こんにちは!マナラボの菅野です。

今日は、日本に住んでいる方が、**ベトナムで税金を払ったときに、日本の税金をどう減らせるのか?**というテーマでお話しします。

実務上でもこのような質問をうけることがあります。

「日本が本拠だけど、ベトナムにも行ってる」人が急増中

たとえば、こんな方はいませんか?

  • 日本本社所属だけど、ベトナムに3ヶ月出張して報酬をもらった
  • ベトナムの法定代表者であるのでベトナム源泉所得について税金をベトナムで払っている。
  • ベトナムの子会社からプロジェクトの一時報酬を直接受け取った
  • オンラインでベトナム法人の顧問になっていて、報酬がベトナムで源泉徴収されている

こういう場合、ベトナムで**源泉徴収税(たとえば非居住者に対する20%)**が引かれることがあります。

でも、日本の確定申告では「世界中の所得に課税しますよ!」というルールなので、同じ所得に日本でも税金がかかることに…。

はい、ダブル課税=二重課税の登場ですね。

それを防ぐのが「外国税額控除」です!

「外国税額控除(がいこくぜいがくこうじょ)」っていうのは、
日本で確定申告する時に、すでに海外で払った税金分を、日本の税金から引いてもらえる制度です。

▼国税庁も、こんなふうに説明しています👇

「居住者がその年中に国外において所得税に相当する税を課され、かつ、その税を納付したときは、一定の限度まで、その国外所得税額を日本の所得税額から控除することができます。
(出典:国税庁タックスアンサー No.1240)
👉 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm

どんな税金が「税額控除の対象」になるの?

さて、ここからが肝心です。

「とにかく外国で払った税なら、なんでも控除できるんでしょ?」

…そう思いたくなりますよね。でも、残念ながら答えはNOです。

✅ 控除対象になる税金の条件は?

項目内容
税の性質所得に対して直接課された税であること(=所得税に類するもの)
課税対象日本の「居住者」である間に得た所得に対する課税であること
証明資料実際に納めたことが証明できる(納税証明書など)こと
条約遵守租税条約の範囲内での課税であること(超過課税はNG)

ベトナムの例で言えば…

✔ 控除できる

  • 非居住者への報酬に対する「20%課税」
  • 現地源泉徴収された給与にかかる「PIT(個人所得税)」

✖ 控除できない

  • VAT(付加価値税)
  • 罰金・延滞税などのペナルティ
  • 還付を受ける予定の税金(実質納税していないもの)

喩えを変えよう。「食べられないレトルトカレー」です

ちょっとわかりにくい喩えだったので、今回はこうしましょう。

外国税額控除の対象になるかどうかは、食べ物でいうと「そのレトルトカレー、日本の規格で認められてる?」って話に似てます。

見た目はカレー。でも、「保存料が日本で認められていない」とか、「賞味期限ラベルがない」とかだと、輸入許可が下りないことがありますよね。

外国の税金も同じです。名前が“税”でも、中身が「所得にかかる」ものでなかったり、日本の税制度の考え方とズレていたりすると、日本では“それはカウントできません”ってなるんです。

つまり…

👉 日本の税務の“フィルター”を通せる税金だけが、控除対象になる!
というわけですね。

控除できる金額には「限度」があるんです

ここ、大事なポイントです。

いくらベトナムで税金を払っていても、日本で全額控除できるわけではありません。

なぜなら、「海外所得の割合に応じて、フェアに調整しようね」というルールがあるからです。

計算式はこうなります。計算構造を解説

日本の所得税額 ×(国外所得 ÷ 総所得)= 控除限度額

わかりやすく言語化すると…

「あなたの1年の収入のうち、海外で稼いだ割合に応じて、日本の税金の中から引ける額が決まります」

たとえばで理解を深めましょう。

  • 総所得:1,000万円
  • うち、ベトナム所得:100万円
  • 日本の所得税額:40万円(税金)

このとき、控除できるのは…

→ 40万円 ×(100万 ÷ 1,000万)= 4万円

たとえベトナムで10万円の税金を払っていても、
日本では「4万円までしか引いてあげられませんよ」となるわけです。

つまりこういうことです👇

  • 「全部で1,000万円稼いだけど、そのうち100万円はベトナムで稼いだ」
  • 「じゃあ、日本の税金の中で“10分の1だけ”、ベトナムの税金分として引いてあげますね!」

という考え方です。

もっとくだけた言い方にすると…

「海外で働いたぶんだけ、日本の税金をちょっと減らせる」
「全部の税金から、海外ぶんの“わり算”で控除できる」

以下も参照になります。ベトナム側ですが。考えかたは同じ。

【ベトナム税務】二重課税になった場合の外国税額控除の計算の方法を解説

 控除しきれない税金は「繰り越し」できる!

「残りの6万円は、損するしかないの?」

…いえいえ、まだチャンスはあります!

3年間、繰り越して控除できるというルールがあります。
翌年以降に、日本の所得税が増えた場合、その枠で控除できるかもしれません。

ただし、これは確定申告で「繰越控除の申請」も必要になるので、忘れずにチェックです。

 住民税でも控除できます!参考

これも盲点なんですが、住民税(県民税・市民税)にも外国税額控除の制度があります

区分控除の上限
県民税所得税の控除限度額 × 12%
市民税所得税の控除限度額 × 18%

つまり、所得税から引ききれなかった外国税額を、住民税から最大30%までカバーできるというわけですね。

日本での控除申告方法【手順はかんたん、でも準備がカギ!】

控除できるってことはわかった!でも、実際どうやってやるの?」という声、よくいただきます。日本側での税理士先生がサポートしてくれるので実際には先生にお願いすることになるのですが概要だけはお伝えしますね。

答えはシンプルです。

確定申告で明細書等を添付すればOK!
でも、いくつか大事な「添えるもの」があるんです。

 必要な書類はこれだけ覚えて!

書類名ざっくり言うと…どこでもらう?
外国税額控除に関する明細書計算の内訳を書くシート国税庁サイトやe-Taxで自動作成可
納税証明書ベトナムで本当に払った証拠ベトナム税務署 or 源泉徴収票
課税通知・申告書の写しどの税が、いくら課されたかベトナム側の税務資料
所得の内訳ベトナムで得た報酬などの明細給与明細・契約書など

申告のやり方(流れ)

  1. 確定申告書を作成(e-Taxや紙でもOK)
  2. 「外国税額控除」欄に金額を記入
  3. 明細書をつける
  4. ベトナムの納税証明書などを添付 or 提示
  5. 税務署に提出!(またはe-Taxで送信)

これだけです。

注意するのはここ!

  • 書類が揃っていないと、控除が認められないことがあります
     →「払いましたよ」って証拠がないとダメなんです。

  • 明細書への記入漏れはNG!
     →「提出してないぶん」は、基本的に控除してもらえません。

📌 とにかく、ベトナムで税金払ったらすぐに証明書をもらっておく!
📌 そして、確定申告のときに忘れずに添付!

よくあるNGケース(見落とし注意!)

  • 税務署に明細書を出していなかった
    → 添付がなければ、基本的に控除は認められません。

  • 所得税じゃない税金を控除しようとした
    → ベトナムで払ったVATや、経費扱いにできるものは対象外です。

  • 租税条約で免税対象なのに、現地で払ってしまった
    → たとえば183日ルール(短期出張など)に該当すれば、本来は課税されないことも。
     → ベトナムで課税されたとしても、日本では控除対象にならない可能性があります。

ケース別まとめ

ケース控除対象?コメント
日本在住・ベトナム出張(源泉20%)控除対象。納税証明を準備して!
ベトナムのPIT(給与課税)条件次第で控除OK
VAT(付加価値税)所得税じゃないので対象外
ベトナムで罰金を払ったペナルティはNG
還付される予定の税金実際に「納めた」ことが必要です

まとめますね!

今日は、**ベトナムで税金を払った日本人が、日本の税金を減らすにはどうすればいいのか?**というテーマで、

  • どんな税金が控除できるのか?
  • いくらまで控除できるのか?
  • 計算の考え方と注意点

について、具体的なケースと一緒に解説しました。

すげのからひとこと

ベトナムで「なんか税金取られたな〜」で終わらせないでください。
きちんと確認すれば、日本の税金を減らすチャンスになります。
でも、申告を忘れたり、資料が足りなかったりすると、控除が一切使えないこともあります。

ですので…

  • 控除できるかどうか迷ったら、まずは納税証明書を確保しましょう!
  • 不安な場合は、信頼できる税理士さんに相談を!

それではまた、次回のマナラボでお会いしましょう〜!

菅野でした😊