こんにちは!マナラボの菅野です。
2025年7月29日――
社会保険の実務を担うすべての人にとって、ちょっとした転換点が訪れました。
それが今回解説する「決定2222/QĐ-BHXH」。
病気・出産・老齢・労災・失業など、社会保険の給付に関わるすべての手続きが、この1本の決定に再編成されたのです。
この記事のもくじ
💭 でもこんな声、聞こえてきませんか?
「条文が34もあるって聞いて、開く気がなくなった」
「改正っていうけど、何が変わったの?」
「どこを読めば、自分の業務に関係あるのかすら分からない…」
大丈夫です。
このブログでは、「すべてを読む」ことは求めません。
構造を知ることで、あなたに必要な“読むべき場所”が見えてくる。
それがこの記事の目的です。
この記事では、「決定2222/QĐ-BHXH」の章構成を整理し、各章がどんな給付に対応しているか、実務上どこに注目すべきかをわかりやすく解説していきます。
制度を味方につける第一歩は、「構造をつかむ」ことから。
それではいきましょう!
まず、そもそも決定2222/QĐ-BHXHとは?
正式名称は:
「社会保険給付、失業保険給付の決定および支払い手続きに関する規程」
📌 公布日:2025年7月29日
📌 発行主体:ベトナム社会保険機構(BHXH)
📌 施行日:同日より有効
この決定は、旧決定166/QĐ-BHXH(2019年)およびその改正文書(686号・1548号)を廃止し、
新たな社会保険給付のルールを1本にまとめた包括的手続き集です【2222号第2条より】。
この決定2222/QĐ-BHXHの全体構造をマップで確認!(条文付き)
章番号 | 章タイトル | 対象給付・内容 | 条文番号 |
---|---|---|---|
🟦 第1章 | 総則(Quy định chung) | 本決定の適用対象、基本原則、用語定義、電子処理の原則 | 第1条~第4条 |
🟦 第2章 | 病気・出産・健康回復給付(Chế độ ốm đau, thai sản, dưỡng sức) | C70a-HSB/C70b-HSB様式に基づく申請手続き、支給方法(口座振込・現金)、VssID通知など | 第5条~第6条 |
🟦 第3章 | 労働災害・職業病(TNLĐ, BNN) | 労災・職業病給付の申請~支給の流れ、06A〜06E-HSB様式、医療・企業との連携など | 第7条~第20条 |
🟦 第4章 | 老齢年金・遺族給付(Hưu trí, tử tuất) | 年金受給申請、死亡一時金、遺族年金など。国家データベース照合なども必須 | 第21条~第28条 |
🟦 第5章 | 失業保険(Bảo hiểm thất nghiệp) | 失業手当(BHTN)の支給リスト(27A, 27B)、受給継続・終了、C75-CBHなど | 第29条~第33条 |
🟦 第6章 | 実施体制と責任(Tổ chức thực hiện) | 各地方社会保険局・関係部門の役割、電子文書管理、内部監査等 | 第34条 |
補足:
- 全体で 6章・34条 の構成です。
- 様式(Mẫu)は条文中で言及されつつ、詳細は**付録(Phụ lục)**で整理されています。
- 決定2222では、従来のような「一括様式リスト章」は廃止され、必要な場所で都度様式番号が登場する方式に変わりました。
第1章:総則(第1〜4条)
ここでは、制度の「土台」が書かれています。
🔑 押さえるべきポイント:
- 電子処理原則(ポリシー管理システムを必須化)
- 社会保険番号による一元管理
- 給付処理と支払いの一貫性(正確・迅速・追跡可能)
📌 注目条文:第3条
給付リスト作成時には、社会保険番号と徴収データベースが完全一致している必要あり。
不整合があれば「収入管理部門」へ再送して調整【公式条文より】。
【深掘り!】第2章:病気・出産・療養給付(第5〜6条)
ここが実務に影響しそうなので少し多めに解説します。
この章の対象給付は?
第2章では、以下の3つの給付が対象です:
病気手当(Chế độ ốm đau)
→ 本人または子どもが病気で働けない場合出産手当(Chế độ thai sản)
→ 出産・流産・人工妊娠中絶・養子受入など健康回復給付(Chế độ dưỡng sức, phục hồi sức khoẻ)
→ 出産・病気後の回復期に支給される一時金
これらは「短期給付」と呼ばれ、社会保険に加入していれば条件を満たすことで受給可能です。
給付までの流れ:ざっくり5ステップ
ステップ | 内容 |
---|---|
① | 医療機関で診断書を取得(病気の場合)または出生証明などの書類を準備(出産) |
② | 勤務先に提出し、企業がC70a-HSBまたはC70b-HSB様式を作成 |
③ | 社会保険機関に申請書を提出(オンラインまたは対面) |
④ | 保険機関が審査し、**支給決定リスト(C12-TS)**を作成 |
⑤ | 給付金を本人の銀行口座へ振込、または雇用主を通じて現金支給 |
C70a-HSB・C70b-HSB様式ってなに?
様式(Mẫu)って聞くだけでアレルギー反応が出る…という方にこそ知ってほしい、重要な2つの様式がこちら👇
様式名 | 内容 | 使われる場面 |
---|---|---|
C70a-HSB | 銀行振込支払い用の給付リスト。各従業員の名前・個人番号・口座番号・支給額が記載されている。電子決済システム(KTTT)と連携される。 | 被保険者本人の口座に直接振り込む場合 |
C70b-HSB | 現金払い用の給付リスト。従業員がサインして受領確認を行う。主に雇用主経由での支給に使われる。 | 口座がない人や、特別な事情で現金支給が必要な場合 |
📌 両方とも電子署名付きで処理され、VssIDアプリで通知されます。
📌 社会保険機関が処理後、給付金が個人に「いつ」「いくら」支払われたかがリアルタイムで確認できる仕組みです。
実務ポイント①:支払方法の原則が変わった!
❗ 原則は「本人の銀行口座振込」
❗ 現金支給は例外的措置
つまり、労働者の口座情報を把握しておくことが重要。
従業員がVssIDアプリを入れておけば、「社会保険から振り込まれました!」という通知もすぐに届きます。
実務ポイント②:申請から何日で支給される?
- 決定2222では、社会保険機関の処理期間は最大5営業日(旧制度では6日)
- 実際の支給(振込)は、処理完了の数日後までに行われるのが一般的
事業主が社内での申請受付フローを明確にしておかないと、支給が遅れる原因にもなります。
「社内締切は月末5営業日前まで!」など、ルール作りが肝です。
実務ポイント③:「療養給付」って見落とされがち
出産・大病のあと、働ける状態に戻るまでに一定期間が必要だと判断された場合、
**健康回復給付(dưỡng sức)**という一時金が追加で支給されます。
これは「病気後の休養のための支援金」みたいなもので、日数は3〜10日分程度。
特に、産後の女性労働者が対象になるケースが多く、制度を知らずにもらいそびれている方も少なくありません。
よくあるであろうQ&A
こんな疑問が生まれるかもです。
Q1. 出産手当は夫にも出るの?
👉 はい。妻が出産した場合でも、社会保険に加入している夫に一時金が支給されるケースがあります。
具体的には、子ども1人につき出生手当が支給され、これは夫が受け取ることも可能です。
Q2. VssIDって入れないといけないの?
👉 義務ではありませんが、給付金の受け取り状況や処理結果の通知がすぐに届くので、実務上はかなり便利です。
会社が従業員に推奨するだけでもメリットあり。
Q3. 紙の申請書は完全になくなったの?
👉 「電子データが原則」とされていますが、医療機関などの都合で紙の診断書などが求められるケースもまだあります。
社会保険機関の運用状況に応じて併用されることがあります。
まとめ:第2章は“生活に一番近い制度”の説明書!
病気、出産、そして療養。どれも私たちの「働く」を支える、身近で大切な制度です。
制度を知らなければ損をする、でも、正しく理解していれば生活の安心に直結する――それがこの第2章です。
企業も労働者も、申請様式(C70a/C70b)や給付の流れをしっかり押さえて、制度を使いこなしていきましょう!
第3章:労災・職業病(第7〜20条)
旧制度では年金などと一緒くたにされていた労災・職業病が、今回から独立章として再編されています。
📌 特徴:
- 業務災害、通勤災害などのケース別に給付申請書類が明示
- 医療記録・労災証明の提出先や様式番号(例:06A〜06E-HSB)も細かく指定
- 審査結果によっては不支給処理もデータ上で返却される設計
この章は、企業の人事・安全衛生担当者にとって必読です。
第4章:老齢年金・遺族給付(第21〜28条)
🎯 主なトピック:
- 年金の算出基準と支給開始時期
- 死亡給付(một lần)と月次遺族年金の違い
- 戸籍・死亡証明等と社会保険記録の整合性が重要
旧決定ではこの辺りが曖昧でしたが、今回は国家データベースとの照合必須という形で明確になりました。
第5章:失業保険(第29〜33条)
ここは今回の改正で特に強化された章です!
従来、労働局で行っていた失業認定情報が、BHXHにもデジタルで連携されるようになり、
支払いのスピードが改善されることが期待されます。
🖥 使用様式:
- 27A-HSB, 27B-HSB:支払対象者のリスト
- C75-CBH:月次の失業者報告(新様式)
第6章:運用と責任(第34条)
最終章では、BHXH内部の責任分担が書かれています。
- 各部署(給付部門、会計部門、システム部門など)の対応フロー
- データアクセスログの管理と情報漏えい対策
- 書類の電子保存義務(紙保存からの脱却)
実務者のためのポイントまとめ
チェックポイント | 対応 |
---|---|
使用様式の確認 | C70a、27A、C75など、新番号に注意 |
銀行口座情報の整備 | 給付金は原則個人の口座に支給されるため、事前の口座登録が必要 |
VssIDアプリの活用 | 給付状況のリアルタイム確認が可能に |
書類の電子提出化 | 紙→電子への移行を社内体制で準備すること |
制度を“読む”ことは、現場の安心を“つくる”こと
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
この記事でご紹介したように、「決定2222/QĐ-BHXH」は、旧制度(166/QĐ-BHXHなど)を置き換える新しいスタンダードです。
34条という条文の中には、実務で必要な要素がぎっしり詰まっています。
要点をふりかえると:
- ✅ 6章構成で、給付種別ごとに条文が再整理された
- ✅ 様式(Mẫu)と支払方法が刷新された(C70a/C70b、VssIDなど)
- ✅ すべての章に共通するのは「電子化・迅速化・透明性」の原則
これからの社会保険実務は、「紙でのやりとり」から「データでのやりとり」へ。
でも、ルールの根っこが変わったわけではありません。
むしろ、**ルールを「誰でも使える形にした」**のが今回の決定です。
読むこと=使う準備です。
難しそうに見えても、一歩ずつ。
今日より明日の現場がスムーズに回るよう、私たちも学んでいきましょう!
それではまた別の記事で。
マナラボの菅野でした!