ベトナムに進出する企業にとって、法人所得税の計算は経営コストを抑えるために非常に重要なテーマです。その中でも、従業員福祉費用は損金算入が可能な項目であるので大事です。
適切に処理することで、税負担を軽減しながら従業員の満足度やモチベーション向上にも繋げることができます。
本記事では、ベトナム税務ガイドラインに基づき、損金算入が可能な従業員福祉費用の8項目に焦点を当てて解説します。ただ、税法が変わったらそれは要注意です。
具体例を交えながら、どのような費用が控除対象となるかを明確にし、ベトナムでの税務処理に役立つ情報をお届けします。
また、損金算入の仕組みや税務対策に関する詳細な解説は、以下の記事をご参照ください!
>>“損金不算入”ってなんだ?わかりやすく解説 ベトナムにおける典型例とは?
この記事のもくじ
損金算入が可能な従業員福祉費用8項目とは?
以下は、通達78/2014/TT-BTC第6条第2項2.31ポイント(通達96/2015/TT-BTC第4条および通達25/2018/TT-BTC第3条第4項により改正・補足)に基づき、以下の福祉費用が法人所得税計算時に控除可能です!グループ分けするとわかりやすいので以下のように整理してみます。
個人または家族への直接的な支援
- 従業員およびその家族の葬儀・結婚費用
- 自然災害、戦争、事故、病気の影響を受けた従業員家族への支援費用
- 学業成績優秀な従業員の子どもへの奨励費用
従業員の能力開発や業務環境の向上
- 研修施設での追加学習支援費用
- 従業員の休日旅行費用
従業員全体の福利厚生や保険制度の充実
- 休暇および治療支援費用
- 従業員向けの事故保険、健康保険、その他の任意保険費用
(※生命保険および任意退職保険は対象外) - その他の福祉費用
それぞれ解説していきます。
個人または家族への直接的な支援 3つ
このカテゴリーは、従業員やその家族の生活を直接的にサポートする費用を対象としています。企業が従業員の生活を支えることで、働きやすい環境を提供し、従業員の満足度や定着率を向上させる効果があります。
従業員およびその家族の葬儀・結婚費用
- 概要:従業員またはその家族が葬儀や結婚といった人生の大きなイベントを迎える際の支援金や補助金。
- 具体例:親族の葬儀費用に対する見舞金、従業員本人の結婚祝い金。
会社によっては結婚祝い金などを支給している会社もあるでしょう。
自然災害、戦争、事故、病気の影響を受けた従業員家族への支援費用
- 概要:災害や事故、病気などの緊急事態に直面した従業員やその家族への支援。
- 具体例:洪水で被災した従業員の家族への緊急支援金、重大な病気に対する治療補助。
学業成績優秀な従業員の子どもへの奨励費用
- 概要:従業員の子どもの教育を奨励するための奨学金や祝い金。
- 具体例:学業で優れた成績を収めた従業員の子どもへの表彰金や学費補助。
ベトナム従業員の能力開発や業務環境の向上 2つ
このカテゴリーは、従業員のスキルアップや働きやすい環境を整えるための費用を対象としています。これにより、企業の競争力向上やチームの生産性向上が期待されます。
研修施設での追加学習支援費用
- 概要:従業員が専門的なスキルや知識を習得するための研修費用や学費補助。
- 具体例:語学研修費用、業務に関連する資格取得のための学費支援。
従業員の休日旅行費用
- 概要:従業員がリフレッシュできるように、休日の旅行やレクリエーションを支援する費用。
- 具体例:旅行の費用。
従業員全体の福利厚生や保険制度の充実、3つ
このカテゴリーは、従業員全体を対象に、安心して働ける環境を提供するための費用を対象としています。企業の持続可能な成長を支える基盤となります。
休暇および治療支援費用
- 概要:従業員が休暇を取得する際や治療が必要な場合の費用補助。
- 具体例:入院時の見舞金、産休中の補助金。
従業員向けの事故保険、健康保険、その他の任意保険費用
- 概要:従業員の健康と安全を守るための保険費用。ただし、生命保険や任意退職保険は対象外。
- 具体例:健康診断費用、医療保険料、業務災害保険料。
その他の福祉費用
- 概要:上記に該当しないが、従業員福祉のために使われる費用。
- 具体例:社内カフェの運営費用、従業員のための福利施設の維持費。この辺りは曖昧なので詳細は専門家に確認する
上記8項目における費用についての注意点
以下の留意点はあります。
上記の福祉費用の総額は、企業の税年度における1か月の実際の平均給与を超えてはなりません。
1か月の実際の平均給与額は、年間の給与基金を12か月で割った金額で計算されます。企業が12か月未満の期間のみ営業している場合は、実際の運営月数で割ります。金額が大きすぎたら行けないということですね。
実施された給与基金は、その決算年度に実際に支払われた給与総額を指し、前年度の給与準備金からの支出は含まれません。
付加価値税の取り扱いは?仮払い税金として資産計上できるか?
結論から申し上げます。
企業が従業員福祉費用として支出した金額が控除条件を満たし、かつその合計が1か月分の平均給与を超えない場合、その金額にかかるVATも控除可能(仮払い税金として資産計上し借受税金から控除できる)とされています。
付加価値税(VAT)の控除条件
通達219/2013/TT-BTC第14条第1項(通達26/2015/TT-BTC第1条第9項bポイントで改正)では、VAT対象商品の生産および販売に使用される商品の仕入VATは全額控除可能とされています。この趣旨からすれば上記のように解するのが合理的でしょう。
公式文書4005/TCT-CSおよび関連規定に基づき、従業員福祉費用の控除可能性について以下の条件が定められています:
控除可能および控除不可の費用
控除可能な費用は、通達78/2014/TT-BTC第6条第1項(通達96/2015/TT-BTC第4条で改正および補足)に記載されており、次の条件を満たす場合、企業は全額控除(仮払税金)を受けることができます。
- 実際に発生した費用であり、企業の生産および事業活動に関連していること。
- 法令に基づく適切な請求書および証拠書類があること。
- 1回あたりの購入価格(VATを含む)が2,000万VND以上の場合、非現金支払いの証拠書類があること。非現金支払いの証拠書類は、VATに関する法令の規定に基づいて作成されます。
まとめ
従業員福祉費用は、企業が従業員の満足度や働きやすい環境を提供しつつ、税務上の負担を軽減する重要な手段です。2024年のベトナム法人所得税規定に基づき、葬儀・結婚費用や研修費用、健康保険など、控除可能な8項目を適切に活用することで、企業のコスト最適化が可能です。
特に、損金算入やVAT控除の条件として、法令で定められた証拠書類や支出額の上限を守ることが重要です。従業員福祉を適切に管理し、企業の成長と従業員満足度向上を両立させるために、これらの費用を最大限に活用しましょう。詳細な税務対策については、専門家に相談することをお勧めします!
マナボックスは専門家集団ですので、このようなことで疑問があればどうぞ問い合わせしてください。