こんにちは!マナラボの菅野です。
今日は2025年7月24日付けで財務省から発行された公文書**「1292/CST-GTGT」をテーマに、免税区域(例:輸出加工区=EPEなど)へのサービス提供と付加価値税(VAT)0%適用の可否**について、徹底的に解説していきます!
この記事のもくじ
そもそもオフィシャルレター「1292/CST-GTGT」って何?
この公文書は、EYベトナムが行った照会に対して、財務省の税政策管理監督局が出した公式な回答書です。
ポイントは、
監査、税務コンサル、M&A、経営コンサルといったサービスが、
0%のVAT適用対象になり得る
ということを、条件付きで明示している点です。
では、その「条件」とは何か?【3要件+1除外】
この公文書は、以下の法律・政令の内容に基づいています:
■ 条文①|付加価値税法 第48/2024/QH15号 第9条1項(b)
「輸出サービス」とは、国外の組織・個人への提供、および免税区域内の組織への直接提供で、区域内で消費され、輸出生産活動に供されるサービスを含む。
👉 ここで初めて「免税区域向けサービス=輸出サービス」という枠組みが登場します!
■ 条文②|政令181/2025/ND-CP 第17条第2項(b)
輸出サービスには:免税区域内の組織に直接提供され、同区域内で消費され、輸出生産に直接使われるサービスを含む。
(例:港・工場・倉庫での荷役、書類、梱包、封印費用など)
👉 つまり、実際に輸出品の生産に貢献するサービスであれば、0%VATの対象になる!
■ 条文③|政令181/2025/ND-CP 第17条第4項(←超重要)
以下のようなサービスは0%の対象外になります:
- 技術・知的財産の海外譲渡
- 再保険、信用・資本・デリバティブサービス
- 郵便・通信
- 飲食(※工業用給食・区域内除く)、従業員輸送、ホテル・倉庫等の賃貸
- 国内消費に近いもの(広告・展示会・旅行など)
👉 上記に該当してしまうとNGなので要注意!
サービスが0%になるのはどんなとき?
以下の4つの条件をすべて満たせばOK!
条件 | 説明 |
---|---|
① 直接提供 | サービスは免税区域内の組織に直接提供されること |
② 区域内消費 | サービスが免税区域内で使われていること |
③ 輸出生産目的 | サービスが輸出品の生産に役立つこと(例えば生産工程の設計、輸出品質チェック) |
④ 除外対象外 | 政令第17条第4項に該当しないこと(ホテル賃貸や輸送などはNG) |
この4点がそろえば、監査や税務相談といった知的サービスも0%税率が使えるというのが、1292号の結論です。
実務的にどうやって証明する?
ここが実務者にとって最大のポイントです!
✅ 書面で「輸出生産のため」であることを明記!
✅ 成果物が「区域内」で受け取られていることを記録!
✅ 契約書・受入書・インボイスで一致している!
たとえば…
- 契約書:業務の目的欄に「輸出製品の生産プロセス改善のため」と明記
- SOW:対象となるライン名・工場コード・出荷国などを具体的に記載
- 受入書(Minutes of Acceptance):区域内の担当者が署名
- 請求書(VATインボイス):サービス名称を「ラインXの歩留まり分析支援」など明確にする
このように**“輸出生産への直接性”を証拠で固める**のがコツです。
グレーゾーン注意!「0%と思ってたらNGだった」想定ケース
以下のようなパターンは要注意かなと。
- 本社向けの会計レポート ⇒ ❌(輸出と無関係)
- EPE内の会議室賃貸 ⇒ ❌(政令で除外)
- 税務相談だけど用途が全社共通 ⇒ ❌(按分が必要)
- 契約書に「国内販売への適用」もある ⇒ ❌(兼用NG)
最後に|税率を分けるのは契約書の「書き方」だった!?
0%VATを使えるかどうかは、**「条文の理解」+「証憑の組み立て」**にかかっています。
そして何より大事なのは、
📌 「これは輸出生産のためなんです!」という物語を、紙で語ることです。(無理あるかなあと思いはします)
契約の一文、受入書の一行、インボイスの一語が、あなたの会社の税率を決めます。
その「紙の物語」を、私たちは正しく書きましょう。
ざっくり言うと——
「輸出生産活動に供され」=そのサービスの成果が、免税区域(EPE等)での“輸出品を作って出す”プロセスに直接**使われ、他の目的(国内販売・一般管理等)には使われないこと、です。
もう少し深堀りをしてみますね。
判断のコア基準について
- 直接提供:免税区域内の組織に“直接”提供されている(再販売・下請けの又貸しではない)。
- 区域内で消費:成果物・作業の「使われ方」が区域内で完結している(リモートでも、最終受益と使用が区域内なら可)。
- 目的限定:輸出生産に“直接”役立つ用途に限る。輸出生産以外の活動に使わない(兼用は不可。混在時は按分)。
- 除外に非該当:政令第17条4項の除外(オフィス賃貸・従業員輸送・飲食 等)に入っていない。
もう少し具体的に:該当しやすい/外れやすい例
0%になり得る例(条件を満たす場合)
- 生産ラインの工程設計・最適化コンサル(歩留まり改善、設備配置、標準作業票の設計など)。
- 品質管理・輸出規格適合のための指導(輸出先要求に合わせたQC体制・検査書式の構築)。
- EPE向け物流・構内オペ支援(出荷計画、包装設計、工場内倉庫運用、港・空港での荷役関連費等)。これは政令本文に**「運送、コンテナ積み下ろし、積卸し、文書費・封印費・梱包費など」**と明記の類型(=例示列挙)があります。
- 生産原価計算・在庫管理の制度設計(輸出製品コストの把握や原材料トレースの仕組みづくり)。
- (EYのような)監査・税務・経営コンサルでも、成果物や作業が輸出生産プロセスのために区域内で使用されることを契約・受入で明確にできれば対象になり得る、と当該公文は示しています。
0%が適用されない・外れやすい例
- 除外列挙:オフィス・ホテル・倉庫賃貸、従業員輸送、一般の飲食(工業給食・区域内飲食を除く)、郵便・通信、クレジット、資本譲渡、デリバティブ 等。
- 国内販売や一般広報に係るサービス(広告・展示会など国内での販売・流通・消費に密接関連)。
- 会社全体・海外本社向けの汎用レポート作成等、輸出生産と直接結びつかない経営管理・グループ報告。
- EPEの国内販売部門・非生産部門向けの支援(HR制度設計、社内イベント運営 など)。
【超重要】迷いやすいグレーゾーンの考え方
監査・税務・M&A・経営など“ホワイトカラー系”サービスは、一般管理にも使われがち。
0%を主張するなら、輸出生産を直接支える目的(例:輸出規格対応の原価算定体制、輸出入税規定に沿った在庫・通関プロセスの整備、ライン増設M&AのPMIでの生産立上げ支援 等)に絞って契約・成果物・受入を設計するのが安全です。
逆に、グループ決算対応や全社方針立案など“生産に直接結び付かない”部分は0%から切り分ける(標準税率側に按分)。
引用条文まとめ
付加価値税法 2024 第9条第1項(b)
政令181/2025/ND-CP 第17条第2項(b)、第4項、 第5項
公文書1292/CST-GTGT(2025年7月24日)
ご希望があれば、契約書・受入書のテンプレート付きのダウンロード資料も作成できますので、お気軽にどうぞ!
すげのでした!