イメージ:会社の“健康診断書”を1年に1回、提出するようなものです。

これを報告しないとどうなるの?罰則の規定

報告を怠ったり、虚偽の内容を書いてしまった場合、ベトナム政府は黙っていません。

政令122/2021/ND-CP 第15条第1項や2項に基づき:

  • 以下の場合は2,000万~3,000万VND
  • a)投資監督・評価に関する報告書の作成が予定より遅れたり、不十分な方法であった場合。
  • b)投資監督・評価の定期的な報告に関する規定を遵守しなかった場合。

「報告義務違反の場合、3,000万~5,000万VNDの罰金が科される。」(2項)

さらに、第15条第3項により、以下のような措置が取られます。

  • 報告の強制
  • 不備があった場合の再提出命令

時効の点についても整理しましょう。政令122/2021/ND-CPの5条に記載されています。まとめると以下のとおり。

第15条(ベトナム国内における投資報告義務違反)が該当する時効期間は、1年です。

分類時効の起算点
継続中の違反違反が発見された日から
長期にわたって報告を怠っている、許可なしで事業を続けている など
完了した違反違反が終了した日から提出期限を過ぎたが、あとから提出された報告書の日付

このようになります。なので遅れても提出したほうがよさそうです。

コンプライアンスのため実務上どう対応すればいい?

以下のように対応することが望ましいと考えられます。

  • 1. 年間スケジュールを立てましょう:報告時期を見越して、カレンダーにリマインダーを!
  • 2. 担当者を明確に「誰がやるか」を決めておくことで対応漏れを防ぎます。自前なのか?コンサルなのか?
  • 3. 書式A.III.1/A.III.2をあらかじめ整備:テンプレートやマニュアル共有フォルダなどで管理しておきましょう。
種類提出回数提出期限書式(最新のを使う!)提出先
四半期報告年4回翌四半期10日までA.III.1
投資登録機関・統計局
年次報告年1回翌年3月31日までA.III.2同上

最後にひとこと 

「報告って面倒だな…」と思うかもしれませんが、これはベトナムでビジネスを続けるための“定期点検”のようなもの。形式的なことだなあとは正直思います。

やらなければ罰則、でもしっかりやっておけば信頼も得られます。

ベトナムでの事業成功の第一歩として、投資報告を味方につけていきましょう!