ベトナムでの労働契約の終了に関して、特に日本企業の駐在員や人事担当者は、退職通知と退職願の違いを理解することが重要です。本記事では、2019年ベトナム労働法第35条に基づく退職手続きについて詳しく解説し、労働者の権利や注意すべきポイントを説明します。
退職通知と退職願について
退職通知とは?
2019年労働法第35条第1項に基づき、労働者は規定の事前通知期間を守れば、いつでも労働契約を終了する権利があります。これが「退職通知」と呼ばれるものです。事前通知期間は以下のように設定されています:
- 期間の定めのない労働契約:少なくとも45日前
- 12ヶ月から36ヶ月の労働契約:少なくとも30日前
- 12ヶ月未満の労働契約:少なくとも3営業日前
退職願とは?
労働者(あなたの会社のメンバー)が規定の通知期間よりも早く退職したい場合、雇用者(会社側)と合意する必要があります。この場合、「退職通知」は「退職願」となります。つまり、労働者が自主的に退職を申し出て、雇用者の承認を得る形です。後述でマニュアル等を解説しますね。
第35条 労働者の労働契約の解約の権利 1.労働者は労働契約の解約の権利を有するが,以下のように使用者に事前通知をしなければならない。 a) 無期限労働契約に従って働いている場合は少なくとも45日; b) 12か月から36か月までの有期限労働契約に従って働いている場合は少なくとも30日; c) d) 12か月未満の有期限労働契約に従って働いている場合は少なくとも3営業日; 特殊な業種,分野,業務については,事前通知期間は政府の規定に従って実施する
引用元:ベトナム労働法
事前通知なしで退職できる場合
ただ以下の場合は「事前通知」なしで退職できちゃいます。会社がひどい場合ですね。
2019年労働法第35条第2項では、特定の状況において労働者が事前通知なしで退職する権利を認めています。以下がその具体例です:
労働条件が守られない場合
合意された仕事や勤務地が提供されない場合、労働者は通知なしで退職する権利があります。給与の未払い・遅延
労働者が給与の全額を受け取れない、または支払いが遅延した場合、通知なしで退職できます。虐待や強制労働がある場合
労働者が虐待や強制労働を受けた場合、直ちに退職する権利があります。セクシャルハラスメント
労働者が職場でセクシャルハラスメントを受けた場合、即時退職が可能です。妊娠中の労働者の退職
妊娠中の女性労働者は健康上の理由で退職を要求する場合、通知なしで退職できます。定年退職
労働者が定年退職年齢に達した場合、特別な合意がない限り通知なしで退職できます。雇用者による虚偽情報の提供
雇用者が不正確な情報を提供した場合、労働者は通知なしで退職する権利があります。
退職願の基本構成と雛形、そして記入ガイダンス
ベトナムでの退職願の提出は、適切な手続きを踏むことが重要です。ここでは、退職願の書き方や記入方法、具体的なマニュアルを提供します。また、Mana Labでは退職願のテンプレート(ワード)もダウンロードできるようにしています。
退職願の構造のイメージ
[1] 労働契約番号
あなたが会社と結んだ労働契約の番号を記入してください。この番号は労働契約書に記載されています。
[2] 会社の正式名称
現在働いている会社の正式な名前を記入してください。省略形や略称は使わず、正式な名称を書いてください。
[3] 会社の正式名称(再度記入)
もう一度、会社の正式な名前を記入します。書き間違いがないように確認してください。
[4] 氏名
あなたのフルネームを記入します。パスポートやIDカードと一致させてください。
[5] 生年月日
あなたの生年月日を記入してください。(例:1990年1月1日)
[6] 職位情報
あなたが所属している部署やチーム名、現在の職位を記入してください。(例:営業部/マネージャー)
[7] 会社名
再度、会社の正式な名称を記入してください。これは提出先に会社名を明確に示すためのものです。
[8] 退職日
あなたが希望する退職日を記入してください。ただし、2019年の労働法第35条に従い、以下の事前通知期間が必要です:
- 無期限の労働契約:退職希望日の45日前までに通知。
- 12〜36ヶ月の契約:退職希望日の30日前までに通知。
- 12ヶ月未満の契約:退職希望日の3営業日前までに通知。
- 特定の業種・職種の場合:政令145/2020/NĐ-CP第7条の規定に従い、特別な通知期間が適用される場合があります。
早めの退職希望
もし上記の期間より早く退職したい場合は、雇用者と合意が必要です。この場合、退職通知書ではなく、退職願として提出することになります。
[9] 退職理由
退職理由を簡潔に記入してください。(例:キャリアアップのため、家族の都合、健康上の理由など)