ラボの菅野です。

今日は『財務デューデリジェンス(Financial Due Diligence、以下財務DD)のオフバランス項目についてどう対応するか?』というテーマでお伝えしたいと思います。

財務DDは、M&Aや投資案件において企業の財務状況を詳細に分析するプロセスのことです。対象先の会社の決算書が正しくもれなく計上されているか?を確認することですね。

投資のリスクを最小化し、潜在的な課題を明確にするために行います。今日解説する特にオフバランス項目は、見逃せない重要な手続きだといえます。特にローカル企業を買収する場合には。

オフバランスと企業の事業活動上、必要な資産・負債でありながら、貸借対照表に記載されていないこと。これを評価するっていうんだから難易度は高いでしょう。

特に留意しないといけないのが「簿外負債」です。現在の貸借対照表を見てもわからないけど実は「債務」があって買収後にとんでもない金額のお金を払った!という事例はちらほら聞きます。

もう少し具体的に説明すると、この会社は1,000の価値があると思っていたのに実は見えない負債を1,200を抱えていた。といったケースです。この場合DDで1,200がわかっていれば本当の価値は-200(1,000-1,200)となり価値がマイナスの会社を買収してしまった!ということになるんですね。

いい喩えかはわかりませんが、たとえばあなたのパートナーが実は大きなギャンブルによる借金を抱えていたのにも関わらずそれを教えてもらえれなかった場合それは「オフバランス項目」となります。結婚してからそれがわかったら「ふざけんじゃねー!」となりますよね。

このようにオフバランス項目は、M&Aにおける企業価値の評価に大きな影響を与える可能性があります。。そのため、M&Aの際には、オフバランス項目をしっかりと把握し、評価することが求められます。

オフバランス項目を発見するためのDDの手続き

ではどのように簿外負債を発見するのでしょうか?こちらについてのチェックリストについて解説します。大きくは以下の3つにカテゴライズされるでしょう。

  • 【聞く】うまく聞く(交渉術が必要かも)
  • 【頼る】他の専門家を利用する
  • 【チェックする】既存の資料(監査報告書や内部資料)をチェックする

それぞれ解説します。

#1:うまく聞く(対象会社のマネジメントとのコミュニケーション)

対象会社の社長などの経営陣から聞く方法です。

  • [QAリスト]を活用し、網羅的な質問によって不透明なリスク要因を洗い出す。
  • マネジメントインタビュー質問書[QAリスト]の回答を通じて、オフバランス項目の存在や背景を確認する

個別事象を把握するための「QAリスト」については下記で詳細に解説します。対象会社のマネジメントは嘘をつくと大きな問題になることが通常である(買い手に嘘をついてはいけないでしょう)ため、質問書により「存在しません」などの回答を文書でもらっておくことは非常に大事です。

また以下でベトナムローカル会社でありがちな不正スキームについて解説しています。

>>M-Lab_ベトナム現地法人の小口現金を使った脱税の手口を解説

#2 専門家チームとの協力する

  • 法務DDチームとの連携を強化し、法的観点からもオフバランス項目の有無を確認する。
  • 必要に応じて、外部専門家の意見を取得し、リスクの定量化に役立てる。

簿外債務の典型例としては罰金が挙げられます。法律違反しているけれどまだ指摘されていないだけの状態の場合というのは結構あります。将来、査察などにより指摘された場合にいくらはらうか?を見込んでおくことが大事です。

#3 財務資料と内部情報の精査

  • 貸借対照表注記月次損益計算書分析によってオフバランス項目を発見する。
  • 稟議書や各種契約書の開示を通じて、オフバランス項目の兆候を確認する。
  • 取締役会や経営会議の議事録の開示を受け、重要なリスクや未公開の債務保証を精査する。

資料の閲覧により簿外取引を把握します。何らかの事実が発生している、意思決定したのにも関わらずそれが貸借対照表に反映されていいないことを確認します。

簿外取引算出たのめの「QAリスト」(個別)の内容

こちらについての概要も解説します。以下のように整理できます。

  1. 法的リスク
  2. 契約リスク
  3. 製品(サービス)リスク
  4. 事業運営リスク
  5. 金融リスク

簿外取引の発見のパターンを整理すればこの5つに分類されるでしょう。

  • 法的リスク:法的手続きや行政による措置、債務保証のような保証行為など、企業に対して訴訟やペナルティが発生する可能性のあるリスク。
  • 契約リスク:不利な契約条件やコントロール変更条項など、契約に基づいて企業に負担が発生する可能性のあるリスク。
  • 製品(サービス)リスク:製品やサービスに関連するリコールや環境問題など、製品品質やコンプライアンスに関連したリスク。
  • 事業運営リスク:事業再編やリストラクチャリングなど、企業の事業運営に影響を及ぼすリスク。事業運営に伴う将来の資産撤去や処理費用。
  • 金融リスク:これは、金融商品のリスク管理や市場変動リスクが主な懸念。

その上で個別事項をQAリストとして準備します。概要は以下の通り。

項目

チェック項目チェック
法的リスク
訴訟(または損害賠償請求)◻︎
クレーム◻︎
当局による行政処分・罰金◻︎
債務保証及び保証類似行為◻︎
契約リスク
長期契約(不利な契約)◻︎
チェンジ・オブ・コントロール条項◻︎
リース取引◻︎
金融リスクデリバティブ取引◻︎
製品リスク
リコール◻︎
環境問題◻︎
事業運営リスク
事業のリストラクチャリング◻︎
資産除去債務◻︎
投資家の個人口座からの支出請求リスク◻︎

なお、マナラボ(弊社のお客様がログインできるページ)では上記についての詳細な解説をしています! こちらからご覧ください。

>>M-Lab_簿外取引を認識するための質問リスト、13個にしぼった!【オフバランス項目のチェック方法】