ラボの菅野です。
あなたの会社がベトナム投資していてその子会社から配当をもらうこともあるでしょう。その場合の日本の税務についてしりたいとお声をよく頂きます。M&Aが注目されていますし、本社への資金環流にも影響してきます。
この配当金の95%を非課税(益金不算入)にできる制度があるのをご存じですか?
今回は、 「なぜ95%が非課税になるのか」 、 「どんな条件を満たす必要があるのか」 を分かりやすく解説します!
外国の子会社から受け取る配当金にはほぼ税金がかからない
これが結論です。
この非課税制度は、日本の企業が海外で得た利益を日本に持ち帰りやすくするためにあるみたいな理解でも大丈夫です。海外で稼いだ利益が日本で課税されると、「二重課税」になってしまい、日本企業の競争力が低下する恐れがあります。
なぜ「二重課税」になるのか?
そのため、 一定の条件を満たす配当金については、95%を非課税(益金不算入)にすることで負担を軽減する仕組み が導入されています。
「益金不算入」という言葉は少し難しそうに聞こえるけど、実はとても簡単な仕組みです。大丈夫です!
会社が稼いだお金(利益)のことを税務上は「益金」って言います。そして「益金不算入」はその稼いだお金の一部を、税金を計算するときになかったことにできるルールのことです。会計上は利益だけど税務上は利益(益金)じゃないから税金もかかりません。
たとえば、外国で稼いで、その国で税金を払ったとします。残ったのが純利益。例えば80。 この純利益に対してもし日本でもその100万円に税金がかかったら、同じお金に2回税金を払うことになっちゃいます。それだと困るから、日本ではそのうち95万円は「税金を計算するときに入れなくていいよ」っていうルールにしました。これを「益金不算入」と言います。
この仕組みのおかげで、海外でがんばって稼いだお金を日本に持って帰りやすくなりますよね。簡単に言うと、「同じお金に2回税金を払わなくていいようにするためのルール」と言えます。
この制度を利用するための主な条件とは?
① 出資比率が25%以上
日本法人が外国子会社の 発行済株式の25%以上 を保有していることが必要です。
② 6カ月以上の保有期間
配当金が支払われる前に、 6カ月以上継続してその株式を保有 している必要があります。
ある程度の比率を保有していて期間も長ければいいよということでしょう。
制度の仕組み:具体例で解説すると
例えば、以下のケースを考えてみましょう。
- 日本法人 A社 が ベトナムの子会社 B社 を所有。
- B社から日本のA社へ 1,000万円の配当金 が支払われた。(ベトナムでの源泉税は発生しない)
この場合、日本法人 A社はこの1,000万円のうち 950万円(=1,000万円×95%)を非課税(益金不算入う) とできます。残りの 50万円 だけが課税対象となります。
仮に実効税率を30%とすると15万円が税金です。1,000万円のうち15万円が税金なので実質は1.5%が税金ですね。
なお、配当につき外国(中国とかなど)で課された源泉税は日本での税額控除になりません。
「なぜ95%なのか、100%ではいけないのか」という疑問がありますよね。 二重課税防止ならすべて益金不算入にすべきでしょう。
これには日本の税制がバランスを取るためにこの数字を採用しているという理由があるようです。もし外国子会社からの配当金が100%非課税になると、海外で稼いだ利益が日本国内でまったく課税されず、日本の税収に全く貢献しないことになってしまいます。そのため、最低限の税負担として5%を課税対象に残す仕組みが採用されています。この5%部分には、配当金の受け取りや管理にかかる事務的コストをカバーする役割もあります。また、国際的な税制ルールにおいても完全非課税(100%)ではなく、一部を課税対象にすることで税の公平性を保つことが推奨されています。このように、95%非課税という仕組みは、二重課税を防ぎつつ、日本国内での最低限の税負担を確保するために設定された合理的な数字なのです。
まとめ
この 「外国子会社からの配当金の95%を非課税にする制度」 は、日本法人にとって非常に魅力的な仕組みです。海外で事業を拡大する企業が安心して現地利益を日本に還流できるよう、税負担を減らす効果があります。
例えば日本から出資するのか?ベトナムにある子会社からベトナムに出資させるのか?の場合で悩んだ時、この配当にも異なる点が生じてきます。なので比較する必要があります。
ただし、適用には条件や注意点があるため、制度をしっかり理解した上で活用しましょう!