こんにちは!マナラボの菅野です。
2025年10月1日から施行される法人所得税法(法律第67/2025/QH15号)、皆さんはもうチェックされましたか?
>>【全文の紹介】ベトナム2025年法人所得税法(法律第67/2025/QH15号)について
今回は、ダクラク省を含む7省の税務局が発出した「公文書 850/TSC7-NVDTPC」をもとに、改正ポイントを実務の視点から整理しました。
これってなに?どんな目的?ということですが
一言でいうと、改正CIT法である法律第67/2025/QH15号(2025年10月1日施行)の“要点を納税者に周知して、実務対応を促すため”の通知です。
もう少し分解すると——
- 周知:CIT法2025の“新しいポイント(1〜10)”をまとめて配布。
- 統一運用:7省の納税者・関係者が同じ理解で適用できるようにする。
- 実務支援:課税対象の拡大、免税期間、損金算入、税率区分、優遇見直し等を具体例ベースで把握させ、適正申告を促す。
- 時期の明確化:発効日(2025/10/01)や対象論点をはっきり示し、準備を間に合わせる。
この記事のもくじ
1. 今回のベトナム法人税改正の背景
今回の改正はズバリ、「国際課税の強化」「税優遇の再編」「環境対応の促進」の三本柱。
特に注目なのは、電子商取引(EC)やデジタルサービスを手がける外国企業の課税範囲拡大。
これは、日本企業にもモロに関係してきます。
「うちはベトナムに会社ないから大丈夫」なんて油断していると、しっかり課税対象に…なんてことも。
2. 改正点の全体像(旧法との比較)
まずは、全体像をパッと把握できるように比較表にしました👇
No. | 改正テーマ | 旧法(〜2025年9月30日) | 新法(2025年10月1日〜) | 実務ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 外国企業課税範囲 | 恒久的施設を持つ外国企業のみ課税。EC・デジタルは明確規定なし | 恒久的施設がなくても、ECやデジタルプラットフォームによるベトナム源泉所得は課税対象(第2条2項d、第3条3項) | 日本本社の直販ECも対象になる可能性。課税リスク評価が必要 |
2 | 新技術製品の免税期間 | 最大5年間免税 | 最大3年間免税(第4条4項) | R&D企業は免税期間短縮によるキャッシュフロー影響を要確認 |
3 | 不動産譲渡損失の相殺 | 不動産譲渡損失は他事業所得と相殺可能(制限緩やか) | 税優遇事業との相殺不可。鉱物関連事業との通算は完全禁止(第7条) | 資産売却時の損益通算ルールが厳格化 |
4 | 損金算入範囲 | 一般的な事業関連費用のみ | 公共施設支援費、脱炭素関連費用、政府決定基金拠出、未控除かつ還付不可の仕入VATも可(第9条) | CSRや環境投資にも税務メリット発生 |
5 | 中小企業税率 | 原則20%(優遇なし) | 年商30億VND未満:15%、30〜500億VND:17%(第10条) | 年商規模により法人税率が軽減。中小企業に追い風 |
6 | 優遇業種 | 工業団地投資、大型製造(6兆VND以上)も対象 | 上記を削除。中小企業支援施設、インキュベーター、コワーキングスペースを追加(第13条) | 製造中心から起業支援中心の優遇へシフト |
7 | ハイテク農業地域 | 優遇地域に未指定 | 優遇地域に追加(第13条) | 日本の農業技術導入にチャンス拡大 |
8 | 自動車製造優遇 | 税率10%を15年間 | 税率17%を10年間(第13条4項) | 優遇縮小。長期投資計画の再評価が必要 |
9 | 優遇地域の拡大 | 高度農業や集中デジタル技術ゾーンは対象外 | 高度農業、集中デジタル技術ゾーン、経済特区も対象 | 投資立地選定が節税戦略に直結 |
10 | 中小企業支援事業の税率優遇 | 明確な税率優遇規定なし | 中小企業支援施設・インキュベーター・コワーキングスペースに税率17%を10年間(第13条4項) | 起業支援ビジネスが有利に |
3. OL記載10個の各改正点の詳細解説
① 外国企業のベトナム国内所得課税範囲拡大
引用:第2条第2項(d)、第3条第3項
ベトナムに恒久的施設がなくても、電子商取引やデジタルプラットフォームを通じて得た「ベトナム源泉所得」は課税対象に。
ここがポイント
「現地に会社ないから平気でしょ?」…はい、それはもう通用しません。
日本本社のECサイトからベトナムのお客さんに直接販売しているケースも、バッチリ課税リスクの仲間入りです。
② 新技術製品の免税期間短縮
引用:第4条第4項
科学研究や技術開発、ベトナム初適用の新技術製品の販売所得は、免税期間が最大3年間に短縮(従来は5年)。
ここがポイント(すげの風)
「あと数年は免税だから大丈夫」…その余裕、なくなります。
研究開発型の企業は、免税終了が早まる分、資金繰りや投資回収計画を早めに練り直しましょう。
③ 不動産譲渡損失の相殺ルール変更
引用:第7条
不動産譲渡で発生した損失は、税優遇を受けていない事業所得と相殺OK。ただし、鉱物関連事業との相殺は不可。
ここがポイント
「この損失、あっちの利益で消せるよね?」がNGになる場面が増えそうです
不動産や資産の売却予定があるなら、決算前に通算可能な範囲を要チェック。ただ日系企業で影響があるのは限定的かもしれません。
④ 損金算入できる費用の拡大
引用:第9条
新たに損金算入OKになった費用例:
- 公共施設支援費
- 温室効果ガス削減・カーボンニュートラル関連費用
- 首相決定・政府規定の基金拠出
- 未控除かつ還付不可の仕入VAT
ここがポイント
環境投資や地域貢献が、そのまま節税にもなる時代に突入!
CSR活動をしているなら、経理さんとタッグを組んで税務メリットを最大化しましょう。
⑤ 中小規模企業への税率引き下げ
引用:第10条
- 年商30億VND未満 → 15%
- 年商30億〜500億VND → 17%
>>ベトナム法人税が大改革!2025年から始まる新税率と優遇制度を完全解説【67/2025/QH15の内容】
ここがポイント
「うちは小さいから関係ない」じゃなくて、むしろチャンス!
ただしグループ会社の売上も合算される場合があるので、そこは数字をちゃんと確認して。
⑥ 優遇業種の再編
引用:第13条
工業団地投資や大型製造(6兆VND以上)は優遇廃止。代わりに、中小企業支援施設・インキュベーター・コワーキングスペース投資が優遇対象に追加。
ここがポイント
製造業の大型投資優遇から、スタートアップ支援や新産業づくりへのシフトです。
「ものづくり一辺倒」から「イノベーション重視」へ、政府の方向性が見えますね。
⑦ ハイテク農業地区の追加
引用:第13条
ハイテク農業地域が優遇地域に新規追加。
ここがポイント
農業分野でのビジネスを検討しているなら今がチャンス!
日本の農業機械や栽培技術を持ち込んで、ベトナムの農業ハイテク化に乗っかれます。
⑧ 自動車製造の優遇見直し
引用:第13条第4項
従来:税率10%(15年)
新法:税率17%(10年)
ここがポイント
優遇期間も短縮、税率もアップ。
自動車メーカーさんは、長期計画や損益分岐点の見直しが必須です。
⑨ 優遇地域の拡大
引用:第13条
ハイテク農業のほか、集中デジタル技術ゾーンや特別経済区も優遇対象に追加。
ここがポイント
「どこに投資するか」で節税効果がガラッと変わります。
立地戦略は今まで以上に重要なファクターに。
⑩ 中小企業支援事業の税率優遇
引用:第13条第4項
中小企業支援施設・インキュベーター・コワーキングスペース運営は、税率17%を10年間適用。
ここがポイント
ベトナムのスタートアップ支援市場に追い風!
施設運営や支援事業を考えている企業は、今後10年の税制メリットを計算に入れた事業設計ができます。
4. 実務チェックリスト ✅
(法人所得税法 67/2025/QH15 + 公文書850/TSC7-NVDTPC)をもとにどんなことをチェックすべきか?を確認しました。
No. | 改正テーマ | 確認すべきこと ✅ | 推奨アクション |
---|---|---|---|
1 | 外国企業課税範囲拡大 | 自社または親会社が、ベトナム顧客へECやデジタルサービス提供していないか | 該当する場合、課税リスク評価とベトナムでの申告方法を検討 |
2 | 新技術製品免税期間短縮 | 現在享受している免税期間と終了時期 | キャッシュフロー計画と投資回収計画を再試算 |
3 | 不動産損失相殺ルール変更 | 保有不動産の売却予定や損益通算の計画 | 税優遇事業との相殺可否を事前確認し、決算前に戦略調整 |
4 | 損金算入費用の拡大 | 脱炭素投資・公共施設支援・基金拠出などの実施有無 | 対象経費を洗い出し、損金計上ルールに沿って処理 |
5 | 中小企業税率引き下げ | 年商規模(単体・連結)と該当税率区分 | 年商見込みを基に翌期の税額シミュレーションを作成 |
6 | 優遇業種再編 | 現行の優遇事業が存続するか、廃止対象か | 廃止対象なら、移行措置や他優遇制度の適用を検討 |
7 | ハイテク農業地区追加 | 投資予定地や既存拠点が該当地区か | 該当すれば優遇申請の準備 |
8 | 自動車製造優遇見直し | 自社の製造プロジェクトが新規優遇条件に該当するか | 優遇縮小を前提に収益計画とROIを再計算 |
9 | 優遇地域拡大 | 投資候補地が新規優遇地域(デジタル技術ゾーン等)か | 該当地域への投資を優先的に検討 |
10 | 中小企業支援事業税率優遇 | 中小企業支援施設・インキュベーター事業を計画しているか | 計画があれば税率優遇を前提に事業計画を設計 |
この表を使えば、「ウチはどこが影響あるのか」→「何を準備すべきか」がひと目で分かりますよ
5. まとめ
今回の改正は、国際課税の網を広げつつ、中小企業には優遇、そして環境対応に力を入れる内容です。
法律(法律第67/2025/QH15号)を正確に読み解き、早めに事業計画へ落とし込むことで、税制改正の「波」を味方につけられます。