こんにちは!マナラボの菅野です
今日は、輸出加工企業(EPE)から国内企業が機械や金型を借りたりリースしたりするときの“通関書類”と“税務リスク”について、わかりやすく解説します!
さて、こんなケース、実務でもよくありますよね。
「日本本社がベトナムのEPEに投資していて、別のベトナム国内企業がEPEから設備を借りて加工補助を行う」
「EPEの設備を使って一部の工程だけ国内企業が担うような、協力体制を組みたい」
一見すると、「ただの貸し借り」で済みそうですが……
実はこれ、通関の世界では『一時輸出・一時輸入』というれっきとした税関管理対象の行為になります。
そして怖いのはここから。
税金(VATや輸入税)がかかるかどうかが、ケースによってまるで違うんです。
たとえば…
- **「ちゃんと再輸出」すればVATが非課税
- 「使いっぱなし」だと輸入税&VATがドーンと課税
- 「設備が壊れて返せません!」→法律上の証明がないと税金対象に**
など、知らなかったでは済まされないルールがいっぱい。
今回ベースにするのは、税関総局が2023年1月17日付で発行した公式文書「300/TCHQ-GSQL」。
この中では、通関書類の具体的なリストやどんなときに税金が発生するかなど、実務担当者にとってめちゃくちゃ大事なことが整理されています。
ちなみに法律的な根拠としては、以下の条文が絡んできます。
- 付加価値税法第5条第20項:「一時輸入・再輸出される貨物はVAT課税対象外」
- 政令134/2016/ND-CP 第10条第1項c:「加工契約に基づく機械・設備の輸入は輸入税免除」
- 政令59/2018/ND-CP 第1条第12項:「使用目的が変更された場合、新たな輸入税・VAT申告が必要」
本記事では、「税金がかかる・かからないの分かれ道」や「必要な通関書類って何?」を、
EPEとの協力体制を考えるすべての国内企業さんに向けて、分かりやすく&実務的に解説していきます。
次の章では、さっそく税関総局の公文書300号の中身を、かみくだいて見ていきましょう!
この記事のもくじ
公文書300/TCHQ-GSQL(2023年)の概要|この文書、なにが書いてあるの?
さてさて、前章で触れた税関総局の公文書「300/TCHQ-GSQL」。
これは2023年1月17日付で発行された、全国の税関に対しての“公式な指導文書”です。
発行元はどこ?
ベトナムの**税関総局(General Department of Customs)**です。つまり「ベトナム全土の税関がこの内容に従って判断してくださいね」という位置づけ。
どんな内容?
ズバリ言うと、
「EPE(輸出加工企業)から国内企業へ機械・設備・金型を貸したり借りたりする場合、通関や税金はこうやって処理しなさい!」
という、とっても実務に直結する中身なんです。具体的には、次の2つのケースに分けて書かれています。
ケース①:EPEの輸出加工活動に使うための貸与・借用
たとえば:
- EPEの生産ラインの一部を国内企業が担う
- 加工契約の一環として、設備を一時的に貸し出す
こんな場合は、一時輸出・一時輸入という形式で処理します。
🔹 輸出加工企業(EPE)→ 一時輸出
🔹 国内企業 → 一時輸入(Temporary Import)
そして、契約終了後には:
🔹 国内企業 → 再輸出(Re-export)
🔹 EPE → 再輸入(Re-import)
このフロー、すごく重要です!
ケース②:EPEの本来の目的と関係ない商業的貸与
たとえば:
- 設備が余ったから国内企業に貸す
- 加工や生産と無関係な貸し出し(単なる有償リース)
こうなると話が変わってきます。
▶ 使用目的を「変更」したうえで、新たに通関申告が必要
▶ 税金(輸入税・VAT)はすべて通常通り、満額支払い
この違い、知らずに処理を進めると後から税務トラブルに発展するリスクがあります。
どんな条文に基づいているの?
この公文書は、以下のようなベトナムの法令群を根拠にしています:
- 付加価値税法 第5条第20項
- 輸出入税法 第2条・第16条・第19条
- 政令134/2016/ND-CP 第10条(輸入税免除の条件)
- 政令59/2018/ND-CP 第12条・第23条(使用目的変更の取り扱い)
- 通達60/2019/TT-BTC 第1条第9項(課税価格の算定)
- 通達38/2015/TT-BTC、39/2018/TT-BTC(通関手続の実務)
これだけ多くの法律を前提にしているということは、かなり慎重に運用すべき分野だということがわかりますよね。
📝 まとめると…
項目 | 内容 |
---|---|
文書番号 | 300/TCHQ-GSQL |
発行日 | 2023年1月17日 |
発行機関 | 税関総局(General Department of Customs) |
対象 | 国内企業とEPE間の設備貸与・借用 |
ポイント | 通関手続・税金取扱いがケースごとに異なるため、明確な区分が必要 |
次の章では、実際に国内企業が借りる側となったときに必要な「通関書類の中身」を、ケース別に徹底解説していきます!
EPEと何かしらの取り引きがある企業さんは、ここからが実務の要ですよ〜!
【ケース別】通関書類と必要な手続き|あなたのケース、どっちですか?
ここからは実務編。**「実際にEPEから機械を借りるときに、どんな書類が必要なのか?」**を、ケース別に解説していきます!
ポイントはただひとつ:
目的が“輸出加工支援”か、“それ以外”かで、通関も税金もガラッと変わります!
ケース①|EPEの輸出加工活動の一部として、設備を国内企業が使う場合
たとえば:
- 加工契約があって、その支援として設備を貸す
- 投資登録証(IRC)や関連書類に「国内協力企業との連携」等の目的が書かれている
この場合は、「一時輸出・一時輸入」スキームが適用されます。
📌 手続きの流れ(ざっくり)
ベトナム国内企業が準備すべき通関書類(借りる側)
税関総局の公文書「300/TCHQ-GSQL」(2023年)および政令08/2015/ND-CP 第50条、第25条第5項、改正政令59/2018/ND-CP 第12項を根拠に、以下の書類が必要とされています:
書類名 | 内容・備考 |
---|---|
✅ 税関申告書(Customs Declaration) | 財務省発行の様式に基づく正式な輸入申告書 |
✅ 輸送書類(B/LやAWBなど) | 海上・航空・鉄道輸送を行う場合は1部提出 |
✅ 技術検査証明や輸入許可書(該当する場合) | 特定設備に対して必要。専門機関の証明書や許可証 |
📚 根拠:政令08/2015/ND-CP 第50条、政令59/2018/ND-CP 第23項
📌 注意点
- 設備はEPEが正式に一時輸出申告してから出荷される必要があります。
- 国内企業側も、一時輸入として登録した書類の保管が必須です。
- 契約終了時は、期限内に再輸出しないと課税対象になる恐れがあります(詳細は後述)。
ケース②|EPEの加工活動とは関係ない目的で、国内企業に貸し出す場合
たとえば:
- 単純に余った設備を貸しているだけ
- 貸出先で製品化して国内販売している
- IRCにも関連する記述がない
この場合、使用目的の変更申請が必須になります。
📌 手続きの流れ
📚 根拠:政令59/2018/ND-CP 第1条第12項、および公文書300/TCHQ-GSQL 第2項
📄 このケースで必要な書類
書類名 | 内容・備考 |
---|---|
✅ 税関申告書(新規輸入扱い) | 一時輸入ではなく「通常輸入」として再申告 |
✅ 契約書類(リース契約など) | 使用目的を明確にするための証拠資料 |
✅ 税金納付証明書 | 輸入税およびVATを納付したことの証明 |
この場合は、再輸出の義務はなくなりますが、その代わり税金がしっかり発生します。
まとめ:あなたの設備貸借はどっちのケース?
項目 | ケース①:輸出加工支援 | ケース②:その他目的 |
---|---|---|
主目的 | 加工・生産の一部委託 | 商用レンタルなど |
書類種別 | 一時輸出・一時輸入申告 | 使用目的変更+正式輸入申告 |
VAT | 非課税(再輸出前提) | 課税対象 |
輸入税 | 発生(還付不可)or 免除(加工契約あり) | 発生(全額納付) |
次章では、こうした通関手続きと**セットで考えるべき「税務処理」**について、VATや輸入税の違い、注意点をわかりやすく解説していきます!
税務上の取扱い:VAT・輸入税のポイント|課税される?されない?その境目とは
こんにちは、マナラボの菅野です。
設備の貸し借りで忘れちゃいけないのが、「税金」の話。通関手続きとセットで、税務の処理を間違えるとあとで高い“授業料”を払うことになりかねません…!
今回は、VAT(付加価値税)と輸入税の2つに絞って、ポイントを徹底整理していきます!
ケース①:EPEの輸出加工活動の一部として設備を貸し出す場合
これは「一時輸出・一時輸入(Temporary Export / Import)」のパターンですね。
✅ VAT(付加価値税)
かかりません!
なぜなら、一時輸入・再輸出される貨物は「非課税」扱いだからです。
🔹 根拠:付加価値税法 第5条 第20項
「一時的に輸入して再輸出される財・サービスは、VAT課税対象外とする」
✅ 輸入税(Import Duty)
基本的にはかかります。ただし例外もあり!
国内企業が設備を借りた時点で、一時輸入税の申告・納税義務が発生します。
そして、たとえ後で再輸出しても、納めた輸入税は還付されません。
🔹 根拠:税関総局 公文書300/TCHQ-GSQL(2023年)1.2.a)より
ただし、以下の条件を満たすと、輸入税の免除対象になります:
- 加工契約がある(=EPEから業務を委託されている)
- その契約に基づいて設備を輸入している
この場合は…
🔹 根拠:政令134/2016/ND-CP 第10条 第1項 c)
「加工契約に基づいて輸入される機械・設備は、輸入税を免除する」
ケース②:EPEの加工目的と関係ない設備貸与
こちらは「ただ貸してるだけ」「他の業務に使っている」パターン。
❌ VAT(付加価値税)
かかります!
この場合は再輸出しないため、一時輸入ではなく正式な「国内流通」扱いになります。
そのため、輸入時にVAT(通常10%)が課税されます。
さらに…
使用目的を変更した時点で
「輸入税+VAT」の再申告&納付が必要になります。
🔹 根拠:政令59/2018/ND-CP 第1条 第12項
❌ 輸入税
もちろん、輸入税も全額支払う必要があります。
加えてこの場合、加工契約の免除特例も適用されません。
📌 例外的な取扱い|機械が壊れた・再輸出できなかった場合
「返却しようと思ったけど、壊れてて戻せません…」
このとき、法律的にはどうなるか?
正式に「破損・廃棄手続き」が完了していれば、VATはかかりません。
ただしその廃棄は、法令に基づく認定が必要です(勝手に処分するとNG)。
🔹 根拠:税関総局 公文書300/TCHQ-GSQL(2023年)1.2.b)より
🔍 まとめ:税金の有無は“目的”と“手続き”次第!
パターン | VAT | 輸入税 | 備考 |
---|---|---|---|
一時輸入・再輸出(加工契約あり) | 非課税 | 免除可(政令134) | 加工契約要件あり |
一時輸入・再輸出(加工契約なし) | 非課税 | 発生 | 還付なし |
使用目的を変更(国内使用) | 課税対象(10%) | 発生 | 正式な目的変更申請が必要 |
機器が破損・廃棄された | 非課税 | 処理状況に応じて対応 | 廃棄証明が必要 |
よくある質問(FAQ)|実務で迷いやすいポイントをすっきり解決!
ここまで「通関書類」や「税金の扱い」をたっぷり解説してきましたが、実務でやっぱり迷うのは、
「こういうときってどうすればいいの…?」
という具体的なシチュエーションですよね。
というわけで今回は、現場からよく寄せられる質問をQ&A形式で整理してみました!
❓Q1:借用期間が終わっても機械を返さなかったら、どうなる?
▶ 使用目的変更の申告が必要です。
契約期間が過ぎたのに再輸出されなければ、それは「一時輸入」から「恒久使用」へと目的が変わったことになります。
この場合、政令59/2018/ND-CP第1条第12項に基づき:
新たに輸入税とVATの納付が必要!
さらに、税関申告もやり直しになるので、うっかり放置しないように注意!
❓Q2:加工契約がある場合、設備を輸入しても輸入税がかからないって本当?
▶ はい、本当です(ただし条件あり)!
政令134/2016/ND-CP 第10条第1項cによると:
加工契約に基づく機械・設備の輸入は、輸入税が免除されます。
ただしそのためには:
- 加工契約書の写し
- 加工目的が明記された投資登録証(IRC)などの裏付け書類
がきちんと整っている必要があります。
「言ってるだけ」では通りませんので要注意です。
❓Q3:借りてた機械が壊れてしまい、返せなくなったらどうすれば?
▶ 正規の“廃棄手続き”を行えば、VATは課税されません。
これは税関総局公文書300/TCHQ-GSQLの中でも明記されています。
「使用中に破損して再輸出ができず、法律に基づく廃棄手続きを完了した場合は、VATの申告・納税義務は免除される」
ポイントは**“正式な証明書類(廃棄報告書・監査記録など)”を保管すること**。
「壊れたから処分しました~」では済まされません!
❓Q4:EPEとの契約がなくても、設備を借りることはできる?
▶ できますが、税務上は厳しくなります。
- 加工契約がない=輸入税免除ナシ
- 再輸出しない=VAT課税&使用目的変更が必要
つまり「借りるだけなら自由」ですが、税金面では“しっかり取られます”。
❓Q5:リース契約書や通関書類はどのくらい保管すればいいの?
▶ 最低でも10年間は保管が望ましいとされています(税務調査対応含む)。
実際のところ、税関や税務署の監査は3~5年以内に入ることが多いですが、再確認や電子申告データとの照合などで過去の書類を求められるケースもあります。
実務アドバイス
- 目的と期間を明確に!:「何のために」「いつまで」使うのかを書類で裏付ける
- 税金は“あとから”ではなく“最初に”相談する!
- **再輸出しない=課税!**を合言葉に
まとめ|これだけ押さえれば安心!EPEとの設備リース・借用の鉄則
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
最後に、今回の記事のポイントを5行でざっくりおさらいしちゃいましょう。
✅ 5行でわかる!今回の要点まとめ
- 目的が「輸出加工支援」か「それ以外」かで、通関と税金が大違い!
- EPEとの設備貸し借りは「一時輸出・一時輸入」扱いが基本(公文書300/TCHQ-GSQL根拠)
- 加工契約があれば、輸入税は免除の可能性アリ(政令134/2016/ND-CP 第10条)
- 再輸出しなければ、使用目的変更+税金申告が必須!(政令59/2018/ND-CP)
- 通関書類と税務証憑は“揃って初めて安全圏”です!
🔍 通関も税務も“セットで見る”のがプロの視点!
設備貸与の場面では、つい「物のやり取り」ばかりに意識がいきがち。
でも、税務は見逃してくれません。
- 使用目的に沿ってない=課税
- 期間管理できてない=再輸出漏れ→課税
- 廃棄証明がない=壊れてても課税
こんな「うっかり課税リスク」を回避するには、
「契約」×「通関」×「税金」の三位一体で準備することがカギです。
この記事を見た人へのおすすめアクション
✅ 設備の借用・リース契約を見直そう(目的・期間・再輸出条項ある?)
✅ 加工契約があれば、輸入税免除の申請を検討!
✅ 必要書類チェックリストを社内共有(「誰が・いつまでに・何を」)
✅ 税務・通関専門家に早めの相談を!
最後にひとこと
「ただ借りただけで、こんなに面倒とは…」と思った方、正直いらっしゃると思います。
でも、**正しい知識があれば、税金もトラブルも“未然に防げる”**んです。
この記事が、そんな未然防止の力になれたら嬉しいです!
ご希望があれば、この記事のPDF版やチェックリスト付きガイドもご用意しています。
また、具体的な案件についてのご相談もお気軽にどうぞ!
それでは、また次回の「すげのブログ」でお会いしましょう!