〜給与所得者の税務申告、どちらのフォームを使うべき?〜

こんにちは!マナラボのすげのです。
ベトナムで働く社員の個人所得税の処理、企業としてもしっかり把握しておきたいですよね。

でも、こんな声もよく聞きます。

「Form 02って2種類あるんですか?」
「QTTとKKって、何がどう違うの?」
「うちの社員はどっちを出せばいいんですか?」

そうなんです。**Form 02/QTT-TNCN(確定申告)Form 02/KK-TNCN(都度申告)**は、見た目も似ていて混同しやすいですが、使うタイミング・目的・対象者がまったく違うんです!

このブログでは、両フォームを徹底的に比較・整理しながら、

  • どっちを使うのが正しいのか?
  • 実際どう書けばいいのか?
  • 日系企業として気をつけるべきポイントは?

を、**具体例付きでやさしく解説していきます。


✔ この記事を読めばわかること

  • QTTとKKの違いが明確に理解できる
  • フォーム構造と記入項目の比較ができる
  • 自社の社員がどちらを使うべきか判断できる
  • 間違ったフォーム提出で生じるリスクを回避できる

こんな方におすすめ

  • ベトナム現地法人の日本人社長
  • 日本で税金を払っており二重課税が生じ「還付」を考えている方
  • 日本本社で駐在員の給与を管理している方
  • ご自身で申告が必要な日越の駐在員の方
  • 税務署から「申告不足です」と言われて焦っている方

2. 各フォームの概要と目的の違い

〜“似てるけど全然ちがう” 申告書たち〜今回は、「QTTとKKって、どっちが何をするフォームなんですか?」という、超よくある質問に答えていきます。

結論から言うと、この2つのフォームは「いつ」「何のために」使うかがまったく違います!


📄 Form 02/QTT-TNCNとは?

✔ 個人所得税の「年次確定申告」に使う
✔ ベトナムに居住する**給与所得者(Cá nhân cư trú)**が対象
✔ 所得の過不足を調整し、還付・追納を行うための様式


🧾 Form 02/KK-TNCNとは?

✔ 個人が「その時点で税務署に申告する」ための書類
✔ 毎月または四半期ごとに提出(※後述)
✔ 給与を会社が源泉していないときに、個人が直接申告する


🕒 KKフォームは月次 or 四半期?

実務で重要なのがここです。
Form 02/KK-TNCNは、法令上「四半期提出」が原則ですが、税務署から「月次で出すように」と指導されることもあります。

🔍 根拠整理:

  • 通達80/2021/TT-BTC(付録II)において、「四半期申告が基本」

  • ただし、納税額や税務署の運用により月次になる例も?

 用途のちがいを簡単にまとめると…

比較項目02/KK-TNCN(申告)02/QTT-TNCN(確定申告)
主な目的所得が発生したときの納税義務の申告年度末の精算(過不足の調整)
提出タイミング月次 or 四半期(源泉なし時)年1回(通常は4月末まで)
控除の反映一部のみ可扶養・保険・寄付など全控除可
所得対象その期間の所得年間の全所得(国内+国外)
還付処理原則なしあり([44]〜[48]で処理)
提出先税務署(源泉されていない人)居住地税務署/源泉元税務署

💡 すげのからの現場アドバイス

  • Form 02/KK-TNCNは、「払うため」の四半期の申告
  • Form 02/QTT-TNCNは、「確定申告、精算・返してもらうため」の申告

この違いをおさえるだけで、「あれ?どっちだったっけ?」が一気にクリアになりますよ!

3. 比較表|02/QTTと02/KKの違いを大きな一目でチェック

〜「使いどころ」を間違えると、損もトラブルも発生します〜

ここでは「02/QTT-TNCN(確定申告)」と「02/KK-TNCN(都度申告)」の具体的な違いを、比較表でスッキリ整理していきます。

実務では、「このフォームを使っておけばOK」という万能フォームはありません
状況に応じて正しいフォームを選ぶこと=正しい納税の第一歩なんです。


🧾 ざっくり用途のちがい

  • 02/KK-TNCN=「その都度、自分で申告して納める」ためのフォーム

  • 02/QTT-TNCN=「1年分まとめて清算(還付・追加納税)」するためのフォーム

比較表|項目別の違いを徹底チェック!

比較項目Form 02/KK-TNCNForm 02/QTT-TNCN
📌 目的所得が発生した時点で税を申告・納付年間所得をまとめて精算・還付
📅 提出頻度原則:四半期/税務署により月次指定あり年1回(通常 翌年4月末まで)
対象者居住者/非居住者ともに対象
※主に「源泉徴収されていない」人
給与所得がある居住者個人(ベトナム183日ルールあり)
🧾 控除の可否一部のみ(DTA、保険料など)本人・扶養・保険・寄付などすべての控除に対応
所得範囲当該月または四半期の所得のみ年間すべての所得(国内+国外)
還付処理不可(納税のみ)可能([44]〜[48]欄で処理)
適用事例海外本社から給与を受ける駐在員、現地採用で会社が源泉していない場合など年末調整を会社がしない/控除や還付を受けたい/複数社から給与がある人など
 会社による対応基本的には「自己申告」前提。企業は申告代行しないことが多い雇用関係が継続していれば委任で代行可能(ただし要件あり)

つまり…

フォーム目的結果
KK前払い・納税支払うだけで還付なし
QTT確定、清算支払った分と納税額を比較し、還付 or 追納

🧠 すげののひとこと

申告トラブルでよくあるのが、「間違ってKKを出し続けて、QTTを出していなかった」ケース。
たとえば、月次でしっかりKKを提出して納税していたとしても、QTTを提出しなければ還付は受けられません。

逆に、QTTしか出していない人が源泉徴収されていなかったら、そもそも未納扱いになることも…!

4、実際のフォーム比較で理解を深めよう

〜この違い、書いてみたら一目瞭然〜

「フォームの役割はわかったけど、どこがどう違うの?」
そう思っているあなたのために、この章では02/KK-TNCNと02/QTT-TNCNの違いを“記入例で”徹底比較します!

概要カテゴリQTTフォームの項番

KKフォームの項番(四半期)

内容・備考
課税期間[01][01]QTTは「年間」、KKは「月または四半期」
初回申告・補足申告[02]・[03][02]・[03]両フォームで共通構造
氏名・TIN・住所など[04]〜[11][04]〜[11]共通。納税者本人の情報
税務代理人情報[12]〜[14][17]〜[19]※KKでは位置が異なることあり/省略されているケースも
所得支払者情報[15]〜[19][12]〜[16]両者で位置が異なるが内容は類似
所得合計[20][20]どちらも「課税対象所得」。ただし集計期間が異なる(QTTは年、KKは月/四半期)
国内所得[21][21]意味は同じ。
DTAによる免除所得[22][21] に含まれる?/項目として独立していないことがある 
‼️国外所得[23]❌(存在しない)QTTにのみ存在。国外給与を含める必要がある。大事な点です。
扶養者数[24]KKには原則なし。控除適用しないから
控除合計[25] = [26]〜[30]自動または簡略化されて記入なしQTTで初めて「すべての控除」が申請可能になる
控除詳細(本人・扶養・保険等)[26]〜[30][22][23]〜[27] 
課税所得[31][28]  
⭐️所得税額[32] [29] 

[30~32] は非居住者

累進税率に基づいて計算(ただしKKでは期間単位)[
期中納付済税額(集計)[33]〜[38]KKでは納税実績を記載できない。
減税・免除処理[39]〜[41]年度またぎの調整やその他法定優遇。QTTのみ可
追加納税 or 納税免除額[42]〜[43][29]のみKKでは実際の所得税を計算して終わり。免除処理はできない
納税超過・還付処理[44]〜[48]QTTにしか存在しない。超過納税があってもKKでは還付申請できない

📌 QTTにしか存在する/反映される主な機能

機能QTTにある?KKにある?
還付申請([44]〜[47])✅ あり❌ なし
海外所得の記載([23])✅ あり❌ なし
扶養控除・寄付控除など([24]〜[30])✅ あり❌ なし
年度またぎの調整([37][38][40])✅ あり❌ なし

 この違いは大事ですね。よくあるのが「日本で役員」であった場合に日本でも「非居住者」として納税し二重課税になっているケースです。

すげののまとめ

  • フォーム番号は似てても、項目の構造と中身は非対称です
  • QTTは「年間の精算」なので、控除・海外所得・還付・納税履歴すべて反映
  • KKは「暫定の申告」。その期間に「いくら稼いで」「いくら納めるか」だけに集中

です。

まとめ|あなたの状況に合ったフォームを正しく使おう

〜「知らなかった」では済まされない、税務申告の正解〜ここまで、Form 02/QTT-TNCN(年次確定申告)とForm 02/KK-TNCN(都度申告)について、目的・構造・記入例・ケースごとの使い分けまで、徹底的に整理してきました。


🧾 最後に、もう一度「フォーム選びの基本」をおさらい

状況使用フォーム
源泉徴収されていない給与がある(例:日本法人から日本の口座への給与)✅ Form 02/KK-TNCN(四半期)
年間で税金を精算したい(還付・控除)✅ Form 02/QTT-TNCN(年次)
海外からの給与を申告したい✅ Form 02/QTT-TNCN([23])
複数社から収入がある✅ KK+QTTを併用
年末に扶養控除や保険控除をまとめたい✅ QTT
退職している、会社に申告を委任できない✅ 自己申告(QTT)

⚠️ よくある「申告漏れリスク」も要チェック!

  • KKしか出していない → 還付も控除もされない
  • QTTを出し忘れた → 納税超過でも戻らない
  • 海外所得を除外した → 税務署から指摘される可能性あり
  • 委任できると思っていたらできなかった → 提出遅延+罰金の可能性

✅ まとめ

  • KKは「税金を先に納める」
  • QTTは「税金を最終的に精算する(いわゆる確定申告」
  • 両方を正しく理解して使い分けることで、納税義務も還付権利も正しく守れる!

すげのからの最後のアドバイス

  • 会社は「申告そのもの」よりも、「社員が正しく申告できる環境を整えること」が本当の役割です
  • フォームは書き方だけでなく、“いつ・誰が・なぜ出すのか”の判断がすべて

おまけ:記事で使った資料がほしい方へ

ご希望があれば、以下の実務資料をご用意できます:

  • ✔ KK/QTTフォーム比較表(PDF/Excel)
  • ✔ Form 02/QTT-TNCN記入見本(日本語ガイド付き)
  • ✔ 扶養控除リスト(Form 02-1/BK)サンプル
  • ✔ eTax申告手順の画面イメージ集

必要な方はお気軽にご連絡ください!

なお弊社のお客様である場合には「マナラボ」にログインしてこういったツールを閲覧することが可能です!


これで、「Form 02/QTT-TNCNとForm 02/KK-TNCN比較・徹底解説!」の記事は完結です。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!