こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、ベトナムで会社を一部だけ切り出して独立させたい!というときに使える手法、
「会社分離(separation)」について、**徹底的に“手続きガイド”**としてまとめてみました!
この記事のもくじ
この記事はこんな方に向いています
- ベトナムで一部の事業だけを法人化したい、切り離したい
- 投資家間の対立で分社を検討している
- 何を準備すればいいかわからず、不安になっている
これが解決されると思います。
ベトナムの企業法条の会社分割とは?(超かんたん解説)
会社の一部事業・人材・資産を、新会社に切り出して独立させる方法です。でも、元の会社は消えません。ちゃんと存続します。
✅ 法的根拠:ベトナム企業法2020年 第199条第1項
「有限責任会社または株式会社は、資産・義務・社員・株主の一部を新会社に移転しつつ、元の会社を存続させて会社分離を行うことができる。」
詳細は以下で解説していますよ。
【M&A】ベトナム企業法における会社分割、消滅分割と存続分割を徹底解説!
今回は「存続分割」についての流れについて説明します。199条ですね。
日本語の表現 | ベトナム法上の分類 | 英語表記 | 法的根拠 |
---|---|---|---|
会社分割 | 存続分割 | Partial Division / Separation | 第199条 |
会社分割(完全分割) | 消滅分割 | Full Division | 第198条 |
会社分割の手続きガイド(6ステップ)
それでは、ここから本題。流れをイメージしましょう。あくまでイメージなので実際の進め方とは異なることがあります。
実際に分社するには、どんな手順で何を準備すればいいの?という方へ、ステップバイステップで解説していきます。
ステップ1:会社分離の意思決定(社内手続)
まずは社内で分離の方針を決めます。
必須の決議文書:
- 株式会社なら:株主総会決議(Nghị quyết Đại hội đồng cổ đông)
- 複数人LLCなら:社員会の決議(Nghị quyết Hội đồng thành viên)
📌 この決議には、以下の内容を明記する必要あり:
必須記載事項 | 補足 |
---|---|
元会社の名称と所在地 | 登記情報と一致させる |
設立する新会社の名称 | 仮名称でも可(確定前に調整可能) |
分離方法 | どの資産・人材を分けるか明記 |
資産の移転価値 | 評価証明書が必要な場合もあり |
債務・労働契約の引継計画 | 合意が必要な場合もある |
従業員配置計画 | どちらの会社に誰が行くか |
実施予定日・期間 | 登記スケジュールに連動 |
ステップ2:関係者への通知
分離の決議が完了したら、それを債権者と従業員に通知します。
📌 法律では「決議から15日以内」に通知することが義務づけられています(企業法第199条第3項a)
通知方法は書面でも電子でもOKですが、証拠を残しておくことが重要です(後で「知らされていない」と言われると面倒…)。
ステップ3:新会社(分社先)の定款・設立準備
ここからは、新会社側の準備です。
- 定款案の作成
- 出資者・株主構成の確定
- 代表者(理事長や社長など)の選任
- 登記住所の準備(オフィスリース契約など)
ステップ4:登記申請書類の作成と提出
政令01/2021/ND-CP 第25条第2項により、次の書類が必要です:
📄 提出書類一覧
- 分社決議書(株主総会または社員会の決定)
- 決議に関する議事録
- 新会社の定款
- 出資者リスト・株主リスト
- 代表者の個人情報・身分証コピー
- 登記住所に関する証明書(リース契約など)
- DPI(計画投資局)指定の申請様式
ステップ5:分社元の登記変更(必要な場合)
もし分離により、資本金・出資比率・株主構成などが変わる場合は、元の会社も変更登記が必要です。
これについては、政令01/2021/ND-CP 第61条で定められています。
変更登記に必要な主な書類とは?
- 分社決議書
- 議事録
- 変更申請様式(資本金変更・株主変更など)
- 外資が関与している場合:投資登録証(IRC)の変更申請も併せて行う必要あり
ステップ6:税務当局との連携・確認
登記局(DPI)は、登録情報を税務署に通知し、税務署はその情報に基づいて「分社完了済み/未了」を確認します。
場合によっては、元の会社や新会社に対して:
- 納税証明の提出
- 未処理義務の履行確認
- 登記内容の追加確認
などが求められることがあります。
企業登録が受理されると、登記局は税務局に通知します。
税務局からは、会社が納税義務を履行済みであるか、引継ぎが可能かどうかの情報が返されます。
税務署からOKが出たら、企業登録証(ERC)と、変更がある場合は変更証明書が発行されます。
よくある質問:会社の借金はどうなるの?
これは、企業法199条第5項にしっかり書かれています:
「元会社と新会社は、分社前の債務・契約・労働関係などについて共同で責任を負う」
ただし、
「関係者(債権者・従業員)と別途合意があれば、どちらがどの義務を負うか明確にできる」
とも書かれています。
👉 つまり、原則は連帯責任。でも、しっかり合意を取れば、役割分担も可能なんです。
まとめ:会社分離、やってみたくなったら?
会社分離は、「撤退」でも「逃げ」でもありません。
むしろ、事業を守るための戦略的再編手段です。
ただし、
- 決議の書き方
- 通知の方法
- 書類の整合性
- 当局とのやり取り
――こうした部分に慣れていないと、途中で止まってしまうケースも多いです。
マナラボでは、会社分離・事業譲渡・再編系のサポートも多くご相談をいただいています。
「分けたいけど、まずは何から?」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。
ではまた、マナラボの菅野でした!