こんにちは!マナラボの菅野です。
今回のテーマは、「組織用VNeID(電子識別アカウント)」のお話です。
2025年7月1日から、企業の皆さんにとって見逃せない電子識別制度の新しい運用ルールが本格スタートします。
「うちは関係ない」「何かのデジタル施策でしょ?」と思っている方、どうか一度立ち止まってお読みください。
**手続きができなくなる。業務が止まる。**そんな事態が、現実に起きてしまうかもしれません!
この記事のもくじ
そもそも組織用VNeIDってなに?
ベトナム公安省の国家人口データセンターが提供する電子識別アプリ「VNeID」は、もともと個人向けのe-IDとして広がってきました。
ですが今、政府は企業や組織もこのe-IDアカウント(通称「組織VNeID」)を持つことを強く推進しています。
このアカウントを通じて、行政ポータルサイトへのログインや申請、各種手続きを一元管理できるようになるという仕組みです。以下のような手続きです。
分野 | 対応手続き(例) | VNeIDの役割・利点 | 根拠 |
---|---|---|---|
税務関連 | – 電子納税(eTax)- 法人税・VAT・個人所得税申告- 税務コードの変更・登録 | 税務総局のeTaxポータルへVNeIDでログイン可能。認証済み企業代表者の権限確認が容易に。 | 税務総局(GDT)公式ポータル、政令69/2024/ND-CP 第12条、第40条 |
事業登録・ライセンス関連 | – ERC(企業登録証)の変更・修正- IRC(投資登録証)の更新- 営業所・支店の設立・廃止 | 国家公共サービスポータル(https://dichvucong.gov.vn)から申請可能。ログインと申請にVNeID必須。 | 国家行政ポータルガイド、政令69/2024/ND-CP 第40条、第12条 |
e-Invoice関連 | – 電子インボイス登録- e-Invoiceソフトウェア提供業者との認証連携 | VNeIDにより法人代表者としての身元確認が可能。CA認証と併用。 | 通達78/2021/TT-BTC、政令123/2020/ND-CP、公安省通知 |
労働・社会保険関連(地方自治体で対応開始) | – 労働者採用・解雇報告(Form 01/PLI)- 労働規則の登録(10人以上) | 地方労働局が受付システムにVNeIDを導入(例:ホーチミン市)。企業IDによる手続認証が進行中。 | 通達3367/SNV-VLATLD(ホーチミン)、地方労働局ウェブサイト |
国家行政サービスポータルへの統一ログイン | – 上記すべてのオンライン申請入口 | VNeIDは組織ID(法人)として唯一有効なログイン手段に。2025年7月から旧アカウント無効。 | 政令69/2024/ND-CP 第40条、dichvucong.gov.vnログイン仕様 |
📅 有効日と移行スケジュール(政令第69/2024/ND-CPより)
では、いつから何が変わるのでしょうか?
以下が、政令第69/2024/ND-CP(2024年6月25日公布)第40条に基づく具体的なスケジュールです:
内容 | 期限・発効日 |
---|---|
政令第69号の施行開始日 | 2024年7月1日 |
省庁・地方レベルの行政情報システムが発行した従来の企業アカウントの有効期限 | 2025年6月30日まで |
2025年7月1日以降使用可能なアカウント | 組織VNeIDのみ(VNeIDアプリで登録) |
➡️ つまり、2025年7月1日以降は旧アカウントが使えなくなり、VNeIDが唯一の手段になります。
⚠️ 法的義務ではない。でも実務上“やらなきゃいけない”理由【実務も解説】
「義務化」と聞くと、「法律で書いてあるか?」が気になる方も多いはず。
実際、政令第69号には“企業は必ず登録しなければならない”という明文化された義務条項はありません。
罰金の規定も今のところはありません。
ですが、登録していないと行政手続そのものができない状況になるので、これはもう事実上の義務といって差し支えないのです。
実務がどうなっているのか?もみてみましょう!
ビンディン省が明言!未登録企業の書類は受け取りません
2024年6月、ビンディン省人民委員会事務局は以下のような明確な発表を行いました:
「2025年7月1日以降、組織VNeIDを保有していない企業・機関・団体からの行政手続書類は受理しない」
※オンライン・オフライン問わず対象。
出典:binhdinh.gov.vn 公式通達, 2024年6月
これは、「登録しない=行政サービスにアクセスできない」という、非常に現実的で厳しい制限です。
登録が進んでいない現状(ソクチャン省の例)
さらに、ベトナム各地でVNeID登録が進んでいないという課題も明らかになっています。
たとえば、ソクチャン省のデータでは:
- 登録対象企業数:約4,000社
- 登録済み企業数(2025年4月時点):約120社のみ
※情報出典:ソクチャン省工業貿易局、および財務省統計による
原因は以下の通り:
- 制度の周知不足(「知らなかった」が多数)
- 過去の詐欺事件への警戒心(警察や官公庁を名乗る偽SMSなど)
- VNeIDアプリ操作の不慣れ
- 登録時に企業情報が認証されないなど、技術的な不具合
🧭 まとめ:「今すぐ動くか、止まるか」
- 法的義務ではないが、行政とつながるためには“必須”
- 登録しないと、申請も報告も許可もできない
- 各地方政府も「未登録は受理しない」と明言
- 無視すれば、気づいたときには事業が止まる
📱 VNeIDアプリでの登録は簡単&無料!
実はこの組織アカウント、無料で登録できて、スマホで完結します。
登録に必要なのは、法定代表者のレベル2アカウントだけ。
登録手順については、別記事『図解!VNeIDアプリでの組織アカウント登録ガイド』で詳しく紹介予定です。
最後に:登録するなら今このタイミングで!
事業継続のリスクを避けるためにも、今のうちに準備を進めておくのが得策です。
「まだ時間があるから大丈夫」ではなく、**「今なら間に合うから動く」**という判断が、
将来の安心につながります。
次回の記事もお楽しみに!