こんにちは!マナラボの菅野です。

今日は、ベトナムでM&A(企業買収)を検討中の皆さんに向けて、「表明・保証(Representations & Warranties)」について、わかりやすく&しっかり解説していきます!

「表明・保証」ってなに?なぜ必要?

M&A契約で避けて通れないのが「表明・保証」条項です。これはざっくり言えば、

「私は〇〇が本当だと約束しますよ」

という、売主の責任ある宣言です。

M&A契約書にほぼ必ず出てくるのが「表明・保証」条項。
これはざっくり言うと、売主が「ウソはついてませんよ!」と約束する条項です。

たとえば:

  • 「この株式は私のものです」
  • 「税金は滞納してません」
  • 「訴訟なんて抱えてません」

といった事実に関する宣言をして、それが正しいことを保証する。それが「表明・保証」です。

買収する側にとっては、見えないリスクを防ぐための“保険”みたいな役割ですね。

▶ 喩えるならば…?

M&A契約は「会社という車を売る契約」みたいなもの。 買主はピカピカに磨かれた中古車(会社)を見て、「これなら買っても大丈夫そうだ」と思って契約に進みます。 でも、あとからエンジンが壊れていた、ブレーキが効かなかった、車検証が偽物だった…となったら?

そんなときに「いや、そんなつもりじゃ…」では済まされません!

この「車は事故歴なし、エンジンも正常、所有権もちゃんとあるよ」と説明し、その内容が正しいと保証するのが「表明・保証」です。

▶ ビジネス上の定義は?

  • 表明(Representation):契約締結時点における、過去または現在の事実についての真実な申告。
  • 保証(Warranty):その表明が正しいことを確約し、違っていた場合に責任を負う。

つまり、**「あなたがそう言ったから信じて買った」**という信頼に基づく重要条項です。

▶ ベトナムでは特に重要な理由

ベトナムでは、たとえデューデリジェンス(DD)を入念に行っても、

  • クロージング後(PMI期間)に不適切な会計処理が見つかる
  • 未開示の借入や未払い税金が出てくる
  • 社内で労務トラブルを抱えていた…

といった“あと出しの地雷”が発生することも多くあります。例えば以下。

>>ベトナムM&Aで契約無効?イオン×SeABank騒動に学ぶ「DDで見えないリスク」?

だからこそ、「DDで拾いきれなかったリスク」をカバーする最後の砦が、表明・保証なんです!

表明(Representation)と保証(Warranty)の違いは?ざくっと

この2つ、英語では明確に区別されます。

用語内容
Representation(表明)過去や現在の事実の申告
Warranty(保証)それが真実であることの約束(違反時には補償)
  • イギリス法では厳密に区別され、
  • アメリカ法では区別されないことが多い
  • ベトナム法にはそもそもこの概念が存在しません!

そのため、ベトナム契約では「書いたから大丈夫」ではなく、“どう書くか”が肝心なのです。

ベトナム法における表明・保証の位置づけ

ベトナム民法には、英米法にあるような「表明」「保証」という用語も条文も存在しません。

ではどうするのか? → 契約でしっかり明記して、契約上の責任として成立させることが大前提です。

ただし!

単に「売主は〇〇であると表明・保証する」と書いただけでは、違反されたときに請求ができない可能性も。

そのため、必ず次のように明記しましょう:

  • 「虚偽があった場合は損害賠償請求が可能」
  • 「重大な違反があれば契約解除できる」

違反時の効果まで含めて初めて、実効性のあるR&W条項になるのです。

 実務でのドラフティング上の注意点をポイント解説

▶ 売主側:リスクを限定する方法

  • 知る限り(”to the best of Seller’s knowledge”):知らなかったことには責任を負わない
  • 重要事項に限定(Materiality):小さなことまで責任を負わない
  • 金額的制限(キャップ、バスケット、de minimis):補償の範囲を金額で制限
  • 期間の限定(サバイバル期間):補償義務の存続期間を設定

▶ 買主側:守るべきポイント

  • **Disclosure Letter(開示文書)**をしっかり読む:記載事項については責任追及できないことがある
  • Pro-Sandbagging(知っていても請求可能)条項の有無を確認:DDで知っていた事実についても後で請求したいなら要確認

ベトナムでは「契約解除」は現実的ではない

表明・保証違反が発覚しても、M&A契約を解除するのは非常に困難です。

なぜか?

  • クロージング後、買主が事業運営を始めてしまっている
  • 元の状態に「巻き戻す」ことが現実的に不可能

→ 実務では、解除ではなく損害賠償請求が主な救済手段です。

ベトナムの弁護士が入れるべき必須条項は?

ベトナム法では、「affirmation」や「warranty」という概念はありません。しかし、だからといって「表明・保証」条項を入れても意味がないわけではありません。

むしろ重要なのは:

違反があった場合にどうするのかを契約で明確に書くこと!

例:

  • 売主が虚偽の表明をした場合、買主は損害賠償請求できる
  • 表明保証違反により重大な損害が生じた場合、契約を解除できる

買いてないものはなにもない!のと同じですからね。実際に責任をとれるか?という話はおいておいてまずは「買いておく」というのが大事です。

このように、法的効果(remedy)まで契約に盛り込んでおくことが、ベトナム契約で「表明・保証条項」を実効性あるものにする鍵です。

まとめ:表明・保証は“書き方”で決まる!

✔ ベトナム法には「表明・保証」の明文規定はない
✔ でも、契約で定義し、責任と救済を明記すれば機能する
✔ DDだけでは拾えないリスクを、R&Wでカバーすることができる

だからこそ:

  • 「なぜ入れるか」を理解し
  • 「どう書くか」を工夫し
  • 「何が起きたらどうするか」を明記する

これが、ベトナムでM&Aを行うときの表明・保証条項の鉄則です。


以上、すげのがお届けしました。 難しそうな条項だけど、実は一番の安心材料になるのが「表明・保証」。 ベトナムM&Aでは特に、抜け・漏れを防ぐ“契約上の盾”として、ぜひ正しく活用してくださいね!