こんにちは!マナラボの菅野です。
今日は、ベトナム企業法に出てくる「会社分割」について、少し丁寧に解説してみようと思います。
テーマはずばり、
**「会社の消滅分割と存続分割ってどう違うの?どっちを使えばいいの?」**です。
この記事を読んでいただけると!
- ✔「そもそも会社分割って何?」
- ✔「分割って聞くと難しそうだけど、自分にも関係ある?」
- ✔「分割の種類ってどう選ぶのがいいの?」
というモヤモヤがすっきり整理できます。
この記事のもくじ
「会社分割します!」って、どういうこと?
まず、ベトナムの企業法2020年版では、会社の分割には2種類あるんです。
それが、
- ① 消滅分割(Full Division) と
- ② 存続分割(Partial Division)。
法律ではこんなふうに書かれています:
「有限責任会社または株式会社は、現在の会社の資産、権利義務、社員および株主を分割して、2社以上の新しい会社を設立することができる」(企業法 第198条)
これは消滅分割の話ですね。つまり、今ある会社を2つ以上の会社に分けて、元の会社はきれいに幕を下ろします。
一方、存続分割についてはこうです:
「有限責任会社または株式会社は、現在の会社の資産、権利義務、社員および株主の一部を分けて、1社または複数の新しい会社を設立できる。その場合、元の会社は引き続き存在する」(企業法 第199条)
はい。つまり、会社の一部を切り出して、新会社をつくるけれど、元の会社はそのまま。
そういう形です。
たとえるなら、会社は“定食屋”?
イメージしてみてください。
1つの定食屋さん(A社)が、唐揚げ定食も、魚定食も、パスタまで出していたとします。でも、お客さんもスタッフもバラバラで、だんだんうまく回らなくなってきた…。
そこで、「唐揚げ専門の新店を出そう!」というのが、分割です。
そのとき、
- 元の定食屋を閉めて、新しい店をふたつ出す → 消滅分割
- 元の定食屋を残して、唐揚げ専門店だけ切り出す → 存続分割
こういうイメージです。
会社分割を比較で整理するとこうなります!
以下の表で、消滅分割と存続分割の違いを詳しく見ていきましょう。
【ベトナム企業法に基づく法的比較】です。
比較項目 | 消滅分割(企業法第198条) | 存続分割(企業法第199条) |
---|---|---|
定義 | 有限責任会社や株式会社が、会社の資産・権利・義務・構成員を分割して2社以上の新会社を設立し、元の会社は消滅する。 | 一部の資産・権利・義務・構成員を新会社に移し、元の会社は存続しながら新会社を設立する。 |
構造(式) | A = B + C (A社は消滅) | A = A + B(A社は存続) |
実行方法 | 資産・義務・構成員をすべて新会社へ分配。 | 一部の資産・構成員だけを新会社に移転。 |
法的効果 | 新会社の設立完了後、元の会社は登記上消滅する。 | 新会社ができても、元の会社はそのまま存在する。 |
債務責任 | 新会社が元会社の全ての債務・契約・義務に連帯責任を負う(または債権者と合意の上で一部会社が負担)。 | 元会社と新会社が共同で責任を負う(債権者と合意あれば特定会社だけが負担)。 |
法的根拠 | 企業法2020 第198条 | 企業法2020 第199条 |
🇯🇵 日本の制度とどう違うの?
日本でも「会社分割」という言葉がありますよね。
大きく2つに分かれます。
- 吸収分割: 新会社はつくらず、既存会社に事業を移す
- 新設分割: 新しい会社を設立して、そこに事業を移す
この定義で見ると、
ベトナムの「消滅分割」は新設分割+元会社消滅版、
「存続分割」は日本の新設分割にかなり近いといえます。
でも、日本には「会社を完全に消滅させて分ける」という考え方はあまりないので、ベトナムの「消滅分割」はやや強力な制度なんです。
どっちを使えばいいの?
これは本当に「目的次第」です!ケースバイケース。一般的には以下のような場合だと言われていますよ。
消滅分割が向いてるのはこんな時:
- 経営陣・株主の意見が対立している
- 完全に独立した複数法人にしたい
- 会社そのものを再構成したい(債務なども分けて)
存続分割が向いてるのはこんな時:
- 新規事業を切り出したいけど、本体は残したい
- 資産管理やM&Aの準備で一部だけ法人化したい
- 一部事業を将来的に売却したいけど、まず独立させたい
負担の傾向としてはこうです。
- 消滅分割: 解散・清算に関わる手続きが増えがち。新会社も。
- 存続分割: 元会社が残るので手続きは比較的簡素。でも、新会社設立のコストは当然かかります。
会社分割の手続きと注意点の概要
以下のようになります。
- 必要書類:株主決議書、分割計画書、新会社の登記申請書など
- 所管機関:DPI(計画投資局)と税務当局
- 税務上のポイント:資産の移転にVATが発生するかどうか、法人税の課税対象になるかなど、事前確認が重要です。このあたりは複雑そうです。
よくあるお悩み:「責任はどっちが負うの?」198条と199条
「分ければ借金も切り離せるんでしょ?」という声、実務ではよく聞きます。
ですが、それは誤解です。
分割の種類に関わらず、新会社も元会社も、連帯で責任を負うのが基本です。
なので、債権者や従業員と事前にしっかり合意を取っておかないと、あとでトラブルになります。
法的根拠もちょっと見てみます。
🔹 ベトナム企業法2020年 第198条(会社の分割)
第198条6項:
新設された会社は、分割された会社の未履行の債務、労働契約、その他財産上の義務について共同責任を負う。
ただし、債権者、顧客、従業員と別途合意がある場合を除く。
👉 つまり、**原則は「新会社が全社で連帯して引き継ぐ」**ということですね。
ベトナム企業法2020年 第199条(会社の分社)
第199条5項:
新会社と分社元の会社は、分社前の債務・労働契約・財産上の義務について共同責任を負う。
ただし、こちらもやはり関係者と合意があれば特定の会社が引き継ぐことも可能。
まとめると
✔ **会社分割後の債務や義務については、基本的に新会社および元会社が「連帯責任」**を負います。
✔ 債務逃れ目的の分割は、法律的にも無効になるリスクがあり、裁判で争われることもあります。
✔ ただし、関係者(債権者・従業員・顧客)と事前に「どちらの会社がどの義務を負うか」を合意しておけば、その通りに分担が可能です。
実務的な注意点
- 債権者から「新設会社に対しては請求できない」と思われると、信頼を失うおそれがあります。
- 分割計画書や決議書の中で「責任の分担」を明記しておくことが重要です。
- 特に財務DDや法務レビューを通じて、「どの債務が誰に承継されるか」の整理が求められます。
最後にまとめますね
- ベトナムの会社分割は**「消滅分割」と「存続分割」**の2つがある
- 違いは、元会社が残るかどうか
- 「事業目的」によって、どちらを使うかを判断しましょう
そして何より大切なのは、
「制度を選ぶ」のではなく、「目的から逆算する」こと。
わからない部分があれば、ひとりで抱え込まず、私たちに気軽に聞いてくださいね。
ではでは、今日はこの辺で。マナラボの菅野でした!