この記事のもくじ
なぜ今「駐在員事務所の法的枠組み」を知るべきか?
ベトナム市場への進出を検討する企業にとって、駐在員事務所(代表事務所)は、比較的手軽かつ低リスクで設置できる現地拠点として広く利用されています。しかし、その活動範囲は明確に制限されており、営業行為や請求、契約行為などを行うと行政処分の対象となります。
特に近年、違法行為への監視強化や、社会保険・労働法違反に対する摘発が増えており、正確な法的理解とコンプライアンス対応が求められます。
1. 駐在員事務所とは?支店・現地法人との違い
ベトナム企業法2020年第44条では、代表事務所を以下のように定義しています:
代表事務所は、企業の従属機関であり、企業の利益を委任に基づいて代表し、保護する役割を担う。
代表事務所は企業の事業機能を実行しない。
一方、支店は企業の事業機能を部分的または全面的に担えるとされ、営業活動が許可されています。
区分 | 法人格 | 営業行為 | 契約締結 | 税務申告 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
現地法人 | あり | 〇 | 〇 | 法人税・VATあり | 独立法人格 |
支店 | なし | 〇 | 〇(本社名義) | 法人税・VATあり | 本社の一部 |
駐在員事務所 | なし | × | △(委任あれば可) | 法人税・VATなし | 非営利限定 |
📚 出典:企業法第44条(Luật Doanh nghiệp 2020)
https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Thuong-mai/Luat-Doanh-nghiep-2020-449043.aspx
2. 法律上認められる活動内容(明確な条文根拠)
ベトナム商法2005年第17条・第18条によると、駐在員事務所が行えるのは以下の非営利目的の活動に限られます:
市場調査(nghiên cứu thị trường)
顧客・取引先との連絡(liên lạc)
親会社の契約の実施促進(但し契約締結は不可)
商業促進(販売は除く)
📚 出典:商法2005年第17条・18条(Luật Thương mại 2005)
https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Thuong-mai/Luat-Thuong-mai-2005-36-2005-QH11-5263.aspx
⚠️ 営業活動・売上発生行為は禁止
販売・請求・倉庫保管・請求書発行は一切認められません。
広告や展示会への出展も、「自ら主催すること」は禁止されており、親会社名義か委託業者経由での参加のみ可能です。
3. ベトナムにおける代表事務所の実務活動例
代表事務所が実際に行っている活動の例は以下。
- 📦 製造業(日系中小企業):工場とのやりとり、品質確認、納期調整(販売行為は不可)
- 📊 マーケティング・PR:市場調査レポートの作成、ローカル媒体への広告掲載(代理店経由)
- 🧾 渉外活動:業界団体・政府機関との定期的な連絡や協議(法令情報の取得目的)
たとえば、ある日系衣料品メーカーは、ホーチミン市に駐在員事務所を置き、委託工場の生産状況を常時監視していますが、契約・支払い・輸出はすべて日本本社で処理しています。
ここから有料記事になります。事例などを紹介したいと思います。