こんにちは!マナラボの菅野です。

今回は、ベトナムでお仕事されている方にとって欠かせない実務文書「発注書(Purchase Order/PO)」について、やさしく、でもしっかり解説していきます!

「契約書までは作ってないけど、メールで“注文します”って伝えてるから大丈夫だよね?」
「Excelで数量と金額だけ書いたシートで取引してるけど…法的に問題ない?」

そう感じたことはありませんか?

発注書は、地味だけどとても重要な書類。書き方ひとつで、トラブルを防いだり、資金調達に使えたりもします。この記事では、発注書の意味から使い方、テンプレート例まで、実務に役立つ情報をまるっとご紹介します!

発注書(PO)とは?

発注書、英語では Purchase Order(略してPO)は、「これを、この条件で発注したいです」と買い手側が売り手に対して正式に伝えるための文書です。日本でもよく使われますが、ベトナムではよりいっそう、その重要性が高まっています。

内容としては、商品の種類、数量、単価、納期、支払条件などを明記し、最終的には双方が同意(サインなど)することで「取引条件の確認書」のような役割を果たします。

とくに製造業や商社、小売り業では毎日のように使われており、注文書・依頼書・見積もりの承諾書が合体したような存在です。


ベトナムでの発注書の役割と特徴

ベトナムでは、発注書は「契約書の代わりになる場合もあるが、常にではない」という位置づけです。

通達39/2015/TT-BTC(財務省)や商法・民法などによれば、商取引の契約は原則として「書面、またはそれと同等の形式(電報、FAX、データメッセージ等)」で行われる必要があります。

つまり、発注書がしっかりと作成されていれば、条件次第では契約書の代替となる可能性があります。

ただし、税関・税務処理・裁判などで正式な契約書が求められる場合も多いため、「補完的な証拠」としての扱いが一般的です。


発注書に記載すべき項目一覧

では、どんな情報を含めれば「信頼性のある発注書」として使えるのでしょうか?以下が基本構成です:

  • 売り手と買い手の会社名・連絡先・納税番号(MST)
  • 商品名・型番・数量・単価・合計金額
  • 通貨の種類(VND, USDなど)
  • 支払条件(例:50%前払い/残り納品後など)
  • 納期と納品場所、輸送手段(指定がある場合)
  • VATの取扱い(含む or 含まない)
  • 署名欄(双方の確認印やサイン)

これらが揃っていれば、たとえ契約書がなくても、一定の「証拠力」が認められることがあります。


契約書の代わりになるのか?法律的な視点から

ベトナムでは、「発注書が契約書の代わりになるかどうか」は内容の充実度と当事者の合意の有無によって変わります。

たとえば、次のようなケースでは税関や税務署が発注書を契約書と同等に扱うことがあります:

  • 商品名、数量、価格、引渡し条件(Incoterms)などが明確
  • 双方が署名・捺印している
  • 支払条件・所有権移転の記載がある

実際に、以下のような公的文書もあります:

  • 【税関総局 公文書1193/TCHQ-GSQL】:発注書が契約内容を満たせば、輸出入管理や課税根拠として使用可能

  • 【税務総局 公文書1988/TCT/DNK】:FAX注文も契約の証拠として認めた実例あり

  • 【ホーチミン市税務局 公文書4380/CT-TTHT】:Eメールでの発注でも、権利義務が明確であれば契約の一種として解釈可能

とはいえ、すべてのケースで通用するわけではありません。特に金額の大きなの取引やVAT還付を伴う取引では、「正式な契約書」が求められることもあります。

今すぐ使える!ベトナムの発注書テンプレート【フォーム構造と記入例】

発注書は、シンプルな文書でありながら、きちんと構造化されていることでトラブルの防止や会計処理の円滑化に役立ちます。
ここでは、ベトナムで一般的に使用されている発注書の構成と、日本語での記入例をご紹介します。


🔧 発注書の基本構造(日本語説明)

セクション内容
書類タイトル「発注書」「注文書」など。ベトナムでは「ĐƠN ĐẶT HÀNG」と記載。
発行番号・日付発注番号(例:PO-2024-001)、発行日。
宛先(売り手情報)会社名・担当者・住所・電話番号など。
発注元(買い手情報)自社名・担当者・連絡先。
注文内容商品ごとに表形式で記載(下記参照)。
支払条件前払い/納品後払い/分割など。
納期・納品場所いつ・どこへ納品するかを明確に。
輸送方法・費用負担輸送手段(例:自社便、第三者配送)や送料負担の有無。
税金・VAT情報VAT込み・別などの明記が望ましい。
署名欄買い手・売り手双方の署名・押印欄。

📝 サンプルイメージ(日本語フォーマット例)


発注書
発注番号:PO-2024-003   発行日:2024年7月15日

宛先: グリーンベトナム株式会社
住所:ホーチミン市タンビン区XXX通り123番
担当者:グエン・ヴァン・アン
電話:(+84) 28-xxxx-xxxx

発注元: マナボックスベトナム
住所:ハノイ市カウザイ区XYZビル5F
担当者:菅野友弘
電話:(+84) 24-xxxx-xxxx


【注文内容】

No商品名型番単位数量単価(VND)金額(VND)
1オフィスチェアCH-01102,000,00020,000,000
2デスクDK-0353,500,00017,500,000
 合計金額    37,500,000

【支払条件】
契約金額の50%を前払い、残額は納品後7営業日以内に銀行振込にて支払います。

【納期】
2024年7月30日までに納品完了

【納品場所】
ハノイ市カウザイ区XYZビル マナボックスオフィス内

【VATについて】
価格はVAT(10%)を含みません。別途請求いたします。


発注者署名:
マナボックスベトナム   署名:_______   社印:🟦

受注者署名:
グリーンベトナム株式会社  署名:_______   社印:🟩


このように、発注書をフォーマット化しておくことで、取引のスピードと信頼性が大きく向上します。
また、後から内容確認ができるので、トラブル防止にもなります。

発注書作成時の注意点を解説

発注書は単なる「伝票」ではなく、取引条件の確認書です。以下のポイントを押さえておくと、あとあとトラブルを防げます。

  • 数量・単価・合計の整合性をチェック(特にExcelの場合)
  • 技術仕様や商品コードを明記する(間違った商品を避ける)
  • VATの扱いを明記(込みか、別途か)
  • 支払方法に不明点がある場合は、相手に事前確認を
  • 発注書の受領後、売り手側が署名・押印して返送することで、双方の合意が成立します

まとめ

発注書は、契約書がなくても、ある程度「法的証拠」として使える便利な文書です。
特にベトナムの実務では、スピーディに発注しつつ、必要に応じて契約としての役割を持たせることが求められています。

  • 発注書をしっかり作成すれば、トラブル防止・信用強化につながる
  • 契約書が不要なケースでも、発注書の保存は必須
  • テンプレートを活用して、自社に合わせた形にカスタマイズするのがおすすめ

それでは、この記事がみなさんの実務のお役に立てば嬉しいです!

必要であれば、PDF出力やテンプレート編集のお手伝いも可能です。お気軽にお声がけくださいね。