ベトナムで外国人が働く場合、基本的には労働許可証(Work Permit)が必要です。しかし、一定の条件を満たせば、労働許可証が免除されるケースがあります。

例えば、非居住者の法定代表者(日本の社長がベトナムの法的代表者をするときなど)

細かいところでいうと「えっ、免除されるなら手続き不要?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
免除でも「認定申請」が必要なケースと、「報告のみ」で済むケースがあるんです!あとは実務上どうなっているのか?というのも。ベトナムでは法律と実務が違う場合がけっこう!あります。

今回は、労働許可証免除のケースを分かりやすく解説し、どのケースで何が必要かを表で整理しました。
「申請が必要なのか?それとも報告のみでいいのか?」をしっかりチェックしましょう!

ベトナムで労働許可証って何?なぜ必要なの?

ベトナムでは、外国人が90日以上働く場合、**労働許可証(Work Permit)**が必要になります。
これは、外国人労働者の適正な雇用を保証するための制度で、取得には以下のような書類が必要です:

  • 雇用契約書
  • 健康診断書
  • 学歴・職歴証明
  • 犯罪経歴証明書 など

「えっ、取得するの大変そう…」と思った方、安心してください!
一定の条件を満たせば、労働許可証が免除されるケースがあります。

なお以下のリンクも参照してくださいませ。

>>徹底解説!ベトナムのビザ・ワークパーミット(労働許可証)とTRCの取得の流れ【まとめ記事】

 

労働許可証が免除されるケース(政令152/2020/ND-CP 第7条)

では、どんな場合に労働許可証(WP)が免除されるのでしょうか?
ベトナムの労働許可証免除に関するルールは、「政令152/2020/ND-CP」の第7条に明記されています。

🔹 労働許可証が免除されるケース(抜粋)

第7条(政令152/2020/ND-CP)
以下の外国人労働者は、労働許可証の発行対象外となる。

  1. 有限責任会社の所有者または出資者(3億VND以上)
  2. 株式会社の取締役会会長または取締役会メンバー(3億VND以上)
  3. WTOの11分野における企業内転勤者(ビジネス、通信、建設など)
  4. ODAプロジェクトに従事する専門家・技術者
  5. 外務省の許可を受けた報道関係者
  6. 国際学校で教育・研究を行う外国政府派遣者
  7. ボランティア活動者
  8. 30日未満の短期就労(1年3回まで)
  9. 政府間協定を実施する者
  10. 外国の教育機関と契約したインターン生
  11. 外国公館の職員の家族
  12. 公務旅券を持ち政府機関で勤務する者
  13. 商業拠点を設立する責任者
  14. 教育訓練省が認定した教育・研究目的の者

「これだけ免除されるケースがあるなら、手続き不要でそのまま働けるんじゃ?」と思った方、実はここに落とし穴があります!

なお14個もあるので以下のリンクで考えかたを整理しています。

>>ベトナムの労働許可証の免除 の19項目を5つに整理しました。

次に、「免除の認定申請」が必要なケースと「報告のみでOK」なケースの違いを解説します。

「労働許可証免除の認定」が必要なケース vs. 「報告のみ」でOKなケース(政令152/2020/ND-CP 第7条)

第8条(政令152/2020/ND-CP)
労働許可証の免除が認められる場合でも、以下の2つの手続きが必要となる。

  1. 「労働許可証免除の認定申請」が必要なケース(就業開始の10営業日前までに申請)
  2. 「報告のみでOK」なケース(就業開始の3日前までに報告)

この違いを表で整理しました!👇

7条の該当項目

免除の理由

労働許可証免除の認定
1有限責任会社の所有者・出資者(3億VND以上)申請が必要
2株式会社の取締役会会長・メンバー(3億VND以上)申請が必要
3WTOの11分野における企業内転勤者報告のみ
4ODAプロジェクトに従事する専門家・技術者報告のみ
5外務省の許可を受けた報道関係者申請が必要
6国際学校で教育・研究を行う者報告のみ
7ボランティア活動者申請が必要
830日未満の短期就労(1年3回まで)報告のみ
9政府間協定を実施する者報告のみ
10外国の教育機関と契約したインターン生申請が必要
11外国公館の職員の家族報告のみ
12公務旅券を持ち政府機関で勤務する者申請が必要
13商業拠点を設立する責任者申請が必要
14教育訓練省が認定した教育・研究目的の者申請が必要

よく質問があるのは8項ですね。ベトナム法人の社長が本社の社長などの場合、ベトナムに滞在する期間が極端に短いケースもあります。年に2週間程度とか。

あとは奥様がベトナム人の場合とかです。これは労働法に記載されいています。

これは、2019年労働法(Labor Code 2019)第154条第8項 に規定されています。

第154条(2019年労働法)
外国人労働者がベトナムで働く場合、以下のケースでは労働許可証の発行対象外となる。
8. ベトナム人と結婚し、ベトナムに居住している外国人。

実際の条文も見てみましょう。

実際の法律を見てみよう!

第2条 労働許可証が免除される外国人労働者

第7条 労働許可証が免除される外国人労働者

労働法第154条第3項、第4項、第5項、第6項、第7項、第8項のケースを除き、以下の条件に該当する外国人労働者は、労働許可証が免除されます。

  1. 有限責任会社の所有者または出資者であり、出資額が少なくとも3億VND(約1,500万円)以上である者。
  2. 株式会社の取締役会会長または取締役会のメンバーであり、出資額が少なくとも3億VND以上である者。
  3. ベトナムとWTOとの教育サービス協定に基づく11の分野(ビジネスサービス、通信サービス、建設サービス、流通サービス、環境サービス、金融サービス、医療サービス、観光サービス、娯楽・文化サービス、運輸サービス)における企業内転勤者。
  4. ベトナムに入国し、公式開発援助(ODA)を利用したプログラム・プロジェクトの研究、企画、評価、監督、管理、実施を目的として、専門的または技術的コンサルティングを提供する者。
  5. 外務省からベトナムでの報道・ジャーナリズム活動の許可を受けた者。
  6. 外国政府や組織によってベトナムに派遣され、外国公館または国際連合の管理下にある国際学校、またはベトナムが締結した協定に基づいて設立された施設で教職または研究を行う者。
  7. 本政令第3条第2項に規定されるボランティア活動を行う者。
  8. ベトナムに入国し、管理者、経営者、専門家、技術者として30日未満の短期間で勤務し、かつ1年間で最大3回までの入国である者。
  9. ベトナムの中央または地方政府機関が締結した国際協定を実施するために入国する者。
  10. 外国の学校または研修機関に在籍し、ベトナムの企業・組織とインターンシップ契約を結んでいる学生、またはベトナムの船舶で研修を受ける者。
  11. 本政令第2条第1項(l)に規定されるベトナム駐在外国代表機関のメンバーの親族。
  12. 公務旅券を取得し、政府機関、政治組織、社会政治組織で勤務する者。
  13. 商業的な拠点の設立を担当する者。
  14. ベトナム教育訓練省から、教育および研究目的でベトナムに入国することを認定された者。

第8条 労働許可証免除の認定手続き

  1. 労働・傷病兵・社会省(MOLISA)または地方の労働・傷病兵・社会局(DOLISA)が、労働許可証免除の認定を行う権限を有する。

  2. 雇用者(企業等)は、外国人労働者が就労を開始する少なくとも10営業日前までに、外国人労働者が労働許可証の免除対象であることの認定を、労働・傷病兵・社会省または該当する省の労働・傷病兵・社会局へ申請しなければならない。

ただし、以下のケースについては、労働許可証免除の認定申請は不要だが、少なくとも就労開始の3日前までに、労働・傷病兵・社会省または省の労働・傷病兵・社会局へ以下の情報を報告する必要がある。

  • 労働法第154条第4項、第6項、第8項のケース
  • 本政令第7条第1項、第2項、第8項、第11項のケース

報告すべき情報:

  • 氏名
  • 年齢
  • 国籍
  • パスポート番号
  • 雇用者名(企業名)
  • 就業開始日および終了予定日

労働許可証免除の認定証の有効期間は最長2年であり、以下の規定に従う。

  • 労働許可証免除の再発行を申請する場合も、有効期間は最長2年。

3. 労働許可証免除申請に必要な書類

労働許可証免除を申請する場合、以下の書類を提出する必要がある。

a) 労働許可証免除認定申請書(様式No.09/PLI、附属書I)
b) 健康診断書(本政令第9条第2項に基づく)。
c) 外国人労働者の雇用計画の承認書(ただし、外国人雇用計画が不要な場合は省略可)。
d) 有効なパスポートの認証済みコピー。
e) 労働許可証免除対象であることを証明する書類。
f) 上記b, c, eの書類については、原本または認証済みコピーを1通提出すること。

外国語で作成された書類については、次の手続きを行う必要がある:

  • 領事認証を受ける。
  • ベトナム語に翻訳する。
  • 公証を受ける。

ただし、ベトナムと当該外国の間で領事認証が免除される国際条約が存在する場合や、相互主義の原則に基づく場合は、領事認証が不要となる。


4. 労働許可証免除の認定処理期間

完全な書類が提出されてから5営業日以内に、労働・傷病兵・社会省(MOLISA)または地方の労働・傷病兵・社会局(DOLISA)が労働許可証免除の認定書(様式No.10/PLI、附属書I)を発行する。

申請が拒否された場合は、拒否理由を記載した文書が発行される。

労働許可証免除の認定手続きと報告

手続きについては以下のようにまとめました。

政令152/2020/ND-CPの8条にまとめられています。

項目

労働許可証免除の認定が必要な場合

報告のみでOKな場合
対象者– 有限責任会社の所有者・出資者(3億VND以上)
– 株式会社の取締役会会長・メンバー(3億VND以上)
– 外務省の許可を受けた報道関係者
– ボランティア活動者
– 外国の教育機関と契約したインターン生
– 公務旅券を持ち政府機関で勤務する者
– 商業拠点を設立する責任者
– 教育訓練省が認定した教育・研究目的の者
– WTOの11分野における企業内転勤者
– ODAプロジェクトに従事する専門家・技術者
– 国際学校で教育・研究を行う者
– 30日未満の短期就労(1年3回まで)
– 政府間協定を実施する者
– 外国公館の職員の家族
手続き内容労働許可証免除の認定申請(MOLISAまたはDOLISAへ申請)
労働・傷病兵・社会省(MOLISA)または地方の労働・傷病兵・社会局(DOLISA)に報告
手続き期限就業開始の 10営業日前までに申請
就業開始の 3日前までに報告
必要書類– 労働許可証免除の認定申請書(Form No. 09/PLI)
– 健康診断書
– 雇用計画承認書(必要な場合)
– パスポートの認証コピー
– 免除を証明する書類
– 外国語の書類はベトナム語に翻訳・公証
– 氏名
– 年齢
– 国籍
– パスポート番号
– 雇用者(企業名)
– 就業開始日・終了予定日
処理期間申請から5営業日以内に認定証発行(却下された場合は理由通知)

このようになります。この「報告」ですが実務上はしてないケースも結構あるんじゃないかなと思います。

まとめ:手続きを間違えないために!

  • 労働許可証免除=完全に手続き不要ではない!
  • 「認定申請」が必要なケースと、「報告のみ」でOKなケースがある。
  • 申請が必要な場合は、就業開始の10営業日前までに手続き!
  • 報告のみでOKな場合も、就業開始3日前までに通知を忘れずに!

ベトナムで外国人として働くなら、「自分のケースが免除対象か?」を正しく確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。
「この場合はどうなるの?」という疑問があれば、ぜひ専門家に相談してみてください!