ラボの菅野です。
今日は『ベトナムにおける損金不算入について整理する』というテーマでお伝えしますね。
あなたがもしベトナムに進出しており「ベトナム税務リスク」が怖いというのであれば本日の内容がお役に立てます。
この記事のもくじ
96/2015/TT-BTCの4条に損金算入の項目が列挙されている
政令に損金算入のケースが列挙されています。
Circular 96/2015/TT-BTCの4条に定められています。具体的に言えば4条の2項です。これが37項目列挙されているんですね。
この4条の2項の37個の政令の内容は以下の通りです。かなりボリュームがあるので見なくても大丈夫です。
損金算入項目をまとめると以下のようになる!
上記で解説した通り37個が羅列されていると数が多くてわかりにくいですよね。なので以下のように7つのグルーピングするとスッキリすると思います!
- 法的書類や証拠の不備に関連する支出【5個】
- 給与・従業員に関連する支出【8個】
- 固定資産やリース資産に関連する支出【4個】
- 寄付や支援に関連する不適切な支出【6個】
- 融資利息・資金運用に関連する支出【3個】
- 管理費・運営費に関連する支出【4個】
- 税務および引当金に関連する支出【6個】
それぞれ解説してきます。
1:法的書類や証拠の不備に関連する支出【5個】
まずは「書類」に関連した理由で損金にならないケースですね。形式だと言っていいかもしれません。
- 2.1: 証拠書類や法的条件を満たさない支出
例: 会社が取引先に商品を購入したが、適切な領収書がないため、損金として認められない。 - 2.4: 領収書のない商品やサービスの購入費用
例: 小規模事業者から直接購入した商品で、正式な領収書が発行されなかった場合。 - 2.5: 個人からの資産リースで必要な書類がない場合
例: 会社が個人からオフィスを賃貸したが、リース契約や支払いの証拠が不足している場合。 - 2.15: 電気や水道費の支払いに関する証明書が不足している場合
例: 賃貸オフィスの水道光熱費をオーナーに直接支払ったが、支払い証明書が提供されなかった場合。 - 2.37: 法的に控除されない仕入税額控除や法人所得税関連の支出
例: 商品購入時に仕入税を控除しようとしたが、控除に必要な法的要件が満たされていなかった場合。
かならず「VATインボイス」を取得してくださいね!とチーフアカウンタントさんから言われたかもしれません。
2. 給与・従業員に関連する支出【8個】
続いては「人件費」に関連する損金不算入項目です。
- 2.6: 支払い証明がない従業員の給与やボーナスに関連する不正支出
例: 従業員にボーナスを支払ったが、給与明細や振込記録がない場合。 - 2.7: 従業員の制服に関連する支出
例: 従業員のために制服を購入したが、領収書が発行されなかった場合。 - 2.8: 評価基準のないアイデアや革新に対する報酬
例: 会社が従業員の革新提案に報酬を支払ったが、正式な評価プロセスが実施されていない場合。 - 2.9: 労働法に違反する従業員の休暇手当の支出
例: 従業員が無断欠勤したにもかかわらず、休暇手当が支払われた場合。 - 2.10: 女性従業員や少数民族に対する追加支払い
例: 女性従業員に対して、正当な理由なく通常の給与を超える支払いが行われた場合。 - 2.11: 任意年金や生命保険に関する過剰支払い
例: 従業員に対して会社が設定した上限を超える任意年金を支払った場合。 - 2.12: 解雇手当の支出
例: 解雇された従業員に支払うべき手当が、法定の金額を超えて支払われた場合。 - 2.16: 年次税申告後に支払われない賃金に関連する不正支出
例: 賃金として計上されていたが、実際には支払われていない賃金がある場合。
3. 固定資産やリース資産に関連する支出【4項目】
固定資産等に関する項目です。
- 2.2: 事業に使用されていない固定資産の減価償却費
例: 使用されていない倉庫の減価償却費が事業費用として計上された場合。 - 2.16: 年間予算を超えたリース資産に関連する支出
例: 会社が3年間のリース契約を一括支払いし、1年あたりの費用が許容額を超えた場合。 - 2.31: 投資段階のインフラ整備に関連する支出
例: 工場建設のために支出したが、その資産がまだ運用されていない場合。 - 2.33: 株式発行や資本増減に関連する支出
例: 企業が増資の際に発生したコンサルティング費用。
4. 寄付や支援に関連する不適切な支出【6項目】
続いて寄付金に関する項目です。
- 2.22: 教育への不正な寄付
例: 寄付金が適切な教育機関ではなく、別の組織に送られた場合。 - 2.23: 医療への不正な寄付
例: 寄付が医療施設の代わりに、別の個人に対して行われた場合。 - 2.24: 災害復旧への不正な寄付
例: 災害支援のための寄付金が、実際の災害被害者に届かなかった場合。 - 2.25: 貧困者や感謝の家の建設への不正な寄付
例: 貧困者のための住宅建設の寄付が、適切に証明されていない場合。 - 2.26: 国家プログラムに基づかない支援
例: 国家プログラムに指定されていない地域に対して寄付を行った場合。 - 2.32: 地方自治体への寄付、協会や社会団体への寄付、慈善支出(教育、医療、災害復旧、貧困者のための住宅建設、科学研究、政策受益者への寄付、国家プログラムに基づく特に困難な地域への寄付を除く)。
例: 寄付金
5. 融資利息・資金運用に関連する支出【3個】
続きまして融資利息等に関する支出です。
- 2.17: 法定金利を超える融資利息の支払い
例: 会社が市場の金利を超える高利率の融資を受け、その利息が控除対象とならない場合。 - 2.18: 資本金不足に対する融資利息の支払い
例: 企業の資本金が不足しているため、追加融資を受け、その利息が控除されない場合。 - 2.34: 鉱物採取権の支払いが超過している場合
例: 鉱業会社が鉱物採取権の支払いを行い、その額が許容範囲を超えている場合。
6.管理費・運営費に関連する支出【4個】
- 2.13: 管理費の不正支出
例: 経営陣が実際に提供されていないサービスに対して管理費を支払った場合。 - 2.14: 協会への過剰な拠出
例: 業界協会への寄付額が規定を超えた場合。 - 2.27: ベトナムにおける恒久的施設の管理費の超過支出
例: 海外企業がベトナムの恒久的施設の運営費として、過剰に資金を送った場合。 - 2.36: 交通違反や税法違反などの罰金支払い
例: 交通違反に対して支払われた罰金や税法違反に関連する費用。
実際にサービスしてないのに支払った金額などはだめですね。
7.税務および引当金に関連する支出【6個】
続いて引当金関係ですね。
- 2.19: 不適切な引当金の設定および使用
例: 会社が売掛金の不良債権引当金を過剰に設定した場合。 - 2.20: 使用されなかった定期引当費用
例: 固定資産の定期修理費用として引当金を設定したが、実際に修理が行われなかった場合。 - 2.3: 原材料やエネルギー消費における限度超過
例: 製造業で材料費やエネルギー消費が企業の内部基準を超えた場合。 - 2.28: 他の財源でカバーされた支出やゴルフ関連の支出
例: 会社がゴルフ会員権の購入に資金を費やし、それが事業関連費用として認められない場合。 - 2.29: カジノや宝くじ事業の報酬超過
例: カジノ事業で経営者に対する報酬が業界の基準を大幅に超えている場合。 - 2.30: 課税所得に対応しないその他の支出
例: 会社が収益に対して関連しない社内パーティー費用や贈答品を計上した場合。
まとめとして
本日は『ベトナムにおける法人税法上、損金にならないのはどんな項目?』というテーマでお伝えしました。
37項目あってこまかいけどまずは以下の2つに抽象化してください。
- 形式の要件を満たしているか?
- 活動が会社の活動に関連しているか?
です。その上で、以下にグルーピングするとわかりやすいのかなあと思いました。
- 法的書類や証拠の不備に関連する支出【5個】
- 給与・従業員に関連する支出【8個】
- 固定資産やリース資産に関連する支出【4個】
- 寄付や支援に関連する不適切な支出【6個】
- 融資利息・資金運用に関連する支出【3個】
- 管理費・運営費に関連する支出【4個】
- 税務および引当金に関連する支出【6個】
ただ、実務上よく論点になるのか?という視点は抜けているのでそれはM-LABのコーナーでお伝えしてきます。
でははた!