ベトナムでは、労働者の生活を保障するために「強制社会保険(Compulsory Social Insurance)」と「任意社会保険(Voluntary Social Insurance)」の2種類の社会保険制度が存在します。これらの保険制度は、加入対象者や給付内容、支払方法が異なります。
日本でいうと「社会保険」と「国民健康保険」みたいなもんです。
「私はどの社会保険に加入すればいいのか?」「日本からベトナム人に外注しているけどその人から社会保険についての質問があった!」と悩む方も多いでしょう。本記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、あなたに合った社会保険の選び方を紹介します。
この記事のもくじ
ベトナム強制社会保険について
強制社会保険の概要
強制社会保険は、雇用契約を結ぶ労働者が必ず加入しなければならない社会保険制度です。
法的根拠:
- ベトナム社会保険法2014(第3条) に基づく。
- 労働契約を結ぶすべての労働者と雇用者が加入義務を負う。
強制司会保険の加入対象者
以下の労働者が対象となります。まあみなさんの会社の従業員です。
- 労働契約を結んでいる従業員(1か月以上の契約)
- 公務員、幹部、職員
- 人民軍・警察の職員、専門兵士
- 海外派遣労働者
- 企業の経営者(給与を受ける場合)
- ベトナム国内で働く外国人(労働許可証保持者)
給付内容
強制社会保険には5つの給付モードがあります。
- 疾病給付(病気時の給与補填)
- 産休給付(出産・育児休暇補償)
- 労働災害・職業病給付(業務中の事故・病気補償)
- 老齢年金(退職後の生活保障)
- 死亡給付(遺族への支援金)
保険料の負担
ざっくりですが以下のようになります。
- 労働者:給与の9%を拠出
- 雇用者:給与の18.5%を拠出
任意社会保険とは?
任意社会保険の概要
任意社会保険は、強制社会保険の対象外の人が自由に加入できる社会保険制度です。
法的根拠:
- ベトナム社会保険法2014(第3条) に基づく。
- 政府が保険料の一部を補助する制度がある。
任意社会保険の加入対象者
フリーランサーなどは日系企業でも該当あるかもしれませんね。
- 15歳以上のベトナム国籍者(強制社会保険の対象外の人)
- 自営業者、農業従事者、フリーランサー など
任意社会保険の給付内容
任意社会保険には2つの給付モードしかありません。
- 老齢年金(退職後の生活保障)
- 死亡給付(遺族への支援金)
保険料の負担
- 加入者本人が全額負担(所得の22%)
- 政府の補助あり(10〜30%)(貧困層:30%、貧困に近い層:25%、その他:10%)
強制社会保険と任意社会保険の違い(比較表)
まとますね。
比較基準 | 強制社会保険 | 任意社会保険 |
加入対象者 | 労働契約を結ぶ労働者、公務員、外国人労働者 | 15歳以上のベトナム国籍者(自営業者、農業従事者、フリーランサーなど) |
保険料の負担者 | 雇用者と労働者の双方 | 加入者本人のみ |
政府の支援 | なし | 低所得者層に対する支援あり(10〜30%) |
保険料の算定基準 | 労働者の月給を基準 | 加入者の選択した所得を基準 |
給付内容 | 疾病、産休、労災、老齢年金、死亡給付 | 老齢年金、死亡給付 |
支払い方法 | 毎月支払い | 毎月、3か月、6か月、12か月、一括払いも可 |
年金受給条件 | 20年以上の加入+定年年齢 | 20年以上の加入+定年年齢 |
最低加入年数 | 20年以上 | 20年以上(不足分は一括払いで補填可) |
支払い責任 | 雇用者と労働者が負担 | 加入者本人が負担 |
適用法令 | ベトナム社会保険法2014 | ベトナム社会保険法2014 + 政令134/2015/ND-CP |
違いが一目瞭然です。
強制社会保険や任意社会保険どちらに加入すべきか?
✅ 強制社会保険がおすすめの人
- 企業や政府機関で働く労働者
- 雇用主が保険料を一部負担する環境で働いている人
- 疾病・産休・労災の保障を受けたい人
✅ 任意社会保険がおすすめの人
- 自営業者、フリーランサー、農業従事者
- 企業に雇用されていないが老後の年金を確保したい人
- 政府の補助を受けながら社会保険に加入したい人
このようになります!