こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、2025年7月1日から施行された新しい付加価値税(VAT)法により、これまで「0%VATが当然」と思われていた輸出加工企業(EPE)向けのサービス提供がどう変わるのか?
とても実務に影響がある大事なポイントなので、「旧法ではどうだったのか?」「新法では何が変わったのか?」を、根拠条文とともにわかりやすく解説していきます!
この記事のもくじ
まずはおさらい:旧法の付加価値税(VAT)法ではどうだった?
2008年付付加価値税法(13/2008/QH12号)**および、Circular 219/2013/TT-BTC 第9条に基づき、
EPE(輸出加工企業)に提供するサービスは、広く「輸出サービス」とみなされていました。
そして、この「輸出サービス」には、**VAT税率0%**が適用されていたんです!
たとえば:
- 会計・税務アドバイザリー
- ソフトウェア開発
- 保守サービス なども、
相手がEPEであり、サービス契約書・銀行振込・投資ライセンスの写しなどが揃っていれば、0%で請求書を発行できるとされていました。
👉つまり、輸出支援に関わる広範なサービスがVAT非課税でOK! という運用だったんですね。
ところが…新法でガラッと変わりました(2025年7月1日~)
ここが本題です!
2024年11月26日に公布された
📘 新VAT法:Law No. 48/2024/QH15
🧾 および施行政令:Decree 181/2025/NĐ-CP(2025年7月1日施行)
によって、これまでの「0%OK」の前提が変わりました。
新たな“2つの要件”が登場!
政令181/2025/NĐ-CP 第17条第2項bによると、今後0%VATが適用される「輸出サービス」は、以下の要件を両方満たす必要があります。
- ✅ 非課税地域内(たとえばEPE構内)
- ✅ サービスが実際に「輸出生産活動を直接支援する」ものであること
つまり、以下のようなサービスが0%の対象として明確に列挙されています:
- 港湾・倉庫でのコンテナの積み下ろし
- 工場内での荷役・包装・梱包
- EPE内での運搬や電力供給など
比較表にすれば以下のようになるでしょう。
項目 | 旧法(〜2025年6月30日) | 新法(2025年7月1日〜) |
---|---|---|
根拠法令 | – Law No. 13/2008/QH12- Circular 219/2013/TT-BTC 第9条 | – Law No. 48/2024/QH15- Decree 181/2025/NĐ-CP 第17条第2項b |
サービスの分類 | EPEへのサービス=原則「輸出サービス」と見なされ、VAT 0%適用 | 条件を満たしたサービスのみ「輸出サービス」と認められる |
VAT 0%の条件 | 以下の3点があればOK:① サービス契約② 銀行振込③ EPEであることを証明(投資ライセンス等) | 上記に加えて、以下の両方が必須:① 非関税地域内でサービスが消費されること② サービスが輸出生産を直接支援すること |
対象となる主なサービス | 会計・税務・コンサルなど幅広く認められていた | 港湾・倉庫での積み下ろし、梱包、運搬、電力供給など「明確に列挙されたもの」のみに限定 |
グレーゾーンの扱い | 少なかった(実務で0%適用が一般的) | 多い(会計・税務は明記されず、判断に注意が必要) |
当局の姿勢 | やや寛容・明文化不足あり | 厳格化、対象を明確化し、誤適用リスクが上昇 |
🔍 ポイント:
新法では、「EPE向け」=0% ではなくなり、「EPE向けでも“直接支援”でなければ10%」が基本姿勢です。これがややこしい!
「② サービスが輸出生産を直接支援すること」という表現は、政令181/2025/NĐ-CP 第17条第2項bに登場し、0%VAT適用のキモとなる文言です。
現時点で当局の公式な詳細解釈は出ていませんが、条文、通達、そして過去の実務例を総合的に見ると、以下のような解釈ができるのかなと
解釈の方向性:「“直接支援”」=輸出品の物理的・運用的処理と密接に関係する業務
💡 キーワードは「物理的・運用的に不可欠」かどうか
政令181号では、0%VAT対象の輸出サービスとして具体例が列挙されています:
「港や工場でのコンテナの積卸し、貨物保管、封印、梱包、荷役、電力供給」など
この列挙から読み取れる共通点は、
- 輸出品の生産・搬出に直接関わる
- 作業がEPE(輸出加工企業)の敷地内または近接地で完結する
- サービスの“消費場所”がEPE内にある
- **生産停止や物流停滞を防ぐ「必要不可欠な工程」**であること
ではこれまで0%でインボイスを発行していたサービスは?
この政令や、関連するCircular 69/2025/TT-BTCでは、
会計・税務・コンサル・清掃・人材派遣などの「間接的サービス」は明記されておらず、
→ 今後は0%VATが認められない可能性が高い?という疑念が生じています。これは実務上の大きな懸念です。弊社にも影響があります。
ベトナムの実務では何が起きているか?
- 「今まで0%で請求してたけど、これからどうすれば…?」
- 「すでに契約済の案件でも、VAT税率を変えるべき?」
- 「当局の見解がまだ出ていないけど、どう判断すれば?」
👉 実際、多くの企業で社内混乱や照会の動きが加速しています。
ある会計事務所の解説では、
「税務サービスが『輸出生産を直接支援』するとは言いがたい。原則10%の課税に切り替えるべき」
との見解も出ており、保守的に10%を適用する判断をしている企業もあります。
よくある質問(Q&A)
Q1:施行日前(2025年6月30日)に提供したサービスは?
👉 旧法が適用されます。
ただし「提供完了日」が重要なので、請求書日ではなく、業務完了のエビデンス(作業報告書等)を残しておきましょう!
Q2:コンサルなどのEPE向けサービス、今後も0%VATで請求していい?
👉 現時点(2025年7月)では「判断が分かれている」状態です。今後、税務総局等から詳しい案内が出るでしょう。
0%でいけるという立場:
EPEに直接提供しており、契約書・振込・投資ライセンス等が揃っていれば、旧来の運用を継続できるという考え。
一部の会計事務所や企業も、明確な否定がないため「0%維持」を選択しているケースがあります。
10%課税とすべきという立場:
政令181/2025/NĐ-CP 第17条2項bに「輸出生産を“直接”支援するサービス」と記載されており、
会計・税務などの「間接支援」は除外されると解釈する立場。「リスク回避のため保守的に10%で処理する」企業も増えています。
✅【実務アドバイス】
税務当局からの公式なガイドラインが出るまでは、契約金額が大きい場合や不安がある場合には、照会(インボイス送付前の確認)や10%での請求を検討しましょう。
実務対応チェックリスト
形式的なところもありますが以下のような確認が必要です。
項目 | チェック済? |
---|---|
提供サービスが「輸出製造を直接支援」しているか検討した | □ |
EPE内での提供かつ消費があるか確認した | □ |
契約・振込・ライセンスの3点セットを保管している | □ |
税率を見直して必要があれば10%で再請求した | □ |
担当者に変更内容を周知・研修した | □ |
法的根拠(引用付き)
旧法:
- Law No. 13/2008/QH12(付加価値税法)
- Circular 219/2013/TT-BTC 第9条
新法:
- Law No. 48/2024/QH15(改正VAT法)
- Decree 181/2025/NĐ-CP 第17条第2項
- Circular 69/2025/TT-BTC(実務ガイド)
まとめ:今できる“リスク最小化”の行動
- 「EPE向けだから0%」という思い込みは捨てる
- 提供内容を冷静にチェック
- 税率10%での発行を基本に、0%希望時は根拠と証憑を完備
この記事が、EPEとの取引を行う皆さんの不安解消と実務判断の一助になれば嬉しいです!
それではまた次回!
— すげのより ✍️