「ベトナムでインターンを受け入れたいけど、何をどう準備したらいいの?」「給料って払うべき?」「保険って必要?

そんな悩み、あなたの会社でもよくありますよね。

でも実は、“インターン”という言葉には、法律上のはっきりした定義はないんです。
だからこそ、「これは大丈夫」と思っていたことが、あとで労働法違反や保険の未加入などのトラブルになることもあります。

この記事では、ベトナムの法律に基づいて、インターン契約の考え方や注意点をやさしく説明していきます。
難しい用語も、できるだけわかりやすく紹介するのでご安心を!

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「インターン契約」って何?見習い契約とどう違うの?

よく「インターン契約」や「見習い契約(アプレンティス契約)」という言葉を耳にしますよね。でも、ベトナムの法律では、こういった言葉に明確な定義はありません。

法律で正式に出てくる契約の種類は、以下のとおりです(2019年労働法より):

  • 労働契約(第13条)
  • 試用契約(第24条)
  • 見習い契約(第61条)
  • 職業訓練契約(第62条)

また、仕事ではなく「サービスの提供」を目的とした契約は、2015年民法に基づくサービス契約(業務委託契約)で結ぶこともあります。いわゆる「外注」です。

>>【ベトナム雛形】委任契約、業務委託契約【 No. 08 – LĐTL】

🌟 大事なのは“契約の名前”じゃなくて“中身”!で判断だ!

たとえば、契約書のタイトルが「インターン契約」や「見習い契約」だったとしても、内容にこんな特徴があれば、それは法律上“労働契約”として扱われるんです。

【2019年労働法 第13条 第1項(第2文)】

“Trường hợp hai bên thỏa thuận bằng tên gọi khác nhưng có nội dung thể hiện việc làm có trả công, có sự quản lý, điều hành, giám sát của một bên thì được coi là hợp đồng lao động.”

👉 **訳:**契約の名前が違っていても、

  • お金がもらえる(報酬がある)
  • 会社の人が指示・管理する
    という内容なら、それは「労働契約」と見なされる、という意味です。

インターンの契約、3つのスタイル

では、実際にインターンを受け入れるとき、どんな契約を結べばよいのでしょうか?
主に使われるのは、次の3つのパターンでしょう。

パターン① インターンシップ合意書(教育支援型)

これは、学校の紹介で学生を受け入れる場合に使われます。目的は「教育支援」であり、企業の利益のための労働ではありません。

  • お給料:基本的に不要(交通費や昼食代などの支援金はOK)
  • 保険:加入義務なし
  • 契約:大学・学生と合意のうえで作成(労働契約ではない)

【2019年教育法 第93条 第1項 a】

“Cơ quan, tổ chức, cá nhân có trách nhiệm hỗ trợ, phối hợp với nhà trường tổ chức hoạt động giáo dục, nghiên cứu khoa học; tạo điều kiện cho người học được tham quan, thực tập, nghiên cứu khoa học…”

👉 **訳:**会社や団体は、学校と協力して、学生に実習や見学の機会をつくる責任がある。

💡ポイント:「給与」「業務命令」などの言葉は使わず、「支援金」「体験」「指導」などやさしい表現を選ぶと安心です。

パターン② 職業訓練契約(将来の採用を見据えた型)

インターンのあとに、正式に社員として採用したい場合に使われる契約です。

  • 期間:最長3か月(法律で決まっている)
  • 給料:ありでもなしでも可(でも、働く内容によっては報酬の支払いが必要)
  • 保険:必要な場合あり
  • 特徴:条件を満たせば企業に採用義務が生じる可能性あり

【2019年労働法 第61条 第2項】

“Doanh nghiệp… có thể tuyển người vào học nghề để làm việc cho mình sau khi học nghề.”

👉 **訳:**企業は、将来自社で働いてもらうために、職業訓練として人を受け入れられる。

パターン③ 労働契約(働いてお金をもらう型)

勤務時間も決まっていて、業務の成果を出し、報酬も受け取っている場合、これはもう労働契約です。

  • 給与:必須(最低賃金以上)ここがポイント!
  • 保険:社会保険・健康保険・失業保険すべて加入が必要
  • 契約:短期契約でも法的に労働契約として扱われる

これは、もはや「インターン」というより「アルバイト」や「契約社員」と同じです。

なぜ「給与」という言葉を避けるべきなのか?

ここで「給与」という文言について考えたいと思います。

ベトナムの労働法(2019年労働法)第13条第1項では、以下のように定められています:

「労働契約とは、労働者と使用者との間で、報酬を得る労働、賃金、労働条件、各当事者の権利および義務についての合意である。契約の名称が異なっていても、その内容が報酬を得る労働、賃金、管理、運営、監督を含む場合、それは労働契約とみなされる。」

つまり、契約書や報告書に「給与」という言葉が含まれていると、その契約が労働契約と解釈される可能性があります。労働契約とみなされると、

  • 企業は社会保険
  • 個人所得税の支払い義務
  • 最低賃金の規定を守っていない疑念

が生じ、インターンシップの本来の教育目的から逸脱してしまう恐れがあります。

適切な表現の例

インターンシップにおける報酬や支援を表現する際は、以下のような言葉を使用することが推奨されます。まあ手当が多いと思います。

  • 「実習支援金」
  • 「交通費補助」
  • 「食費手当」
  • 「教育支援金」

これらの表現を使用することで、インターンシップが教育目的であることを明確にし、労働契約と誤解されるリスクを減らすことができます。

お金を払うときの税金の話(PIT)

学生に手当や報酬を支払うときには、「個人所得税(PIT)」が関係してきます。基本的に、1回の支払いが200万VND以上で、契約がない or 3か月未満なら、10%の税金を源泉徴収する必要があります。

でも、学生の年間所得が1320万VND以下であれば、税金を免除できる制度があります。

【通達111/2013/TT-BTC 第25条 第1項 i】

“Khấu trừ 10%… Tuy nhiên, nếu cá nhân có tổng thu nhập chưa đến mức phải nộp thuế… thì có thể làm bản cam kết (mẫu 08/CK-TNCN)…”

👉 **訳:**税金がかかる金額に届かない場合、学生は「Form 08/CK-TNCN」で申告すれば、税金を引かれずに手当をもらえます。

Form 08/CK-TNCNがあれば「源泉徴収」をしなくてもいいです。これも結構やっている会社は多いですね。

社会保険にはいつ入らないといけないの?

保険の加入が必要かどうかは、「契約の内容」と「期間」で決まります。

【2014年社会保険法 第2条 第1項 a】

“Người làm việc theo hợp đồng lao động… từ đủ 01 tháng trở lên… thuộc đối tượng tham gia bảo hiểm xã hội bắt buộc.”

👉 **訳:**1か月以上の労働契約を結んでいる人は、社会保険に必ず加入しなければなりません。

インターンシップ合意書のように教育目的で短期間の場合は、保険の加入は必要ありません。ここはちょっと深堀します。なぜ社会保険の加入が必要ないと解されるのか?

2014年社会保険法 第2条(強制加入の対象者)

【第2条 第1項】

“Người lao động là công dân Việt Nam thuộc đối tượng tham gia bảo hiểm xã hội bắt buộc, bao gồm:
a) Người làm việc theo hợp đồng lao động không xác định thời hạn, hợp đồng lao động xác định thời hạn, hợp đồng lao động theo mùa vụ hoặc theo một công việc nhất định có thời hạn từ đủ 01 tháng trở lên.”

👉 **訳:**ベトナム国民で、1か月以上の労働契約を結んで働く者は、強制的に社会保険に加入しなければならない。

つまり、社会保険の加入が必要になるのは、「労働契約を結んでいる労働者」です。

2. インターンシップ合意書が「労働契約ではない」ことが前提

「インターンシップ合意書」は、あくまで**民法上の“協力・教育支援に関する合意”**であり、労働法上の「労働契約」ではないと解釈されています。この立場は、2019年教育法 第93条にも基づいています。

【教育法 第93条 第1項 a】Law No.: 43/2019/QH14

“Cơ quan, tổ chức, cá nhân có trách nhiệm… tạo điều kiện cho người học được thực tập…”

👉 教育機関と協力し、学生に実習の機会を与えることは「社会的責任」であり、雇用ではない。

したがって、「雇用関係がない」=「労働契約ではない」=「社会保険法の対象外」と解釈されるのです。

実務上の整理

条件社会保険の加入義務
労働契約を締結している(1か月以上)必要(法第2条)
インターンシップ合意書のみ(教育目的・短期)不要(労働者ではないため)

このようになります。実務上もインターンについては社会保険に加入していませんね。

実務では、労働・傷病保険局(BHXH)や労働局(DoLISA)も「教育目的のインターンに保険加入義務なし」と案内しているケースが多いと聞くこともあります。

ただし、実態が「指揮命令あり、フルタイム勤務、報酬あり」となれば、労働契約と判断されて保険加入義務が発生するため、注意が必要です。

福利厚生や支援ってしないとダメ?

お弁当代や交通費、学習用の資料などの支援は、法律で義務ではありません。でも、学生にとって学びやすい環境をつくることは、企業の社会的信頼にもつながりますよ。

弊社でもこのような福利厚生は支給することがあります。

【2012年高等教育法 第12条 第6項(2018年改正)】

“Khuyến khích… doanh nghiệp tiếp nhận và tạo điều kiện cho người học… thực tập…”

👉 **訳:**企業が学生の実習を支援することを、法律として“奨励”しています。

インターン契約のパターン比較表(ベトナム法に基づく)とまとめ

表で比較してみましょう。しっくりくると思います。

項目インターンシップ合意書(教育支援型)職業訓練契約(採用前提型)
労働契約(実質雇用型)
法的根拠教育法 2019年 第93条労働法 2019年 第61条、職業教育法 2014年 第39条
労働法 2019年 第13条
契約の目的教育支援・職場体験採用を見据えた研修
実務としての労働
契約の名称(例)

Internship Agreement/Hợp đồng thực tập sinh

Hợp đồng đào tạo nghề
Hợp đồng lao động
契約期間の制限特になし(自由)最長3か月まで自由に設定可能
報酬の取り扱い支援金や交通費など(給与ではない)支給可能だが任意
最低賃金以上の給与が必要
仕事の指示・管理の有無基本的にはなし(指導・体験中心)あり(研修計画に基づく)
あり(業務命令あり)
社会保険(BHXH)基本、不要条件により必要な場合あり
原則として必須(1か月以上の契約)
健康保険(BHYT)不要通常は不要必須
失業保険(BHTN)不要通常は不要必須
個人所得税(PIT)原則不要(Form 08 提出で免除可)支給額によって必要源泉徴収が必要
企業側の雇用義務なし条件を満たせば雇用義務あり
すでに雇用関係がある
企業側の注意点教育支援であることを明確にし、「給与」などの文言は避ける採用条件・研修内容を明確に
労働法を完全に適用する

なるほどって感じですよね。

インターンの受け入れは、企業にとって将来の人材と出会える貴重な機会であり、学生にとっても実践的な学びの場です。しかし、契約の種類や内容によっては、給与・保険・税務などの法的義務が発生する場合があります。大切なのは契約の「名前」ではなく「実態」です。教育支援なのか、労働なのかをしっかり見極め、適切な契約と表現でトラブルのない受け入れを行いましょう。信頼は、正しい理解と準備から始まります。