マナラボの菅野です。
今日のテーマは『政令29/2021/ND-CPに基づく投資監督・評価報告制度の実務ガイド(日系企業向け)』です。
ベトナムで建設や設備投資などのプロジェクトを実施したあと、
「すべて完成したから、あとは営業するだけ!」と思っていませんか?
実は、プロジェクトが終わったら“報告”を出すルールがあるんです。
これは、たとえ国家予算を使わないプロジェクト(民間資金・外国投資など)であっても同じです。
その根拠となるのが、政令29/2021/ND-CPというベトナム政府の法令です。なお、この詳細通達については以下を参照。
>>🇻🇳【完全解説】通達05/2023/TT-BKHĐTの構造と報告様式【日系企業に大きく影響するのは?】
この記事のもくじ
この政令ってなに?どんなことが書いてあるの?
政令29号(2021年3月発行)は、ベトナム国内で実施される投資プロジェクトの監督・評価のルールをまとめたものです。
そのなかで、報告に関するルールがまとめられているのが、第100条です。
国家資金以外のプロジェクトである日系企業も報告が必要(第100条 第8項)
政令29号の第100条 第8項には、次のように書かれています。
「外国投資や自社資金などのその他の資金を使ったプロジェクトについても、地方の投資登録機関と監督担当機関に、以下の報告を提出しなければならない:
a) 半年ごとおよび年次の定期報告
b) プロジェクト調整前の報告
c) プロジェクトが完了したときの報告(必要がある場合)」
つまり、日系企業で
- 例えば工場や施設を作って投資が終わったら
- 変更や調整をする前に
- 毎年や半年に1回のタイミングで
プロジェクトの進捗や達成状況を報告しないといけないということです。なお、このプロジェクトの意味を深く理解するには以下も参照してください。
>>ベトナムの投資登録証明書(IRC)をどこよりも詳しく徹底解説!【保存版】
なぜ、作成して提出する必要があるの?
投資家が提出した投資監督・評価」の内容は、地方DPI(計画投資局)や関連部門が実施する監督・評価の対象となります。
📘 政令29/2021/ND-CP 第71条によれば、投資登録機関は以下の項目について監督を行います:
- 報告書の提出状況(期限・内容)
- プロジェクトの進捗・運用状況
- 土地・環境・天然資源の利用に関する遵守状況
- 問題発生時の対応・是正の実施状況
- 必要に応じた上位機関への報告・指導措置
つまり、「投資監督・評価」の内容が“今後の行政評価や対応の土台”になることを意味します。
提出した内容がそのまま使われるため、正確かつ丁寧な記載が求められます
どこに出すの?どうやって?
報告は、次の2か所に提出します。
- 投資登録機関(通常は地方のDPI:計画投資局)
- 地方の監督評価機関(DPIの監督評価部門など)
提出の方法は、NIIS(国家投資情報システム)というオンラインシステムを使うのが一般的です。
「投資家は、その他資金(FDI、自社資金など)を使用するプロジェクトについて、
投資登録機関および当該地方の投資監督・評価を実施する中核機関に報告書を提出すること。」**政令29/2021/ND-CP 第100条第8項(その他資金によるプロジェクトに関して)
じゃあ、出さなかったらどうなるの?
報告を出さなかったり、ウソの内容を提出すると、罰金が科されることもあります。
これは政令122/2021/ND-CP 第10条で決められていて、
- 出すのが遅れた、内容が足りない → 2,000万~3,000万VNDの罰金
- 出していない、内容がウソ → 3,000万~5,000万VNDの罰金
というルールになっています。
>>【完全解説】政令122/2021/ND-CPの構造一覧|違反分類・条文マップで読み解く行政制裁の全体像
まとめ|提出することが、信頼の第一歩
「投資監督・評価」は、投資の完了を記録し、行政に報告するための“最終レポート”です。
計画どおりに終えられたか、何が課題だったかを整理し、将来の優遇措置や行政支援にもつながります。
「投資が終わったら、報告が始まる」――
お役にたてれば幸いです。