こんにちは!マナラボのすげのです。

最近、「2025年7月から給与は振込じゃないとダメになるらしい…」なんて噂、聞いたことありませんか?

とくに不動産業界のように、まだまだ現金支給が主流の会社では、「えっ、給与も全部振込じゃなきゃ違法になるの!?」と不安の声もちらほら。

でもそれ、ちょっと待った!

今日は、ベトナムで2025年7月1日から施行される「政令181/2025/NĐ-CP」の条文と、労働法の関連規定を根拠に、この「給与振込義務化説」が本当なのかを、丁寧に・わかりやすく・正確に整理してみます。

結論から言うと…

給与を銀行振込にしなければならないという法律は、現時点では存在しません。

つまり、現金払いも合法でしょう。

ただし、「政令181号」の条文と混同しがちなポイントがあるので、この記事でしっかり解説しますね!

話題の政令181/2025/NĐ-CPって何の法律?

これは、**2024年改正付加価値税法(Luật thuế GTGT 2024)**の施行細則を定めた政令で、2025年7月1日から正式に施行されます。

中でも注目されているのが、第26条のこちらの規定:

Điều 26. Chứng từ thanh toán không dùng tiền mặt
Cơ sở kinh doanh mua hàng hóa, dịch vụ có giá trị từ 05 triệu đồng trở lên (đã bao gồm thuế GTGT) theo từng lần mua phải có chứng từ thanh toán không dùng tiền mặt theo quy định…

(拙訳)
第26条:非現金支払証憑
商品・サービスを1回5百万ドン以上(税込)で購入する場合には、「非現金支払いによる証憑」が必要…

つまり、仕入VATの控除を受けるためには、5百万VND以上の取引には銀行振込などの証憑が必要になるという内容なんですね。

>>【がんばって解説】ベトナム税務2025年7月1日以降、500万VND以上の購入には非現金証憑が必要なの?【紙のお金は使えない?】

でも、給与って「商品・サービスの購入」なの?

いいえ、違います!

この政令181号が対象としているのは、VAT対象取引=インボイスが必要な商品・サービスの購入です。

つまり、企業が社員に支払う給与はインボイスもVATも関係なし

→ 給与には政令181号は適用されません!

労働法の条文を見てみよう

ここで登場するのが、ベトナムの労働法(Luật Lao động)2019年版の第96条。

Điều 96. Hình thức trả lương
2. Người sử dụng lao động trả lương cho người lao động bằng tiền mặt hoặc trả vào tài khoản cá nhân của người lao động được mở tại ngân hàng.
Trường hợp trả lương vào tài khoản cá nhân của người lao động mở tại ngân hàng thì người sử dụng lao động phải trả các loại phí liên quan đến việc mở tài khoản và chuyển tiền lương.

(拙訳)
第96条:賃金の支払形態
使用者は、労働者に対して賃金を現金または銀行口座振込で支払うことができる。
銀行口座振込を選ぶ場合は、手数料等は使用者負担とする。

このように、どちらの支払い方法でも合法なのです!

政令145/2020/NĐ-CPでも確認できます!

もう一歩踏み込んで、労働法の施行細則である「政令145/2020/NĐ-CP」の第54条も見てみましょう。

Điều 54. Hình thức trả lương
2. Tiền lương của người lao động theo các hình thức trả lương quy định tại khoản 1 Điều này được trả bằng tiền mặt hoặc trả vào tài khoản cá nhân của người lao động mở tại ngân hàng…

ここでも、**「現金 or 銀行口座」どちらでもOK!**というスタンスがはっきりと記載されています。

よくある誤解:「500万VND以上=すべて振込義務」?

これは誤りです。

確かに政令181/2025/NĐ-CPでは、「5百万VND以上の支払に非現金証憑が必要」とされていますが、これは企業が仕入VATの控除を受けるときの条件

一方、給与はそもそもVAT対象外。
なので、

✅ 給与支払いにおいては、政令181号の対象外
✅ 労働法に従えば、振込でも現金でもOK
✅ 労働契約で合意すればどちらも合法

なんです!

不動産企業など現金慣行の業界はどうする?

現金払いが当たり前だった業界でも、

  • 労働契約や就業規則に「現金支給」と明記しておく
  • 支払いの記録を明確に保管しておく(給与明細など)

このような運用で、引き続き合法に支払えます。

もちろん、「今後は銀行振込に切り替えたい」という場合でも、社員との同意を得て進めることが必要です。その際は、口座開設手数料や振込手数料は会社が負担ですよ!

 まとめ:給与の振込義務はデマ!条文を見れば一目瞭然!

最後にもう一度、まとめです。

誤解実際の法律
2025年7月から給与は必ず振込?❌ → 労働法上、現金払いも合法
5百万VND超の支払はすべて振込義務?❌ → 対象はVAT控除のある仕入取引
給与はインボイス必要?❌ → インボイス不要、VAT対象外

📚 参考法令・条文リンク(ベトナム語原文)


今後もマナラボでは、こうした「誤解されがちな法令」の正しい読み解きを発信していきます。
ご質問や気になるテーマがあれば、ぜひ教えてくださいね!

以上、マナラボのすげのでした!