こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、2025年から本格運用が始まった「VNeIDレベル2」に関して、実際にベトナムで起きた詐欺や混乱、注意すべきリアルな事例をまとめてご紹介します。
VNeIDって聞くと「便利そう!」「これからのデジタル社会に必須!」と思う方も多いはず。実際、行政手続きや銀行、賃貸契約などがスムーズになる一方で、運用初期ならではのトラブルや注意点も出てきています。
信頼できるベトナム語報道をもとに、実際に起きたことだけを事実ベースでご紹介しますので、これから登録予定の方はぜひ参考にしてくださいね。
最初に表としてまとめます。
章 | カテゴリ | 概要 | 典型的な手口 | 主な影響 | 代表的な出典 |
---|---|---|---|---|---|
第1章 | 詐欺・金銭被害 | 偽警察や偽アプリによる詐欺で1億ドン超の被害。SNS投稿による情報悪用も複数報告。 | 偽アプリ/電話詐欺/SNS画像悪用/OTP詐取 | 銀行口座やSIM契約の乗っ取り、金銭被害 | tienphong.vn / vietnam.vn / dx.camau.gov.vn |
第2章 | 情報混乱・誤認 | 行政区画再編の影響で住所誤表示を利用した詐欺が発生。外国人向け制度案内の不備も業務混乱を招いた。 | 誤表示詐欺/制度説明の遅延/アプリ偽装 | 申請ミス・外国人企業活動の支障・誤判断 | soha.vn / vnexpress.net / congan.laichau.gov.vn |
第3章 | 制度不安・プライバシー | 国家によるデータ集中管理・監視への不安。市民・専門家から制度透明性への懸念が提起された。 | 権限不明瞭/民間関与への不信/情報漏洩懸念 | 制度不信・プライバシー喪失・市民の情報提供忌避 | vnexpress.net / lacduong.lamdong.dcs.vn |
この記事のもくじ
第1章:プライバシー侵害・フィッシング・なりすまし等による詐欺・金銭被害事例
偽アプリによる大規模詐欺(ハノイ市):
2024年9月、ハノイ市で警察官を名乗る人物が「VNeIDレベル2を有効化する」と称して偽のVNeIDアプリを提供し、市民女性にQRコード認証や銀行OTPコードの提供を求めました。その結果、この女性の銀行口座から約1億ドン(約10億ドンとの報道もあり)が不正送金される被害が発生しました。
警察当局は「電話やSNSで警察を名乗りアプリのインストールや個人情報の提供を求める者は詐欺であり、絶対に応じないように」と注意喚起しています。
個人情報のSNS流出と悪用:
2025年7月頃、VNeIDアプリで住所などの最新情報を更新した後、自身の電子身分証(CCCD)の画面を無加工でSNS投稿するユーザーが急増しました。
しかし画面には氏名・生年月日・住所・ID番号・発行日などあらゆる個人データがそのまま表示されており、専門家や当局は「この行為は重大な情報漏洩リスクを伴う」と警告していますvietnam.vn。
実際、悪意ある者が流出した情報を使い他人名義でのローン申請やSIMカード不正取得を行うケースが多発しており、個人データ流出が詐欺や財産被害に直結しかねない状況ですvietnam.vnvietnam.vn。
例えば警察当局によれば、SNS上に公開された市民のCCCD画像を使ってオンライン融資を騙し取ったり、他人名義の携帯契約を結んで高額通話料詐欺に悪用するといった事例も確認されています。
偽の警察電話と個人情報漏洩の懸念:
各地で「警察から」の不審電話が相次ぎ、VNeIDレベル2未登録者が標的にされていますdx.camau.gov.vn。
詐欺師は警察官を装い「レベル2未登録だと違法なので今すぐ手続きするように」などと脅し、偽のVNeID支援リンクに誘導したり、個人情報やOTPを聞き出そうとしますdx.camau.gov.vndx.camau.gov.vn。
実際に2024年末、カマウ省では高校生の女性が「保険情報をVNeIDに更新する必要がある」と騙され、個人番号と保険番号を伝えた直後にスマホを乗っ取られ、銀行口座の残高(約150万ドン)を全て盗まれる被害が起きました。dx.camau.gov.vn
またハノイ市では、詐欺電話の被害未遂に遭った市民から「犯人が自分の氏名・住所など詳細を把握していた」との証言もあり、住民データの漏洩への不安が広がっています。vnexpress.net
2章. アプリ偽装・誤情報による市民・外国人の混乱・被害事例
行政区画再編によるデータ誤表示と悪用
2024年後半から2025年前半にかけてベトナム国内で大規模な行政区画の統廃合が実施され、更新が完了するまでの間、VNeIDアプリ上の本籍地や住所情報に誤りが生じるケースが多数報告されましたsoha.vn。一部のユーザーは自分のVNeID情報に見慣れない地名が表示され戸惑いましたが、こうした混乱に乗じて**「情報を更新します」と警察を装う詐欺**が横行しましたsoha.vn。犯人は電話やSNSで連絡し、「VNeID登録情報(出身地・住所)が間違っているので修正が必要」と偽って個人の機密データやOTPコードを聞き出したり、不審なアプリをインストールさせようとしましたsoha.vn。当局は「住所変更などのデータ更新はシステムが自動で行うため、第三者からのリンクやアプリで更新作業を行う必要はない」と強調し、こうした手口への警戒を呼びかけていますsoha.vnsoha.vn。
外国人居住者への周知不備と業務影響(知識の差を利用した脅し!)
2025年7月から在留外国人にもVNeIDレベル2(電子身分証)の発行が制度上可能となりましたが、それ以前は具体的な手続き案内が整備されておらず、外国人ビジネス関係者の間で混乱が生じていましたvnexpress.net。
例えば2025年6月時点でホーチミン市の在留外国人社長は警察にVNeID発行を問い合わせましたが「内部指示待ちで未対応」と回答される状況でしたvnexpress.netvnexpress.net。
その一方で2025年7月1日以降は全ての行政手続ポータルがVNeID連携に一本化される予定だったため、外国人がVNeIDを取得できないままでは企業の税務・通関手続きが滞る恐れがあると指摘されましたvnexpress.netvnexpress.net。
実際、ある外資系企業は「もし期限までに外国人用VNeIDの発行が間に合わず既存アカウントが停止されたら、輸出入業務が一日でも止まり莫大な損失が出る」と不安を訴え、専門家も「VNeIDはベトナム人以外も含めた電子身分識別基盤へ発展すべきだ」と制度改善を求めましたvnexpress.net。
誤認やアプリ偽装によるトラブル
市民の中には公式のVNeIDアプリと偽アプリを誤認しインストールしてしまう例も報告されています。
2024年終盤には「アプリの見た目が本物と酷似していたため区別できなかった」との声もあり、偽アプリを入れてしまったユーザーのスマートフォンがマルウェアに感染する被害が起きました。また、誤った案内メッセージを真に受けて個人情報を送信してしまうケースも散見され、専門家は「VNeID関連の連絡は公的機関からの正式書面か対面手続きのみ」と周知する必要性を指摘しています。vnexpress.netdx.camau.gov.vn
3章:ベトナムによる監視・一元管理による自由・プライバシーへの懸念と専門家の指摘
国家による監視・統制への不安
VNeIDを含む電子身分証制度の拡大に対し、一部市民や活動家からは「国家が国民を監視・管理するツールになり得る」との懸念が提起されています。
例えば2024年11月には、独立系メディアが「新政令147号の施行で国民は金銭も自由も奪われかねない」と報じ、電子IDやSNS実名制の強化が言論の自由を締め付け、当局による個人情報閲覧の横行を招くと批判しました。この論評では「政令147は表現の自由に対する棺桶の釘だ。国民の財布ですら監視下に置かれる」「電子身分証制度は言論弾圧の手段になりうる。
当局が個人データに好き勝手アクセスし、国民の権利を侵害する恐れがある」等の指摘がなされています
さらに「SNSアカウントに実名IDを紐付ける方針は、政府が異論者を一網打尽にして沈黙させる準備ではないか」といった声も上がり、電子IDによる監視社会化への警戒感が示されています。
個人情報の集中管理と悪用リスク
国家による一元的な個人情報データベースへの不安も指摘されています。VNeIDを通じて市民のあらゆる身分情報や行政履歴が集約・連携されることから、「万一システムから情報が流出した場合の被害規模が計り知れない」「権限を持つ内部者によるデータ不正利用を防ぐ仕組みは十分か」といった議論が専門家の間で交わされています。実際に、市民からは「詐欺グループが自分の住所や職業など詳細を知っていた」という報告もあり、どこかから住民情報が漏れているのではないかとの疑念が広がっています。
法律の専門家は「中央集権的な個人データ管理は便利な反面、情報セキュリティとプライバシー保護の担保が不可欠だ」と指摘し、データ暗号化やアクセス監査の強化、違法提供への厳罰化など制度面の整備を訴えています(※出典なし、専門家コメントの一般論)。
市民からのプライバシー懸念の声
電子ID普及の現場でも市民のプライバシーを巡る不安が表面化しています。たとえば2023年には、ビントゥアン省ムイネー区の住民がVNeID登録会場に民間銀行の職員が同席し個人情報を収集していたことに反発し、「提供した個人データが売られてしまうのではないか」と懸念を表明しました。この訴えを受け、地元当局は直ちに銀行員の関与を中止させ「電子身分証の登録情報は警察機関が管理し第三者に漏洩しない」と住民に説明しています。市民側からは「今後、警察以外の組織が関与する場合には明確な権限ルールを示してほしい」との要望も出されており、電子ID制度に対する透明性確保と信頼醸成の必要性が指摘されています。
すぐにできる!VNeIDを安全に使うための7つのポイント
最後に、VNeIDを安全に使うための実践的な対策をまとめておきます:
- アプリは公式ストアからのみ入手(Google Play / App Store)
- パスコードや生体認証を必ず設定
- SMSやSNSで届いたリンクは開かない
- 画面スクショやQRは投稿しない
- スマホ紛失時は即時ロック機能を使用
- アクセス履歴や連携サービスを定期確認
- 不審な連絡は必ず公安署へ確認
まとめ
VNeIDレベル2は、これからのベトナム生活・ビジネスにおいて「持っていて当たり前」になる仕組みです。
ただし、それと同時に「どう使うか」「どう守るか」が問われる時代になっています。
このブログが、あなたの安心・安全なVNeID活用のヒントになれば嬉しいです!