こんにちは、マナラボの菅野です。
今日は、ベトナム法人を設立する前に親会社が立て替えた費用──いわゆる「設立前費用」について、その📑証憑整備の仕方を徹底的に解説します!
よくある誤解ですが…
「もう親会社が払ったんだから、それで終わりでしょ?」
🙅♂️ 残念ながら、ベトナムではそうはいきません。
税務署にとって大切なのは、「誰が払ったか」よりも「証拠が揃っているか」。
このブログでは、設立前に発生した費用を📉法人の経費として処理するために必要な証拠書類と、その整備方法をやさしく、でも実務レベルでしっかりお伝えしていきます。
この記事のもくじ
設立前費用とは何か?その具体例
ベトナム法人の設立前には、意外と多くの費用が発生します。
以下に主な費用項目をリストアップしました。
- 市場調査費(競合分析、顧客調査など)
- 登記・ライセンス取得のコンサル費
- オフィス賃貸保証金・家賃前払い(よくある!)
- 家具・OA機器・ネット回線・消耗品の購入
- 会計・税務・給与等の管理システム導入費
- 人材紹介・求人広告・採用面接費用
- 社員研修・マネジメントトレーニング費用
- 広報・広告・ブランド設計費用
- 翻訳費・通訳費・契約ドラフト作成費
- 銀行口座開設費・印鑑作成費
- 現地視察・交通費・宿泊費・出張費用
これらを損金にしたいなら、「立替」だけでなく、「整った証憑」が必要です。
なぜ証憑整備が重要なのか?🛡️
「とりあえず払った」だけでは、ベトナム税務は認めてくれません。
🔍 見られているのは「誰が払ったか」ではなく「証憑が整っているか」。
しっかり整備されていれば…
- 法人税の損金として処理できる
- VATの仕入税額控除も可能になる
でも、証憑が不備だと…
「その費用は経費ではない」とされ、課税所得が増えてしまいます。ここがポイントですね。
法令上の根拠と3つの基本要件
ベトナムの税法では、設立前の支払いも一定条件を満たせば処理可能です。
- 企業法第19条:設立前に契約でき、その義務は会社が引き継げる
- 通達219/2013(VAT):委任状+送金があれば、委任先名義のインボイスでもVAT控除可
- 📘 通達96/2015(法人税):証憑+非現金決済で、損金算入可
つまり、ベトナム税務ではこの3つが大前提です👇
- 委任状:設立者が「親会社に払ってもらいます」と明記
- 証憑(請求書):金額・日付・内容が明記されたインボイスまたは請求書
- 銀行振込記録:2,000万VND超なら、現金払いはNG
証憑整備に関する比較表:ベトナム業者 vs 日本業者(親会社経由)
実務でよくあるのが、「支払先がベトナムか日本か」で証憑の整備が変わる問題。
以下は、両者の違いを表にまとめたものです。
項目 | ベトナム業者から取得 | 日本業者(親会社経由)から取得 |
---|---|---|
インボイス形式 | VATインボイス(紅色・正式様式) | 日本の請求書(日本語/英語) |
インボイスの名義 | 委任先(親会社)名義でもOK(委任状があれば) | 親会社名義(設立法人名義ではない) |
契約書の相手先名義 | 親会社または委任された個人でもOK | 親会社名義(第三者委任に該当) |
委任状の必要性 | 必須(法人設立者→親会社) | 必須(法人設立者→親会社) |
支払方法 | 銀行送金が必須(2,000万VND以上は現金不可) | 同左(親会社→業者:銀行送金、設立法人→親会社:返金) |
VAT控除(仮払いVAT)の可否 | 可能(委任状+VATインボイス+送金証憑が揃えば) | 不可(日本の請求書にはベトナムのVATが含まれていない) |
法人税の損金算入 | 条件を満たせば可能 | 委任状+返金処理+目的説明があれば可能 |
会計処理上の科目 | 繰延資産(勘定242)で計上し、最大3年以内に償却 | 同上。返金処理または資本相殺の記録が必要 |
翻訳の要否 | 不要(ベトナム語のインボイス) | 必要(請求書や契約書をベトナム語に翻訳して保管) |
税務調査時の信頼性 | 高い(税法に完全準拠、調査官に説明しやすい) | 低〜中(補足説明・文書整備がないと否認リスクあり) |
外国契約者税(FCT) | 原則発生しない(国内取引) | 返金処理なら非課税。ただしマージン等が含まれると課税リスクあり |
目的証明の必要性 | 高くない(インボイスに記載された内容で判別可) | 高い(業務報告書、メール記録、事業関連性説明などが必要) |
実務難易度 | 低(スムーズで定型的) | 高(準備・説明・翻訳が多い) |
おすすめ度(実務的視点) | ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(ベストプラクティス) | ⭐️⭐️(整備次第で可。ただし労力とリスクあり) |
👉 **ポイントは、「ベトナム業者からのVATインボイスが最も安全」**ということ。
日本業者の場合でも対応できますが、補足書類や翻訳の整備が欠かせません。このあたりが悩ましい
委任関係は誰から誰へ?🔄
💬「委任状って、親会社が出すんですか?」
👉 実は逆です。
- 委任者:ベトナム法人(またはその発起人)
- 委任先:親会社やその社員
つまり、「払ってください」とお願いするのがベトナム側、「実際に払う」のが親会社側。
まだ法人格がないときは、発起人代表者名義で署名すればOKです。
よくあるNG事例とその回避方法
NGパターン | 回避策 |
---|---|
❌ 委任状がない | ✅ 委任状を作成し、支払時点で効力をもたせる |
❌ 現金で支払っていた | ✅ 銀行振込(特に2,000万VND超)は必須 |
❌ 請求書が日本語のみ | ✅ ベトナム語翻訳と目的説明書類を添付 |
❌ 親会社に返金していない | ✅ 銀行送金 or 相殺等返金処理を |
実務で揃えたい「鉄板4点セット」📦
証憑整備に失敗しないために、次の4つは必ず揃えてください。
- 委任状(ベトナム法人 → 親会社)
- 請求書・インボイス(委任先名義)
- 銀行送金控え(実際に支払った証拠)
- 目的補足資料(契約書、業務報告、翻訳など)
まとめ|設立準備こそ“証拠が命”🔐
設立前費用は、処理を間違えると経費にならず全額自己負担になることもあります。
でも逆に、今回紹介したように
✅ 委任状を出して
✅ ちゃんとした証憑を受け取り
✅ 送金証拠を残しておけば
税務調査にも堂々と説明できる処理が可能になります。
法人設立は“スピード”も大切ですが、“証憑”はもっと大事。
あとから苦労しないよう、今のうちにしっかり整えておきましょう!