こんにちは!マナラボの菅野です。
「ベトナムに移住したいんだけど、出国税って結局どうなるの?」
「ベトナムでも税金取られるの?二重課税ってほんとにあるの?」
そんな不安をお持ちの方に向けて、今回はちょっと難しそうな「出国税」と「ベトナムの課税」について、やさしく、でもちゃんと根拠に基づいて解説します!
この記事のもくじ
そもそも「出国税」ってなに?
🔍 出国税とは?
正式名称は「国外転出時課税制度」といいます。
2015年7月から始まった、日本の税制の一つです。
要はこういうことです:
「1億円以上の株とか投資信託とかを持ってる人が日本から出ていくとき、そのまま海外で売って税金払わないのはズルいよね。
だから“出ていくときに売ったことにして”日本で税金払ってね!」
という制度です。
✅ どんな人が対象?
ざっくり言うと、こんな人です:
- 資産1億円以上(株・投資信託・信用取引など)
- 過去10年のうち5年以上日本に住んでいた
- 日本から“完全に”出ていく人(住民票を抜く)
実はかなり限られた人しか対象じゃありません。
でも資産運用をしている方や、会社を売却予定の経営者の方には、無関係ではいられない制度です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/01.htm
出国税は“売ってなくても”課税される!?しかも15%超!
さて、出国税のなにが怖いって、実際には株や投資信託を売ってないのに、
「売ったものとみなして、税金払ってくださいね」
と言われるところです。
しかもその税率は、
- 所得税 15%
- 復興特別所得税 約0.315%
で、合計 15.315% です。
たとえば含み益(買値より値上がりしている部分)が1億円分あったら、ざっくり1,500万円以上の税金がかかる計算になります。
しかも、お金はまだ手元にないのに、です。
(売ってないから現金化されてないのに…)
…けっこうインパクトありますよね。
納税猶予って制度があるけど、“安心しきる”のは危険
「いやいや、でも“納税猶予”できるんでしょ?売るまで払わなくていいんでしょ?」
という声もあります。はい、たしかにそうなんです。
- 日本を出国する前に「納税管理人」を届け出て
- 出国年の確定申告で「猶予希望」と伝え
- さらに担保を差し入れれば
最大 5年間(さらに延長して10年まで)、納税を待ってもらえます。
でもここ、大事なポイントがあります:
猶予中にその資産を売ったら、4か月以内に税金+利子税も払わないといけない!
しかも「毎年、資産の状況を報告する」などの事務作業も必要。うっかり忘れてると、猶予が“切れて”、全額支払い対象になります。
ベトナムに引っ越したらどうなる?「全世界所得課税」の落とし穴
はい、ここからが本題。
じゃあ、出国税を払って(あるいは猶予して)ベトナムに住み始めたらどうなるの?
答えは…
ベトナムにも税金払わなきゃいけない可能性があります。
えっ、二重課税!?と思われた方、鋭いです。
ベトナムには「全世界所得課税」というルールがあります。
つまり、ベトナムの居住者になった人は、日本で得た利益も、原則としてベトナムで申告・課税対象になるのです。
じゃあ、日本で出国税払ったのに、ベトナムでも税金取られるの?
可能性はあります。でも、完全にダブルで払うわけではありません。
ベトナムでは「外国税額控除」という制度が使えます。
これは:
「海外ですでに払った税金があるなら、その分をベトナムの税金から引いていいよ」
という制度です。
でもここで注意点。
- 控除できるのは「ベトナムで課税されるはずの税額」が上限
- 日本で払った出国税がそれを超えていたら、差額は戻ってきません
つまり、全額が控除できるとは限らないんです。
ベトナムで外国税額控除を受けるには?必要なのはこの2通り
実務上、ベトナムでは2通りの方法があるでしょう。ただしここはあんまり気にしなくてもいいです。こんな方法があるんだなあくらいで。
① 国内法ベースの控除(手続きがシンプル)
- 日本の「納税証明書」(英語推奨)を用意
- ベトナムの確定申告時に提出(毎年4月末まで)
- 申告書に必要事項を記入して控除を申請
→ 多くの人はこちらを選びます。
② 日本との租税条約ベースの控除(書類が多いけど確実)
- 日本の確定申告書の写し
- 納税証明書
- 銀行の支払い証明(納付済み証明)
- ベトナムの税務署に事前承認をもらう
→ ハノイやホーチミンでは、こちらが求められることもあります。
根拠文書・出典例
- Thông tư số 92/2015/TT-BTC(通達92号/2015年):外国税額控除の基本枠組み
- 租税条約:日本・ベトナム間(Article 23: Methods for Elimination of Double Taxation)
実際にありそうなケースで見てみよう:Aさんの出国ストーリー(妄想ですよ)
Aさんは日本のIT企業の経営者。2022年に会社を売却して、約3億円の株式を保有したままベトナムへ移住。
- 出国前に「納税管理人」を届け出て、出国税の納税猶予を選択
- ベトナムでは居住者になり、会社の売却益を2024年に一部売却
- ベトナムで申告対象となり、日本の出国税を基に「外国税額控除」を申請
- 控除限度額を超えた分は控除されず、自腹に
このように「税金を払ったつもり」でも、払った国と、住んでる国の計算が合わないと差額が出るのが現実です。
実務上はほとんどないでしょう。シンガポールとかドバイであればありそうですが。
ベトナム以外の国とどう違う?出国税 × 世界の税制ざっくり比較
「ベトナムでは気をつけなきゃいけないのはわかったけど、他の国はどうなの?」
という声も多いので、ここでざっくり比較してみましょう。
国・地域 | 出国税の後に課税される? | 二重課税の心配 | コメント |
---|---|---|---|
シンガポール | 原則ナシ(譲渡益非課税) | ほぼなし | キャピタルゲインは基本非課税なので安心。ただし頻繁な取引だと課税対象になることも |
ドバイ(UAE) | 完全非課税 | なし | 個人の所得税がない。完全に税フリー。ただし日本からの配当などには注意 |
タイ | 送金したら課税される | あり | タイに送金した年に課税される仕組み。2024年改正で厳格化中。送金タイミング大事 |
ベトナム | 基本課税対象(全世界所得) | あり | 送金しなくても課税される可能性あり。でも外国税額控除制度あり。実務はちょい複雑 |
こうして見ると、**「出国税がある国 × 全世界所得課税の国」**という組み合わせは、ほんと注意が必要なんです。
税務トラブルを防ぐための「やることリスト」
最後に、**これだけはやっておこう!**というチェックリストを共有します。
✅ 出国前
- 出国予定日を決める
- 納税管理人の届出を提出
- 含み益のある資産を確認(1億円超えてないか?)
- 出国前に「納税猶予を希望」するか判断
- 担保提供の準備(必要な場合)
✅ 出国後(ベトナムに移住後)
- ベトナムで居住者認定されているか確認
- 資産を売却したら4か月以内に日本で納税対応
- ベトナムでの確定申告(翌年4月末まで)
- 日本の納税証明書など、必要書類を準備
- 外国税額控除を申請(方法を選ぶ)
✅ 帰国を検討している場合
出国から5年(猶予延長なら10年)以内に帰国すれば出国税の取り消し申請可!
まとめ:税金は“国境を超える”時代。だからこそ準備が大事!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
出国税って「日本を出るときの話でしょ?」と思いがちですが、実は
「出た後の国でどうなるか」が一番大事
なんです。
とくにベトナムのように世界所得に課税する国では、出国税+移住後の課税=思わぬ二重課税になるケースも。
でも大丈夫です。
- 出国前にちゃんと手続きして
- 出国後も納税管理人と連携して
- ベトナムでは申告と控除を忘れずに!
この3つさえ押さえておけば、慌てることはありません。
税金は“トラブルになってから”じゃ遅いので、ぜひこの記事が「前もって備えるきっかけ」になればうれしいです!